日仏米共同製作の国際連続ドラマ『Drops of God/神の雫』で孤高のワイン評論家・遠峰一青を演じ、ファンのみならず広くワイン愛好家たちを魅了した山下智久さん。2023年9月の日本配信を前にモエ・エ・シャンドンのフレンズ オブ ザ ハウスに就任し、さらにワイン業界を席巻。自身もワインに深く傾倒する山下さんが、来日したモエ・エ・シャンドン 最高醸造責任者であるブノワ・ゴエズ氏とともにスペシャルなグラン ヴィンテージ のラインナップをテイスティング。卓越した収穫年のみに造られるこのスペシャルなシャンパンを口にして、彼はいま、何を思うのでしょうか。

preview for Tomohisa Yamashita meets Benoit Gouez champagne legends, Moet & Chandon
造る者と伝える者 シェフ・ド・カーヴとアンバサダー

グローバルに活躍する実力派俳優として、揺るぎない地位を得た山下智久さん。メゾン創業280周年を迎えるモエ・エ・シャンドンのフレンズ オブ ザ ハウスに抜擢され、注目の的です。

ブノワ・ゴエズ氏はその際、「われわれのメゾンへようこそ。私たちが継承してきた歴史の中で、その時代を象徴し、影響力のある人とパートナーシップを結んできた背景があります。美しさと華やかさ、俳優、歌手として確かな実力を兼ね備えたまさに時の人である山下さんをファミリーの一員として迎え、パートナーシップを組めたことをとても光栄に思っています」と賛辞を述べています。

そして山下さんはフレンズ オブ ザ ハウス就任にあたり、フランスのエペルネにあるモエ・エ・シャンドンのメゾンを訪問。そこで自らのバースデーイヤーを含む、いくつかのグラン ヴィンテージをテイスティングしました。

グラン ヴィンテージとは、良年のみに造られる特別なシャンパン。「グラン ヴィンテージとの出合いは僕にとって、シャンパンというものが“ブドウ”と“人”と“時間”が造る特別なワインであることをあらためて知る、目覚めの瞬間でした。年によって味わいや香りが違い、それぞれに深みがあり、ストーリーがあることに驚きました」と山下さん。

そして、ブノワ・ゴエズ氏にこう語りかけます。

「ブノワさん、グラン ヴィンテージを造るということは、どういうことなのですか?」

tomohisa yamashita japanese actor hold a glass poured with moet et chandon grand vintage 2015
MOET&CHANDON

グラン ヴィンテージを通して描かれるもの

そんな質問を受けてゴエズ氏はこう答えます。

「グラン ヴィンテージのワインメイキングは、ノンヴィンテージのそれとアプローチが異なります。ノンヴィンテージは高いレベルで品質をキープしながら、バランスのとれたスタイルをつくっていく作業。これに比してグラン ヴィンテージは、いわば新たな創造。その年のストーリーを、ワインを通して伝えるためのキュヴェです。ファッションに例えるならノンヴィンテージはプレタ・ポルテ、そしてグラン ヴィンテージはテイラーメイドであると言えます」とゴエズ氏。

そんなグラン ヴィンテージの醸造にあたって鍵となるのは、「カリスマ性、表現力の可能性、そしてその年にしかない唯一無二の個性」。グラン ヴィンテージが、いかに特別なシャンパンであるかがわかります。

モエ・エ・シャンドンのシャンパン造りの基軸となるのは、アッサンブラージュ(調合)。ベースワインをブレンドすることで、シャンパーニュ地方のテロワールの多様性を生み出します。これはシャンパーニュ地方最大のメゾンとして、全域から多様な個性をもったブドウの供給を得られるからであり、モエ・エ・シャンドンがトップ・オブ・シャンパンハウスとしてゆるぎない地位にある証。その中に、一貫して守り続けるメゾンのスタイルがあります。

では、モエ・エ・シャンドンをモエ・エ・シャンドンたらしめる、ワンアンドオンリーな要素とは何なのでしょうか。

tomohisa yamashita japanese actor holding a bottle of moet et chandon
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一貫して表現されるメゾンのスタイル

「メゾンのスタイルとして不可欠なのは、果実感、酵母のニュアンス、そしてテクスチャーの3点です」。さらにブノワ・ゴエズ氏は、「第一に大切なのはブドウの果実感。摘みたてのブドウを食べたかのように、フレッシュな果実感をピュアに表現すること。これを何より大事にしている」と言います。

次に酵母のニュアンス。酵母由来のブリオッシュのような芳醇さやスモーキーなアロマが新鮮な果実感と調和していること。そして口に含んだときのテクスチャー。 緻密な泡を伴うこの魅惑的な液体を口にしたときに、親しみやすさや大らかさ、そして新鮮さを口中に感じられるかどうか。

「私たちが造るすべてのキュヴェに、これらが表れていなければなりません」

良年のみにその創造がかなうグラン ヴィンテージ。それは単に優れた味わいのシャンパンとは一線を画し、メゾンのフィロソフィを根底に湛えた上でその年の特徴を最大限に描き出した、真のマスターピースなのです。

「グラン ヴィンテージを造るかどうかを、いつ決定するのですか?」と山下さん。

現在リリースされている最新のグラン ヴィンテージは2015年。ブドウ生育期を通して温暖で乾燥したこの年は、フランスのさまざまな産地でグレードイヤーとされています。暑かった分、シャンパーニュ地方では収穫時の酸度は例年に比して低めだったとも言われるヴィンテージです。

