1994年に公開された名作映画『レオン』を見たことがないという人は、ぜひとも観るべきです。なぜならば、とにかく完璧な映画だからです。

 爽快で繊細、おかしくも悲劇的で、美しく、痛いほどクールなこの映画は、孤独なイタリア系移民の殺し屋と、さらに孤独な12歳の少女のありそうもない絆が描かれています。2人が協力して立ち向かうのはクレイジーな麻薬取締局の悪徳刑事であり、それをゲイリー・オールドマンが巧みに演じました。 
 
 この映画はいつ観てもスタイリッシュで、少しでも90年代半ばの要素を含むものが流行る現代においては、特にスタイリッシュに感じられるでしょう。

 「マチルダのワードローブが手に入るなら、インスタグラムのフォロワーを数千人分あげてもいい」というような女の子は、いくらでもいるのではないでしょうか。…とは言え、ここで言いたいのはもっと多くの男性がレオンのような装いをすべきだということです。

 ロングコートに小さなビーニー帽、白のTシャツ、ブーツ、そしてサングラスというコーディネートですが、中でも本当に素晴らしく、印象的なのが彼のキャラクターを特徴づけるサングラスです。小さな円形フレームのこのサングラスは、ジャン・レノの彫りの深い顔に完璧にマッチします(アイウエア選びにおける原則は、顔の形と対照的なフレームのものを選ぶことです。角張った顔なら円形のフレームを、丸顔なら逆です)。

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Gaumont Films//Esquire
『レオン』の場面写真。 Courtesy of Gaumont

 とは言え、映画の中でのアイウエアが最も存在感を示した瞬間を選ぶなら、さらに35年前のケーリー・グラントが主演を務めた『北北西に進路を取れ』までさかのぼる必要があるかもしれません。

 このヒッチコックの名作スリラーについては、人違いで追われる広告会社重役のロジャー・ソーンヒル(ケーリー・グラント)が、砂ぼこり舞う平原で低空飛行する複葉機から逃げ惑うシーンを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、最もクールだったのは電車内でのシーンでした。ソーンヒルは、ブリッジがキーホール型にデザインされたべっ甲のサングラスを身につけ、イヴ・ケンドール(エヴァ・マリー・セイント)に効果的にアプローチします(「魅力的な女性に出会ったときには、彼女を口説きたい気持ちなどないというフリから始めなければならない」とは彼の言葉です。間違いありません)。パーフェクトなグレイのフランネルスーツ、日焼けした肌、中部大西洋沿岸地域の話し方も相まって、まさにメンズウエアの伝説とも言うべき瞬間でした。 
 
 カリフォルニア発のハイセンスなアイウエアブランドであるオリバー・ピープルズは、ケーリー・グラント財団からこのフレームのデザイン許可を初めて取得し、完璧なレプリカを発表しました。

 オリバー・ピープルズと言えば、控えめで時代に左右されないスタイリッシュなフレームをつくることで有名で、これまでにも「グレゴリー・ペック」や「オマリー」(『アメリカン・サイコ』でパトリック・ベイトマンが身につけていたサングラスです)といった失われたエレガンスの時代を思い出させるようなフレームの数々をデザインしてきました。このため今回のモデルも、この伝統を受け継ぐものというわけです。 
 
 しかし、こういったサングラスが似合うかどうか確信が持てない…といった不安を抱くような場合には、映画の永遠のアイコンとも言うべきレイバンの「ウェイファーラー」がオススメとなります。

 このサングラスを身に着けて、かっこ悪く見える人などいません。シンプルな無地のブラックは失敗のしようがなく、『ブルース・ブラザーズ』のジョン・ベルーシとダン・エイクロイドや『卒業白書』のトム・クルーズ、『レザボア・ドッグス』のハーヴェイ・カイテルなどもこのことを証明してきました。

 とは言え、べっ甲のモデルも見逃してはいけません。このフレームを冷静沈着にかけこなしたのは、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)。ニューヨークの金融マン風のプレッピースタイルが今もクールなのは間違いありませんので、このサングラスに合わせるローファーやポロシャツ、白のフェラーリも価値ある投資かもしれません。 
 
 さて、ここからは避けるべきサングラスを紹介しましょう。例えば『ファイト・クラブ』のタイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)は、映画に登場するキャラクターの中でも最もクールな男性キャラクターの1人であることは間違いありません。ですが、あの赤レンズのキワモノサングラスを家族のバーベキューにでも身につけて行こうものなら、母親に平手打ちを食らわされることでしょう。

 また、『マトリックス』のネオ(キアヌ・リーブス)がかけている、あのエイリアンの目のようなサングラスもNGです。休日にドライブを楽しむ、引退した会計士のように見えてしまうことでしょうから…。 
 
 最後に、人によっては反感を買うかもしれませんが、個人的にはアビエイターサングラスは好きではありません。『トップガン』の中で、マーヴェリック(トム・クルーズ)やグース(アンソニー・エドワーズ)、アイスマン(ヴァル・キルマー)たちがかっこよく見えるのは、彼らが若くてハンサムなハイテク戦闘機のパイロットだからです。私たち一般人がアビエイターサングラスをかけると、音楽プロデューサーのサイモン・コーウェル(『アメリカン・アイドル』などの審査員として知られる)のように見えてしまうのです。こうして改めて観ると、慎重に選ばれたサングラスよりも信頼できる唯一のアクセサリーは、『F-14A トムキャット』戦闘機だということが再確認できますが…。 
 
 話を戻しましょう。これから少しずつ紫外線が増え、プライベートでサングラスを着用する機会も増えるでしょう。そのときにためにぜひとも、ここでハリウッドスターたちから素敵なサングラスの選び方を教えてもらいましょう。 

 
 
From Esquire UK 
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。