時が物事を変えるって人はいうけど
実際は自分で変えなくちゃいけないんだ
―アンディ・ウォーホル
現在、京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」にて大回顧展(2022年9月17日~2023年2月12日)が行われている“ポップ・アートの旗手”、故アンディ・ウォーホル氏。トミー・ヒルフィガー氏にとっても彼は尊敬する人物の一人でもあり、今回のショーで大いなる愛とともに回顧しています。
そんなアンディ・ウォーホル氏は、いくつもの名言を残しています。中でも印象に残っているのが上のひと言、そして以下になります…。
「誰もが15分間なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう(In the future everyone will be famous for fifteen minutes)」―僕は60年代にそう予言したけど、それはすでに現実になった。僕はもう、この言葉には飽き飽きしているんだ。もう2度と言わない。これからはこう言う、「誰もが15分以内に有名人になれる、そんな時代が来るだろう(In fifteen minutes everybody will be famous)」ってね。
現地時間2022年9月11日(日)、「トミー ヒルフィガー」は3年ぶりにブランドのホームであるニューヨークファッションウィークへ復帰し、「Tommy Factory Fall’22」と題したランウェイショーを開催。そこでは、イラストレーター兼グラフィックデザイナーのファーガス・パーセルとのパートナーシップから生まれた新しい『THモノグラム』が発表され、時代の息吹を取り入れたモダンなプレップスタイルが次々と披露されました。
今回のショーの演出自体も、その所在をURL(Uniform Resource Locator)とIRL(In Real Life)を融合した新世界を表現。フィジカルかつカッティングエッジなランウェイが具現化され、Roblox社の提供するTommy Factory NFTをゲストがモバイルで受け取ることができるなど、最新のメタバース・アクティベーションによってIRLの観客たちもURLの世界での滞在を実感できる仕立てとなっていました。
では以下に、これらをフロントロウ(最前列)で体感した大平修蔵氏をモデルに、フィジカルなニューヨークのロケーション撮影を展開します。語るのは、同じくこのショーを実体験したニューヨーク在住のジャーナリスト、幣サイトの連載の筆者でもある黒部エリ氏です。
トミー ヒルフィガーがNYファッションウィークに戻ってきた。
テーマはアンディ・ウォーホルが作品を制作する場であり、それだけでなく美術家、ミュージシャン、トランスジェンダー、俳優など自由な思想を持つ人々が集るサロンにもなって、さまざまなコラボレーションを行ったスタジオ「ファクトリー」。
そのアティチュードをショーのフロントロウで自らのハートに注入した大平修蔵が、トミー ヒルフィガー流のカッティングエッジなプレッピーなスタイルをクールに着こなしてみせた。
ロケーションはもちろん、いまもなおアートとファッションと音楽の最先端を発信し続けるNYの街角から…。トミー ヒルフィガーのルーツでもあるこの街から、過去と未来が交叉するスタイルをお届けしよう。
「ニューヨークは初めてだけど、初めてじゃない」と、伝説のチェルシーホテルを見あげながら、大平修蔵は口にした。
「ゲームの中で、よくニューヨークが舞台のゲームをします。だからバーチャルではニューヨークをよく知っているんだけど、現実のニューヨークに来たのは今回が初めて。思っていたよりずっとポジティブな街だと感じました」
低い空の下、伝説のチェルシーホテルは赤くそびえている。かつてアンディ・ウォーホルが映画『チェルシーガール』を撮り、多くのアーティストたちが住み、ロックスターたちがたむろした場所だ。ニューヨークのカルチャーシーンが、ここから発信されたのだった。
セックスピストルズのシド・ヴィシャスが、恋人に命を奪われたホテルでもあることを告げると、「ピストルズ知っています、やばい、クールすぎます」と修蔵は口にした。時代の最もクールな部分を目撃してきたホテル。
