かなり昔のことのように感じられますが、少し前にユトレヒトのレストラン「KookaBarra」 で、素晴らしい6品のコースメニューを食べました。しかし、私の記憶の中で最も印象に残っているのは、革新的な料理だけでなく、グラスに注がれた飲み物です。それが「オレンジワイン」でした。その軽い泡、美しい色、そしてフレッシュな味わいが、私の心をわし掴みしたのです。

calcarius orangepuglia
Calcarius

 私のグラスには、「KookaBarra」で取り扱ういくつものワインの中から選ばれた「Calcarius OrangePuglia 2018」が注がれていました。このワインを飲んだのは2020年8月頃のことで、暑さの中で飲む、あまりアルコール度数の高くないこのオレンジワインは喉を優しく潤しながらリフレッシュさせてくれました。

 最初このワインを飲んだとき、私はロゼだと勘違いしていました。ですが、ワインの知識が豊富な友人アイリスが、すぐにこのワインの種類を教えてくれたのです。「オレンジワイン」について、私はアイリスのように知識は豊富ではありませんが、これが特別なワインであり、他に比類のないものだということは理解していました。コクがありながらもフレッシュな味わい、そして、他のワインとは違う琥珀色のような深みのある色をしています。

オレンジワインについて

 オレンジワインはナチュラルワインの1つです。そのため、添加物を控えたオーガニックなワインとして世界的に人気が高まっています。

 しかしながらその名前の通り、オレンジからできたものではありません。オレンジワインの原料は白ブドウであり、赤ワインと同じ醸造法でつくられるのです。オレンジワインは自然に発生する酸化防止をうながすタンニンを持っており、赤ワインと同様に亜硫酸(酸化防止剤)の添加を控えたワイン造りが可能となるということです。

 オレンジワインという言葉を、最近聞いたという方もいるかもしれません。ですが、この醸造法は何千年も前にジョージアで始まったと言われています。現在のジョージアが位置するコーカサス地方では、およそ8000年前からワインづくりが行われていたと考えられています。そしてジョージアの伝統的なクヴェヴリ製法は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。これは、クヴェヴリという丸い大きな素焼きの壺を使用したもので、ブドウの栽培から醸造に至るまで、人の手をできるだけ加えない自然な製法になります。

 この素晴らしく興味深いワインについて、さらなる情報を求めてオランダでオレンジワインを生産する数少ないブドウ園「Dassemus(ダッセムス)」のロン・ランゲフェルドさんにお話をうかがいました。彼らのワインは、ミシュランの星付きレストラン「RIJKS」で提供されています。

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「ダッセムス」では、どのようにしてオレンジワインをつくり始めたのでしょうか?

「私たちの天然ブドウ園『ダッセムス』は、2005年に設立されました。それ以前は、ドイツの有機ワイナリーでインターンシップに参加しており、自分のブドウ園でそれらの自然生産技術を使用したいと考えていました。数年後、ワインの専門家であり、『Amber Revolution(オレンジワイン革命)』の著者であるサイモン・J・ウルフ(Simon J. Woolf)氏が『ダッセムス』に訪れました。彼はオレンジワインの需要が今後より一層高まることを予想し、私たちにこのタイプのワインを試すようにすすめたのです。そうして2017年に、初となるオレンジワインの樽が完成したのです。2019年には白ブドウの品種『ソービニオングリスブドウ』を、オレンジワインにすることにしました」

オレンジワインとは何か?生産者にインタビュー
UNSPLASH / MARKUS WRINKLER
アメリカのトラベラ―マガジンのウェブメディア「CN Traveller」は、Calcarius OrangePuglia 2018を「2020年の隔離期間中に飲むべきワイン」に選んでいます。

発酵から熟成まで、オレンジワインの製造プロセスとは?

「オレンジワインは、白ブドウからつくられています。ですが、醸造プロセスは赤ワインと同じです。まず、白ブドウを皮とともに発酵させます。白ワインの場合は、ここですでに皮や種を取り除きます。皮を含んだまま発酵することで、タンニンが生成され、ワインの貯蔵寿命が長くなるというわけです。白ワインはこのタンニンを持たないため、亜硫酸(酸化防止剤)を添加することで持続性を長くしています」

「しかしオレンジワインは、ナチュラルワインでつくることが可能です。白ブドウを大きな樽に入れて発酵が始まるのを待ちます。そこに時間がかかりすぎると厄介で、味にも影響が出ます。果肉が酸化するように、果肉発酵用の大桶は少量の酸素も必要となりますです。そうして発酵プロセスに約25日かけ、プレスしてワインだけを抜き取ります。その後、熟成期間に入ります。ジョージアでは、オレンジワインはテラコッタカラーの壺クヴェヴリに入れられますが、『ダッセムス』ではイタリアでつくられた特別なセラミック加工の壺でオレンジワインを熟成させます」

イタリアの日当たりの良いプーリア産のオレンジワインが、最も知名度が高いと思うのですが、オレンジワインはいつ頃から人気が出始めたのでしょうか?

「オレンジワインは、もともとワインのパイオニア的な存在でした。しかし、ここ数年で人気が高まってきてきており、特に東京・パリ・ロンドン・ニューヨークではよく飲まれています。オレンジワインの生産は小規模ですが、専門的に取り扱われているので、さまざまな品種のオレンジワインがつくられています。それも、伝統にならっていると思います」

ブドウ園「ダッセムス」のランゲフェルドさんがオレンジワインをつくるために使用する、ブドウ「ソーヴィニヨン・グリ」。
Getty Images
ブドウ園「ダッセムス」のランゲフェルドさんがオレンジワインをつくるために使用する、ブドウ「ソーヴィニヨン・グリ」。

「ダッセムス」の農園があるオランダの北ブラバント州産のオレンジワインは、どのような味わいですか?

「私たちのつくるオレンジワインは、非常に飲みやすいと好評をいただいています。フルーティーで芳醇な味わいです。バラとアプリコットのアクセントもあり、花のような味もします。タンニンが少し苦味を与えて、オレンジワイン特有の酸味もありますが、私たちのつくるそれはどこよりも優れた仕上がりだと確信しています」

オレンジワインは、どんな料理に合うと思いますか?

「モロッコ料理やインドネシア料理など、酸味と固形成分を含む料理とのペアリングが良いと思います。もしくは、スパイシーな魚や野菜も合うでしょう」

 「ワインとのペアリングは、レストランで」と考えている方も多いでしょう。ですがこの機会に、自宅で飲むワインを選ぶことを楽しでくれる方が増えることを願っています。

Source / ESQUIRE NL

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