長年悩みの種だった、酒粕の扱い
日本酒の製造過程において、その副産物として生まれるのが酒粕(さけかす)です。古くから和食の調味料としても家庭でも愛用されてきましたが、食生活の変化に伴い、その消費量は激減。産業廃棄物として大量に廃棄・処理されてきました。
1750年創業の山梨県の名門酒造「七賢(しちけん)」(山梨銘醸株式会社)もまた、その問題に頭を悩ませていました。2014年のリニューアル後に人気がさらに拡大したことも手伝い、酒粕の量も増加。まさに痛し痒しの状態が続いていました。
その問題を解決すべく、七賢は酒粕に秘められた可能性をゼロから徹底的に研究。ようやくたどり着いたのが、酒粕に含まれた香りを有するアルコールを蒸留することで焼酎(スピリッツ)を生み出し、それを七賢と同じ白州の地に蒸留所を構えるサントリーの樽で熟成させるという製法です。酒粕由来のスピリッツをウイスキー樽で熟成させるのは、世界でも希少な製法です。さらに、七賢と同じ白州の仕込み水で製造されたウイスキー原酒を熟成させた樽との相性・親和性の高さは言うまでもありません。
フレンチの名門と共につくりあげる
そうして今回誕生したのが「アラン・デュカス・サステナブル・スピリッツ」ですが、気になるのはその味わいです。実際に試飲したところ、まず感じられるのはキレのよい清涼感です。担当者に聞くと、これは七賢の特徴である吟醸酒由来の吟醸香の賜物とのこと。さらに感じるのは、まろやかな口当たりで幾層にも折り重なった複雑豊かな味わいです。これは言うまでもなく、七賢と同じ白州の地でウイスキーづくりを行う白州蒸留所のウイスキー樽で熟成された恩恵でしょう。
さて、今回発表されたスピリッツ名を聞いて「なぜアラン・デュカス?」と思われるかもしれません。アラン・デュカスと言えば、世界11カ国で30近いレストランを統括し、伝説的なフレンチの鉄人として知られています。実は七賢とは2021年に「アラン・デュカス・スパークリング・サケ」を発表し、その後もアラン・デュカスの料理と七賢のペアリングイベントを行うなど、交流を深めてきた間柄にあります。
その後も関係性が続く中で、「持続可能な社会に向けて日本酒や食がどのような役割を果たせるのか」という問題への共通認識だったとのこと。そんな経緯を踏まえ、テイスティングや意見交換を重ね生まれたのが、「アラン・デュカス・サステナブル・スピリッツ」なのです。以下は発表会当日に提供されたカクテルですが、つくり方次第で多彩な味わいとマッチしつつも、そこにこのスピリッツの複雑かつ爽快な存在感をしっかりと感じることができます。
山梨の老舗造り酒屋が回す循環の輪
酒粕の新たな活用法のひとつとして期待される「アラン・デュカス・サステナブル・スピリッツ」ですが、蒸留後の酒粕の活用法についても見てみましょう。蒸留後の焼酎粕は酵母など豊富な栄養分を含む天然素材として有効利用が期待されています。具体的には、たんぱく質、ビタミン類, ミネラル類などさまざまな栄養成分が含まれていることが 知られています。
その酒粕は、山梨県の和牛の飼料として利用。また、牛のふん尿は酒米づくりの肥料に使い、地域で廃棄物を出さない「ゼロエミッション」を目指すとしているのです。さらに七賢は企業全体で使用する電力を水力発電に切り替え、年間 510 トンの CO2排出を削減しています。
もちろん、今回発表された「アラン・デュカス・サステナブル・スピリッツ」の蒸溜にもグリーンエネルギーが使用されています。山梨・白州で展開が開始されている新たなエコシステムは、老舗の造り酒屋として、地元の名水を守るために考え抜かれた持続可能なプロジェクトとして循環の輪を回し始めているのです。
「アラン・デュカス・サステナブル・スピリッツ」は2023年12月1日の発売。常設のレストランや百貨店や専門店、七賢WEBショップでも購入が可能です。
アラン・デュカス・サステナブル・スピリッツ
- 発売日:2023年12月1日
- 価格:3300円
- 内容量:720 ml
- アルコール分:37 度
- 飲用温度:常温
- 常設レストラン:ベージュ アラン・デュカス東京、パレスホテル東京 エステール、ブノワ東京、ムニ・アラン・デュカス京都
- 販売店:山梨銘醸七賢の蔵内販売店及び公式オンラインショップ、百貨店、専門店等
●お問い合わせ
山梨銘醸株式会社
住所:山梨県北杜市白州町台ケ原2283
TEL :0551-35-2236
公式サイト