その象徴的な場所で修蔵が着こなすのは、ネイビーのスーツとキャメル色のテキスチャードウールコートだ。アメリカントラッドの正統派スーツはマニッシュなラインを引き出し、あたかも映画から抜け出してきたかのような男の色気が漂う。コートは肩からかけて、思い切りダンディに決めてみたい。
オーバーサイズの
クリケットセーターで
鮮やかに際立つ
かつてはギャラリーが並んでいたアートの街ソーホー(SOHO=South of Houston Street:語源はハウストン通りの南)は、いまや著名ブランドのブティックが並ぶトレンディなエリアになっている。それでいていまだに石畳の道が残り、石造りの建物が並ぶソーホーは、古い時代の趣がある。
ソーホーの街角で修蔵はカメラをかまえながら、街の景色を切り取っていく。
レッドのTシャツとデニムシャツに、ロゴのレターがついた白いクリケットセーターでプレッピー感を漂わせ、ブルーのエッセンシャルスウェットパンツを合わせる。トリコロールの爽やかなカラーコーデに、腰にはパンツと同色のパーカを巻いた。
カメラをかまえる修蔵は茶目っ気たっぷりに、フォトグラファーのことも写真に納めていく。小雨の降る中、爽やかなプレッピースタイルの修蔵は、ソーホーの街でもひときわ光っていた。
バーシティジャケットに、
ロングマフラーでアクセントを
ブルックリンの人気エリアが、ウィリアムズバーグだ。ここにはトレンディな店やカフェが建ち並ぶ。
「ああ、これがウォーホルとバスキアなんだ」と、修蔵が声をあげた。
道端の一角に描かれた壁画は、ニューヨークのアートシーンを象徴する存在であったアンディ・ウォーホルとジャン=ミシェル・バスキアだ。実際に1983年にバスキアは、ウォーホルと知り合うことでチャンスをつかみ、80年代のアートシーンに彗星のごとく表れた。87年にはウォーホルが亡くなり、88年にはバスキアが早世して、一時代の幕が引かれた。
いまでもウォーホルやバスキア、あるいはキース・ヘリングなど、この街が生んだアーティストの面影はどこにでも見られる。そしてまたトミー ヒルフィガーが表現するアメリカンスポーツウェアも、ニューヨークが育んできたカルチャーだ。
ここで修蔵がまとったのは、存在感があるHのレターがついたミックスドメディアバーシティジャケットを主役に、今の時代を感じさせるルーズフィットのチノパンツ。ロングマフラーでアクセントをつけて、モカシンタイプのワークブーツで軽快に装った。
ブルックリンに映える、
ボーダーの
テディダウンジャケット
「ニューヨークはもっと危険な印象とか、アジア人差別とかあるのかなと思っていたんだけど、実際に来たら、会う人たちがみんな明るくてナイスで、すごくいい印象を持ちました。大好きな街です」
そう修蔵はニューヨークの印象を語る。
ドミノパークには、過去と未来が交叉する。ここはかつてドミノシュガーの工場があり、船で運んでいた工場地帯だ。そして同時に、再開発されたエリアとして最先端のニューヨークがあり、トレンディな人種が集まる。ウィリアムズバーグ橋と、目の前に広がるイーストリバーの眺めは壮大だ。
ここで修蔵がまとうのは、ボーダーテディダウンジャケット。アメトラらしいボーダー柄で、ふわふわとしたボア素材にポップさが弾け、ニューヨークの冬ですら楽に過ごせる暖かさだ。インナーにはブルーのジップアップとパンツで、ニューヨークらしいストリート感を加えてみせた。
今回、NYファッションウィークに久しぶりに戻って来たトミー ヒルフィガーがショーの場所に選んだのが、ブルックリンにあるスカイライン・ドライブ・イン・シアター(Skyline Drive-In NYC)だ。
トミー・ヒルフィガー氏は今回のステージについて、こう振り返る。
「ニューヨークはボクがファッションの世界に入ったばかりの頃、最先端のファッション・アート・音楽・エンターテイメントが一堂に会していた地であり、いまも最先端のインスピレーションをくれる場所です。ボクの大好きなアーカイブのインスピレーションを、新しいライブイベントのコンセプトやバーチャルワールドと融合させるのがテーマになりました」
今回は屋外に巨大な特設ランウェイを作るだけでなく、さらに大きなモニターを設置して、そこでメタバースの世界も映し出される趣向だ。まさにニューヨークの過去と未来が融合するランウェイだ。開演2時間前、修蔵はバックステージを女優の仲里依紗、 モデルのYAMATOと一緒に訪れた。
