すべてのビヨンセファンにとって祝福すべき日となった、2022年7月29日(金)。長い間、ソロのニューアルバムを待ち望んでいたビヨンセの熱狂的な信者“Beyhive(ビーハイヴ ※)”のもとに、2016年の「Lemonade(レモネード)」以来の6年ぶり7枚目となる新譜「Renaissance(ルネッサンス)」が届きました。

このアルバムはダンスとハウスにとりわけ重点を置きつつ、さまざまなジャンルを巧みにブレンドした作品です。オバマ元大統領のように、この夏ずっと先行シングル『Break My Soul(ブレイク・マイ・ソウル)』を聴いていた人にとっては、これはさらなる歓喜を呼び起こすでしょう。その他には、『Cozy(コージー)』『Alien Superstar(エイリアン・スーパースター)』『Cuff It,(カフ・イット)』『Church Girl(チャーチ・ガール)』『America Has a Problem(アメリカ・ハズ・ア・プロブレム)』といった楽曲が収録されています。

※ 蜂の巣箱のbeehiveとかけたファンの愛称

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そしてこの16曲からアルバムは、ビヨンセにとって全く新しい時代が到来したことを告げるものとなるでしょう。この「Renaissance」は実に楽しく、活気に満ちていて、時にとてもエロティック…。歌詞には多くのメッセージがイースターエッグのように隠されていて、言うまでもなく、いまや大騒動を巻き起こしています。それでは早速、このニューアルバムをまだ聴いていない人に、知っておくべき5つのポイントをお伝えしましょう。

どこで聴ける?

これは重要な質問ですが、その前に……。ビヨンセはこのニューアルバムを『Act I: Renaissance』とも呼んでいます。「Act I」……つまり、第1幕として発表したという意図が読み取れます。そうしたことからファンの間では、「何幕まで続くのだろうか?」といううれしい疑問が浮上中です。そこでアルバムのライナーノートに目を向けると、少なくともあと2章は続きそうな内容が記されています。

そして最初の質問に戻るなら、Tidal、Apple Music、Spotify、YouTubeなどの音楽配信サイトのすべてで聴けます。ビヨンセ前作のソロアルバム「Lemonade」のリリース時、Tidalで独占配信されたのとは対照的です。

収録曲はどれも素敵。でも最高の一曲は?

何人か子どもを持つ親に、「誰が一番のお気に入りですか?」とうかがうくらい、ビヨンセのこのアルバムから傑出した1曲を選ぶのは難しいことです。とは言え、それは不可能なことでもありません。注意深く編集されたアルバムの中の16曲を通してビヨンセは、「シャンパンを開け、開放的な気持ちに浸り、そして自分を信じ、40歳の夏を過ごす」と宣言しています。

ここで敢えて、この16曲の中で頂点に君臨する楽曲を挙げさせてもらうなら、それは『Heated』です。この曲には、この夏にダンスアルバムをリリースしたドレイク(申し訳ないですが、彼のアルバムはそれほどいいものではありませんでした)を含め、複数のアーティストが参加しています。クラブにぴったりのこの曲の中でビヨンセは、飼い慣らされない自分についてこう歌っています。「本当の男だけが私を飼い慣らせる/私を奏でられるのはラジオだけ(Uh, only a real man can tame me/Only the radio could play me)」

そして、『Thique』も素晴らしい1曲です。シンセサイザーが響き、身体が思わず動くようなこのナンバーで、ビヨンセは「ますますぶ厚く、豊かになる札束」、さらには自分の持っているあらゆる資産がますます増え豊かになっていくことを歌っています。

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Beyoncé - HEATED (Official Lyric Video)
Beyoncé - HEATED (Official Lyric Video) thumnail
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『Cozy』ではあのエレベーター事件を歌っている?

