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「コンドーム嫌い」「ナマ派」のためのセックスマニュアル【鈴木涼美寄稿】

12月1日(金)は、WHO(世界保健機関)が制定したエイズに関する啓発活動を推進する「世界エイズデー」

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コンドーム
Wavebreakmedia//Getty Images

感染防止策として、最も手軽で有効的だと言われるコンドームを男性がスマートにつけるにはどうすればいいのでしょうか? 『ギフテッド』『グレイスレス』で芥川龍之介賞候補に選出された作家の鈴木涼美さんの寄稿です。

それでもナマで射精をしたい?

cropped shot view of woman hands holding a small condom before using it with her partner
Boy_Anupong//Getty Images

昨年、全米で話題になったガブリエル・ブレアの著作『射精責任』は、はじめに「望まない妊娠のすべての原因が男性にある」と男性側の避妊意識の低さに対して挑戦的な言葉で問題提起するものであった。女性側の避妊具やピルに比べて、コンドームがいかに簡単に手に入るかという指摘もあり、合意のうえであたかも対等であるかのように始まるセックスにおいて、女性が負うリスクの大きさを強調している。

逆に言えば、セックスによる妊娠は男性に射精してもらわないと起こり得ないわけだし、男性はどんなに強く望んでも、自分で妊娠するのは不可能。そういう意識的に書いていないことも多い同書だが、コンドーム装着を省略しがちな者は男女ともに一定数おり、特に男性でコンドームを「嫌い/苦手」とする人が割と多いというのは、セックスを経験してきた多くの人に心当たりのある事実だと思う。

couple kneeling on bed, partial view
Westend61//Getty Images

女性にもコンドームが苦手という人はいるし、できれば装着してほしいけれども、あんまり強く主張したことはないという人もいる。そもそもセックスでの挿入は男性に勃起してもらわない限り難しいという、女としては如何ともしがたい非対称性があるわけで、「コンドームすると萎える」的なことを言われたり、露骨に不機嫌になられたりすると、女性の側も雰囲気に任せて受け入れてしまい、結果的に男性が主導権を握る形になるというのも想像できる。

苦手とか言われても、じゃあ赤信号で止まるの苦手なんだよねという人の意見を受け入れるのかという感じではあるのだが、なまじ夫婦や固定のパートナーとは当然ナマのセックスは問題がないことも多いため、交通ルールや乗車マナーに比べると曖昧なことが多い領域でもある。

man on bed holding condom package
Wachiwit//Getty Images

そして、以前日本の風俗をよく利用している英国人男性に聞いたところ、どうも日本では諸外国にいわゆるセックスのプロたちの現場でもかなり、その「コンドームおざなり」傾向が強いようでもある。セックスに関してあまり活発に言葉でコミュニケーションをとらない文化のせいもあるかもしれないし、セックスのプロとアマの境目が極めて曖昧だという事情も関係しているかもしれない。日本企業の開発したコンドームは世界で初めて0.01mmという薄さを実現し、匂いも少なく、強度など質も良いので、実に勿体ないことではある。

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「コンドームを付けるのが下手」な人は三日ほど特訓を

woman's fingers holding out condom toward man's fingers, close up
Patrick Sheandell O'Carroll//Getty Images

避妊以外にもSTD(性感染症)の予防などで明らかに効果があり、なおかつ良質なものが安価で手に入るにも関わらず、やはり使いたくないという人は結構いるわけだが、まずはどうして使いたくないのかをもう一度考えてみる必要があると思う。

というのも、「コンドームが苦手」という人の一部には「コンドームをつけるのが下手」という人が結構いるからだ。極限まで薄くなったコンドームは、その分つけるときにちょっとしたコツがいるし、その訓練をする機会がないと、モタモタつけたり外したりしているうちにおちんちんが萎えてしまって、その気まずいトラウマも手伝ってか、「コンドーム苦手なんだよね」と苦手な作業をスキップしようとする人々がいるのだ。

そういう人は正しいコンドームを選んでそれをスムーズに装着し、セックスしてみたら苦手でもなんでもないということもある。その場合、単に練習不足であるがために、STDや妊娠のリスクを負い、男性としての評価も下げることにつながるため、三日ほど特訓すれば良い。

young couple in love lying kissing in bed
fizkes//Getty Images

キスや前戯から挿入へと流れるようなスマートなセックスがしたいのに、コンドームのために中断するのが嫌だ、雰囲気が壊れるのが嫌だ、という話もたまに聞く。つける作業に慣れれば、それもかなりスムーズにできるとは思うが、女性に愛撫ついでにつけてもらうなど、装着自体にエンタテイメント性を持たせるのも良いかもしれない。