修蔵が着こなすのは、モノグラムと花柄が組み合わされたTommy Hilfiger x Richard Quinnのスーツ。この大胆な花柄がこのコレクションの特徴となっている。バックステージではトミー・ヒルフィガー氏と握手を交わして、カメラのフラッシュを浴びた。
特設会場には、撮影ブースなどの仕掛けがしてある一角も設けられ、ランウェイでは始まる前からDJが音楽をかけているというパーティのような雰囲気がかもしだされている。
そこでも修蔵は大人気で、多くの人たちから一緒に撮影することを求められた。
「すごいです、これだけ大規模のランウェイが開催されるっていうことが、想像を超えている。日本では考えつかないスケールで、興奮しています」と、修蔵は目を耀かせる。
NYコレクションでも、これほど規模の大きなランウェイはなく、ここではすべてのスケールが桁違いなのだ。
今回のフロントローにはセレブたちが集まり、トラヴィス・バーカー(ランウェイ上でドラムス演奏)とコートニー・カーダシアン、ショーン・メンデス、ジョン・レジェンド、ケイト・モス、ジョン・バティストといった一流のスターが集まった。
会場に音楽が鳴りひびき、いよいよランウェイがスタートする。
ランウェイに飛び出すのは、冒頭からプレッピーなモチーフだ。ラガーシャツ、レタードカーディガン、クリケットセーター、スタジアムジャンパー、ニットマフラー、タータンチェック、レジメンタルタイなど、トミー ヒルフィガーの象徴とも言えるアイテムが次々と登場。また、ロゴプリントが多く打ち出されて、スーツやダウンコート、ジャンプスーツなどで展開された。
そしてプレッピーでいながら、プロポーションは新しい。
セーターやラガーシャツは極端にビッグサイズに仕立てられ、チノパンがバギーであったり、反対にモノグラムのスーツがぴったりと体に吸いつくようなタイトさであったり、あるいはトップスがクロップ丈だったりと、プロポーションを大きく変えてつくられ、まったく新しいスタイリングを披露した。
フィナーレではトラヴィス・バーカーがドラムを披露して、観客たちが熱狂的な拍手を贈ったのだった。
「カッコよかったです。全てに抜かりがなくって、カッコよくてしびれました…」と、修蔵はそう興奮しながら口にした。
ニューヨークの伝説のアートシーンから、未来へと続くランウェイ。トミー ヒルフィガーがまたも新たなクールさを披露してくれた。
●お問い合わせ先
トミー ヒルフィガー カスタマーサービス
TEL 0120-266-484
公式サイト
Model / Shuzo Ohira
Photograph / SARAI MARI
Hair & Make-up / Mark Alan Esparza
Styling in Japan / Hajime Suzuki
Styling in NY / Eri Soyama
Coordination in NY & Text / Ellie Kurobe-Rozie
Edit / Kazushige Ogawa(HDJ)
Tommy Hilfigerとは?
ファッションデザイナーであるトミー・ヒルフィガー氏は、1985年に自身の名を冠にしたブランドをスタートさせました。現在では、アメリカを代表する最高峰のファッションデザイナーの一人であり、同国を代表するプレミアム・ライフスタイル・ブランド「トミー ヒルフィガー」として世界的に認知されています。創業以来、彼はわれわれに着こなすことでポジティブさを共有し、日々を過ごす上で大切な好奇心を刺激し続けてくれています。
トミー・ヒルフィガー氏が繰り出すアイテムたちは、「プレッピー」と言ったクラシックな中にも品のあるアメリカンスタイルのエッセンスにしながら、そこにモダンなひねりを加わえた愛すべきものばかり。そのバリエーションはメンズ、ウィメンズ、キッズ、そしてデニムやアクセサリー、そしてフットウェアを含む幅広いコレクションか構成されています。
“TOMMY HILFIGER(トミー ヒルフィガー)” と“TOMMY JEANS(トミー ジーンズ)” というブランドのもと、世界中に明確なパーパスを擁した姿勢とともに、アイテムそしてスタイルを提供してくれています。そんなトミー ヒルフィガー社は、サステナブルと多様性に対して揺るぎないコミットメントを表明していることも忘れてはならないでしょう。