大スターのニューアルバムを聴く楽しみの1つは、歌詞を解読し、そこで言及されていることをすべて理解しようとすることです(それは音符と音符の間も含んでいるでしょう)。そして、当然この『Renaissance』でもそのゲームが進行しているのです。

2015年にネットのニュースを見ていた人なら、あの恥ずかしいエレベーター事件を覚えていることでしょう。エンタメサイト「TMZ」が動画を公開したあの事件です。そこにはビヨンセの妹ソランジュが、ビヨンセの夫のジェイ・Zに向かって激しく口論をふっかける様子が写っていました。アルバムの2曲目「Cozy」でビヨンセは、この事件について触れているようです。私の妹をバカにしないでよ/彼女は最高なんだから(Might I suggest you don't fuck with my sis (Ooh)/'Cause she comfortable)」と歌っています。

歌詞に隠されたイースターエッグは、プライベートに関したものだけではありません。グラミー章受賞者にふさわしく、『Energy』では政治的な話題にも触れています。「45票を投票するんだ/列を乱すな(Votin' out 45, don't get outta line)(※1)」というフレーズは、ドナルド・トランプ前大統領への弾劾を歌ったものです。またこの曲でビヨンセは、“カレン(※2)”のことも大々的に非難しています。「私はこの国に小型ピストルと一緒にやってきた/カレンたちがテロリストになったから(I just entered the country with derringers/'Cause them Karens just turned into terrorists)」と、ビヨンセは一気に歌い上げます。

※1ドナルド・トランプ大統領は、退任後に下院から弾劾訴追の決議を受けました。上院では共和党議員50人のうち45人が弾劾に反対し、無罪となりました。
※2 Karen=特権意識を持ち、横柄に振る舞う白人女性を示すスラング。彼女たちの人種差別的行動が、このコロナ禍にSNSで拡散されました。

サンプリングに使われたケリスの曲は?

『Energy』と言えば、ケリスが1999年にリリースした楽曲『Get Along With You』をサンプリングしていることで物議を醸しています。また念のために言っておくと、ケリスの大ヒット曲『Milkshake』も使われています。

アルバムがリリースされる前日の木曜日、ケリスはSNSでサンプリングについて知った経緯について、世界に向けて語りました。普段は主にレシピを投稿している自分のインスタグラムアカウント(※1)に、「関係する当事者3人の無礼さ、無知さには驚かされる」とつづっていました。

「私もみんなと同じように、この話を聞いた。何事も見かけどおりにはいかない。この業界の人間の中には魂も誠実さもない者もいて、みんなを騙しているんだ」と…。

続けてケリスは、この曲で自分の作品が使われている部分は「コラボではなく盗作だ」と付け加えていますま。さらにビヨンセだけではなく、ザ・ネプチューンズのファレルやチャド・ヒューゴ(※2)からも侮蔑されていると感じたことをカメラに向かって堂々と語っています。

「コラボレーションの定義は、一緒に作業すること。だから盗作と呼んだ…」と語る動画をインスタグラムにアップし、「『すべてが順調で問題がないか?』を確認することすらしないなら、一緒に働いていることにはならない」と主張しています。

※1 ケリスはシンガーとして活躍しつつ、名門料理学校ル・コルドンブルーを卒業。オリジナルソースやレシピ本を出しています。フェスにフードトラックを出したり、レストランのプロデュースを手掛けたりしたことも。
※2「Milkshake」はファレル・ウィリアムスとチャド・ヒューゴによるプロデューサーユニット、ザ・ネプチューンズが作曲とプロデュースを手がけています。

ネットはこのアルバムに興奮している?

もちろん! このアルバムが与えている興奮や騒ぎを考えれば、SNSがリアクションやミーム、メッセージであふれているのは当然のことでしょう。

そこで以下は、私たちが見つけたお気に入りをおすすめしています。

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「ビヨンセは自宅待機中にこれをつくって、俺たちをバックアップしてくれたんだ!!!」

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(ミームに)「”I’M THAT GIRL”でしょ、”COZY”でしょ、”CHURCH GIRL”に”VIRGO’S GROOVE”、”HEATED”に”AMERICA HAS A PROBLEM”、”PURE/HONEY”」。

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「私にとって月並みなものが面白くないのは、それはビヨンセがいるから。(つまり)私の目は厳しくなっているから、簡単には感動しない」

「今晩ものすごく外に踊りに行きたいけれど、いろいろなウイルスもものすごく怖いんだ」

Translation: Yoko Nagasaka

From: Esquire US