ほとんどの男性にとって、ネックウエアはなかなか自然に身につけられないものです。つけてみても、違和感を感じるという人も多いのではないでしょうか。そんなわけで頭と胴体をつなぐ皆さんの大切な首は今も、生まれたままの自然な姿をキープしているかと思います。たまの機会に、タートルネックを着こなすときは別ですね…。
ネクタイを着用しなければいけない場合なら、パリッとしたシャツの固い襟がクッションになってくれます。ネックレスの場合は通常はゆるく、胸骨の上にキラキラと座っているだけですし…。しかし、首のもう少し上にキュっと何かを巻こうとすると、急に不快になり、エリザベスカラー(外傷を持った動物が、傷口をなめることで傷を悪化させることを防ぐための円錐台形状の保護具)を巻かれたビーグル犬のように、触ったり引っ張ったりしたくなってしまうのです…。
そんなアイテムの代表例が、ネッカチーフではないでしょうか。
もともとは軍隊で使用されていたもので、南北戦争の時代から若き水兵たちは黒いネッカチーフを身につけていました。ボーイスカウトでも制服の一部として使われることが多く、色やチーフリングで身分がわかるようになっています(ターコイズは“今月のビーバー(小学校1年生から2年生までの最年少部門)”、茶色はリーダーなど)。
つまり、戦時中に大砲を配置したり攻撃から逃れたときに、額の汗を拭うのに使われてきた機能的なアイテムだったのです。しかし2020年は、戦地に行く機会はおそらくないでしょう。30歳近い男性が、ボーイスカウトに歓迎されるとも思えません。…と言うことは、ネッカチーフは「もう使い道のないワークウエア」の箱に入れて処分されてしまうのでしょうか。
その年齢になっても、ディッキーズのパンツをまだ重用しているのは、私たちにはいくつかのバリエーションを持たせたパンツが必要だからです。チョアジャケットも同様で、ポケットにはナイフとコンパスの代わりに、鍵とiPhoneを必需品として入れるのに使われます。ちなみにチョアジャケットとは、日本ではカバーオールという名称で親しまれているジャケットのこと。「Chore(チョア)」とは「雑用・作業」という意味で、つまり「チョアジャケット(Chore Jacket)」とは、作業時に着るジャケットということになります。
しかし、ネッカチーフのほうはメンズウエアの中でも、「気取ったアクセサリー」と判断されがちです。それはそうかもしれません。私たちは水兵でも、ボーイスカウトでもないわけですから…。
しかし、「お洒落に着こなすのに、理由なんて必要ない!」と言うかのように、最新シングル『Tooosie Slide』でさらなる注目を浴びるラッパーのドレイクが、今週バルバドス旅行先でそんなスタイルをした自らの写真を投稿していました。
その写真に映るドレイクは、タンクトップと光沢のあるショートパンツに、なんとネッカチーフをつけています。色はおそらく、バルバドスの国旗をモチーフにしたもので、旅行者の定番アイテムのようです(ならば、理由があるとも言えますが…)。
数日前、同じ旅行からヨットの高級カーペットについたタバコの焦げ跡をハサミと糸で直している動画がアップされていますが、確かにボーイスカウトっぽい姿でもあります。そこに記せられたコメントを見ると、フォロワーたちも新しいルックに盛り上がりを見せていました…。
ネッカチーフはかつて流行りだったピストバイクに乗って、ヘルシーなコンブチャを愛飲し、もらったメールの返事もよこさないような…スカしたお洒落男性陣がよく着こなしていた時期もありました(ちなみにここで言う「KOMBUCHA(コンブチャ)」とは、日本で言うそれとは違います。いわゆる砂糖とお茶でゼラチン状の塊となった発酵させた飲み物のことであり、日本では「紅茶キノコ」として知られていたものになります)。
ですが現在は、ネッカチーフというアイテムはランウェイにも登場するようになり、徐々にトレンドとなりつつあるのが事実なのです。
例えば「Ermenegildo Zegna(エルメネジド ゼニア)」の最新シーズンでは、アウトドアをテーマに“ミラノの都市農家”スタイルに同じ色調のネッカチーフを合わせていました。
これから来る秋冬コレクションを見てみると、フランスとモロッコが融合したブランド「Casablanca(カサブランカ)」は、“リベラーチェ・イン・ピガール”風の代表的スタイルを、青やピンクや緑の柄が入ったネッカチーフで完成させています。
現在は、アクセサリーの黄金時代と言えます。コンサバな人も、メンズウエアでは冒険する時代というわけです。服をより洗練されたものにするためには、挑戦していかなければならない…と言っているのでしょう。
これから本格的に暑くなる夏には、額の汗を拭う必要も出てくるでしょう。そんなときにネッカチーフは、このすべてに対応できるアイテムと言えるのです。なので、一度くらいは試してみてはどうでしょうか!?
Source / ESQUIRE US
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。