口でコンドームをつける練習なんかを青春時代にしている女性もいるので、男性より簡単かつエレガントにつけられる場合もあるかもしれない。コンドームをすると快楽が減る、イキにくくなるという意見もあるが、堀之内の高級ソープ嬢に聞いたら、コンドームの中に潤滑ローションを仕込むと男がイクのが早まるという裏技を教えてくれた。私は男ではないので、それがどれくらい気持ちよいのかは知らないが、コンドームありきで幸福度を高める工夫を考えてみるのも悪くないアイデアのような気がする。

簡単にナマ中出しをさせてくれる女は愛なんて関係ないのかも

romantic couple lying holding hands in bed
fizkes//Getty Images

もう一つ、公の場で口に出されることは極めて少ないのだが、ナマのセックスを受け入れられることで、支配欲が満たされるという意識もゼロではないかもしれない。昔、口に出されることが少ないことをべらべら喋る男友だちが、「コンドームありの挿入は、キスするときにサランラップを挟んでするようなもの」という珍妙なことを言っていたのだが、極端に言えばそう感じてしまい、愛の証明的にナマのセックスを所望するということは想像できる。

しかしそういう人こそ、言葉によるコミュニケーションをもっと磨けばいいのであって、相手が自分をどれだけ好きかとか、どれくらい受け入れているかとか、そういうことはセックスのリスクによってではなく、言葉によって確認を取れば良い事柄である。

風俗のオネエサンだって、自分の身を守るためには聞き心地の良い嘘くらいついてくれるだろうし、簡単にナマ中出しをさせてくれる女は、相手の男性に深く入れ込んでいる愛情深い人というよりは、むしろ愛なんて関係なく割と誰にでもナマ中出しを許しちゃうタイプである可能性が高いので、特に大切なことが証明されるわけでもない。

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どうしてもコンドームなしでセックスしたい人は…

urologist doctor giving consult for prostate problems to patient urologic oncologists specialize in treating cancer of the urinary tract and male reproductive organs mens health problem concept
Pornpak Khunatorn//Getty Images

さて、それでもどうしても体質的にコンドームが苦手、どうしてもしたくないという人もいるかもしれない。そういう場合はどうすれば良いか。長期的なパートナーと妊娠の心配のないセックスをしたい場合は、定期的なSTD検査(性器クラミジア感染症・淋菌感染症・HIV感染症・梅毒等の性感染症の検査)とパイプカットの併用で、挿入時の多くのリスクが回避できる。

ただ、片方にとって世界でたった一人の長期的なパートナーであっても、相手にとってそうかはわからないわけだし、相手の女性にとって数多いるセックスパートナーの一人でしかなければSTDのリスクはぬぐいきれない。そうだった場合、性病とともに知りたくなかったほかの男性の存在が同時に告知されることになるため、精神的な衝撃は二倍、という怖さはある。

rear view of an unrecognisable mature man sitting on his bed looking out of the window negative emotion
Justin Paget//Getty Images

最も負担が少なく、また誰の身体も傷つけないでコンドームを回避する方法は、挿入をしないことだ。セックス自体をしないのでもいいし、STDの危険があることにはあるが、オーラルセックスでお互いの満足をはかってもよい。別に粘膜接触なしでも実は、いろいろと快楽の追求はできる。マスターベーションを見せ合うのも悪くないし、そもそも女性は膣内よりも陰核でより強い快楽を感じる人が多いので、別に性器の挿入はなしで指先だけでつながる関係もありだと思う。大体、セックスなんていうのは別に誰に強制されるものでもないわけだし、セックスで子どもをつくりたいという希望がなければ挿入なしの関係を作ることはいくらでも可能だ。 TENGAなどの挿入型トイやセックスドールには、どれだけ強引な中出しプレイをしても特に咎(とが)められない。

シートベルト着用が苦手な人は乗用車を諦めて、別の公共交通機関などで豊かな移動ライフを送る権利があるし、コンドーム着用が苦手な人は挿入を諦めて別の方法で豊かな射精ライフを送る権利がある。そもそも恋愛にセックスが必要だというのも思い込みに過ぎないかもしれないのだ。

鈴木涼美新著

講談社 『トラディション』

『トラディション』
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「群像」8月号掲載の中編を単行本化。ホストクラブの受付で働く「私」、ホストにハマる幼なじみ。夜の世界を「生き場所」とする彼女らの蠱惑(こわく)と渇望を描く小説。

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