ヴィンテージを造る選択

「いい質問ですね。その年のベースワインが仕上がったタイミングでテイスティングし、ヴィンテージとしてポテンシャルがあるか、ヴィンテージの表現が可能かどうかを厳密に見極めて、私が判断します」。

さらにゴエズ氏は酸に関しても言及。「酸はもちろんワインにとって大事なファクターなのですが、私は酸の在り方だけにこだわっているわけではありません。まずは果実としてのフレッシュさを重視すべきだと考えているからです。温暖な2015年はほかの年に比べると確かに酸度は低いが、しっかりと成熟した黒ブドウのタンニンを備えていました。この熟度から生まれるハーモニーがワインの中に充実した果実感をもたらし、高いポテンシャルがあると判断したのです。予想通り、2015年ヴィンテージはミレジメ*の中でも傑出した仕上がりとなりました」。

それでは、近年にリリースされたグラン ヴィンテージの中で味わいの特徴やスタイルを考えたときに、ミレジメを山下智久さんに例えられるとしたら、それは何年のものなのでしょうか? それに対してゴエズ氏は、「2012年ヴィンテージ、そして2004年ヴィンテージ」と即答。

「なぜなら、この2つの年はいずれも、エレガントな佇(たたず)まいをもつヴィンテージ。完成度が高いだけでなく、実に洗練された印象のあるシャンパンに仕上がっています。まさに山下さんのイメージにぴったり」と、続けて語ってくれました。 

*「収穫」の意味。ここでは同じ年に収穫されたブドウのみを使用したワインを指す。

tomohisa yamashita a friend of house of the moet et chandon
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メゾンの顔としてのミッション

「そうなんですね、2012年と2004年をもう一度しっかりとテイスティングしなければ(笑)」と語る山下さん。そんな山下さんはフレンズ オブ ザ ハウスとして、これからどのようにモエ・エ・シャンドンと向き合っていくのでしょうか? 

「フランスのメゾンを訪れて畑やセラーに足を運び、そこに広がっている景色と太陽の光を五感で感じ、受け止めることができました。その情景が今も浮かんできます。これまでボトルの中身として理解していたものを、それが生まれた場所を知ることでリンクし、僕自身もあらためて、モエ・エ・シャンドンというシャンパンとつながれたように感じています」

これに対しゴエズ氏は、「山下さん、ありがとうございます。これから、われわれのシャンパーンとあなた自身がもつ共通の価値をアピールしていきたい。その価値とは、洗練されていて、エレガントで、かつラグジュアリーであるということ。まさにわれわれにしかない唯一無二の価値を、ともに広めていけたらと思うのです」とのこと。

「ブノワさん、私も同様に考えています。280年間継承されてきたモエ・エ・シャンドンのバックグラウンドに触れ、シェフ・ド・カーヴをはじめ、携わってきた人たちが紡いできたメゾンの歴史を知って、その重みを感じています。さらなる未来に向けて、今のこのときを自分の言葉で伝えていくことが、僕のミッションだと感じています」と最後に、山下さんが力強く語りました。

このほど、3つのヴィンテージからなる「グラン ヴィンテージ三部作 A Tale of Light (3つの光の物語) 」が発表されました。ゴエズ氏が考える”光”のイメージをもつ2015年、2006年、1999年がセレクトされ、夜明けから正午の光、黄昏時の夕日まで一日を通しての光を表現しています。2015年とともに2006年と1999年というバックヴィンテージをテイスティングすることで、現行の2015年がどのように熟成し、どのような発展を見せるのか。感性の扉を解き放ち、唯一無二のシャンパンであるグラン ヴィンテージの光のストーリーに、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

*ヴィンテージシャンパンのこと

benoit goez and tomohisa yamashita standing in front of the bottles of moet et chandon grand vintage "a tales of light"
MOET&CHANDON


【Profile】

山下 智久|Tomohisa Yamashita

1985年生まれ、千葉県出身。俳優、歌手として多くのドラマや映画、ステージに出演。海外にも活躍の場を広げ、2023年には国際ドラマ『神の雫/Drops of God』で主演を果たし話題を呼ぶ。2023年8月、モエ・エ・シャンドン・エ・シャンドンのフレンズ オブ ザ ハウスに就任。

オフィシャルサイト・FC

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ブノワ・ゴエズ | Benoît Gouez

1970年生まれ、仏ブルターニュ出身。モンペリエの高等農学院を卒業後、カリフォルニア、ニュージーランド、オーストラリア、南仏プロヴァンスなどのワイナリーで研修、勤務。1999 年にモエ・エ・シャンドン 入社。2005年、35歳の若さで醸造最高責任に着任。

a group of bottles on a rock
MOET&CHANDON

〔グラン ヴィンテージ三部作〕「A Tale of Light (3つの光の物語)」

モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ 2015
「輝く朝」

ピノ・ノワール 44%、シャルドネ 32%、ムニエ 24%
ドサージュ:5g/l
瓶熟成期間:約6年

モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ 2006
「まばゆいばかりの天頂」

ピノ・ノワール 39%、シャルドネ 42%、ムニエ 19%
ドサージュ:5g/l
瓶熟成期間:約7年

モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ 1999
「鮮やかなトワイライト」

ピノ・ノワール 38%、シャルドネ 31%、ムニエ 31%
ドサージュ:6g/l
瓶熟成期間:約21年 

●問い合わせ先
MHD モエ ヘネシー ディアジオ
TEL 03-5217-9906
公式サイト

Text: Hiromi Tani
Edit: Satomi Tanioka, Keiichi Koyama