きれいなピンク色のため、日本では「女子の飲み物」としてなぜか広まり、敬遠する男性も多いものの、イタリアでは「ロゼにジェンダーはない」が常識。とくに南イタリアの男性たちは、日常的に嗜(たしな)むのだとか。
そこで、南イタリア・プーリア州で生まれたワイン「サンマルツァーノ」の男性陣に、ロゼのリアルな楽しみ方をレクチャーしてもらいました。
1.クルージングにロゼ
ヨットを買い始めたら、本当の権力者――まことしやかに流されるこの噂。よくよく考えれば、盗聴されず、監視されず、聞き耳も立てられずに済む場所と言えば海の上が一番。『007』シリーズでも大事な取引は大抵船の上、犯罪者たちも本当に悪いことは船で行ってはいませんでしょうか。
そんなこともあってか(?)、プーリアの男性陣は豊かさの象徴たるヨット遊びをするためアドリア海に繰り出します。そしてその際、ロゼをもっていくのだとか…。海遊びの後の軽食時のお供にも、単純にアペロとしても、赤と白のいい所取りのロゼは便利な飲み物。海の男たちにロゼが愛されているのは、意外と実用的な理由からのようです。
2.キッチンにロゼ
「イタリアの食糧倉庫」とも言われる南イタリアでは、「男性が料理をする際のお供に、ロゼを選ぶことが多い」と言います。食事中には白や赤ワインを合わせることが多いところ、ロゼは単体で楽しめるのも魅力というわけです。サンマルツァーノのアレックス・エンドリッツィ氏いわく、「白と赤のおいしいところどりをしているので」とのこと。ロゼを飲みながら、家族や客人のためにディナーを振る舞うのが南イタリア男性の休日の定番なのだとか。
残念ながら、日本で現時点で販売されているサンマルツァーノのロゼは「Tramari(トラマーリ)」のみ。今後日本でも、「ロゼは女子の飲み物」というおかしな偏見が淘汰されてくれれば、他のロゼも入ってくるかもしれません。
3.ディナーにロゼ
ロゼといっても軽口のものから濃厚なものまで、そのグラデーションは幅広いということ。海岸の城砦都市ポリニャーノアマーレの名店「モールス」のダンディなソムリエが、本格的海鮮料理に合わせたのはサンマルツァーノの中でも60年以上の古木からのみ収穫されたぶどうから造られた「60 annni(セッサンタンニロゼサレント I.G.P.)」。色味はピンクというより黄色味が強く、オレンジワインのような不思議なロゼです。
ロゼは駆けつけ一杯の食前酒…といった偏見が(プロを除き)いまだ巷にある雰囲気を感じる中、ペアリングとして当然の選択肢としてロゼを見直すことができました。
日本で進んでしまったロゼワインのおかしなマーケティング。それを覆すためにも、「ロゼはイタリアでは男性の飲み物でもある」という蘊蓄(うんちく)を頭の片隅に置いて、今年のホリデーシーズンはぜひロゼをテーブルワインにしてみてはいかがでしょう。
※お酒は二十歳になってから。
※日本では飲酒をしながらの自動車・船舶の運転は固く禁じられています。