2019年8月19日から始まって、同年9月8日(現地時間)に幕を閉じた2019年の全米オープン。その歴史を紐解くならば、現在の会場であるフラッシング・メドウズ・コロナ・パークでの開催から大きくさかのぼる必要となります。
テニスの熱狂的なファンであればご存知かもしれませんが…。全米オープン公式ドリンクである「ハニーデュース(テニスで40-40のタイスコアのことを指す『デュース』が名前の由来するウォッカ「グレーグース」をベースにしたアルコール飲料。ハニーデューメロンをテニスボール状にくりぬいたものがトッピングされる)を飲みながらの話のネタとなるものがほしいという方には、こちらのストーリーをお贈りしましょう。それはこの全米オープンが、どのようにして4大国際大会の一つになったのか?になります。
始まりは1881年
当初、「全米オープン」という大会名ではありませんでした。のちにオープン化され、まずは「全米選手権」という名前で1881年より開催されるようになりました。
主催はアメリカ・ナショナル・ローン・テニス協会で、最初のトーナメントは同年ロードアイランドのニューポート・カジノで行われ、男子のシングルスとダブルスのみでした。その後1887年から、女子のシングルスが行われるようになり、1889年には女子ダブルス、1892年には混合ダブルスの開催が加わっていきました。
1968年に全米オープンテニス選手権へ
「全米選手権」は90年近く開催地を転々とし、1968年にやっと5部門の会場がクイーンズのフォレストヒルズにあるウェストサイド・テニスクラブにまとめられました。この大会からプロ選手への開放を示すオープン化措置が実施され、大会名が「全米オープン」という名称に変わったわけです。そして、「全米オープン」初のシングルス優勝者となったのがアーサー・アッシュとバージニア・ウェードです。
そして1978年に、大会会場は現在のフラッシング・メドウ・コロナ・パーク内にある「USTAナショナルテニスセンター」へと移ることになります。2006年には、「USTAビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センター」と改名されます。
グランドスラムの最後を飾る大会
こうして全米オープンは、毎年8月の終わりから9月の初めの2週間開催されることとなりました。そして全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドンに続く、テニスシーズンのグランドスラム最後を飾る大会となっています。
賞金は最大額
また全米オープンは、賞金総額がテニス競技大会で最大であることでも知られています。
主催者の発表では、2019年の賞金総額が史上最大の5700万ドル(約61億円)であることが明かされました。中でも賞金が大きいのは、男女シングルス優勝者の賞金です。それは男女同額で、385万ドル(約4億1400万円)とのこと。
男女の賞金額が平等となった、最初のグランドスラム大会
1973年、ビリー・ジーン・キングの先駆的な努力と女子テニス協会の設立により、全米オープンはグランドスラムで初めて、男女の賞金額が平等の大会となりました。
当時チャンピオンだったキングは、「女性の賞金額が男性と同等でないのならば、大会をボイコットする」と宣言し、最終的に主催者側が要求を飲んだカタチになります。
同年の女子シングルス優勝者のマーガレット・コートは、男子シングルス優勝者ジョン・ニューカムと同じ金額の、2万5000ドルの賞金を手にしました。
黒人テニス選手として、初めて大会に参加したアリシア・ギブソン
まだ黒人差別が色濃かった1950年、アリシア・ギブソンは黒人選手として初めて全米選手権に参戦するという偉業を成し遂げました。
翌1951年にはウィンブルドンで初めてプレイする黒人選手となり、シングルスの選手として全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープン(当時は全米選手権)で優勝した最初の黒人選手であり、シングル、ダブルス、混合ダブルスを含め計11回グランドスラム優勝するという輝かしい成績を残したのです。
2019年の全米オープン開催中の8月26日、ギブソンを讃えた銅像が「USTAビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センター」のメインスタジアムである「アーサー・アッシュ・スタジアム」前に登場しました。
常にハードコートだったわけではない
1881年から1974年までは大会の公式ルールで、試合は芝で行われなければなりませんでした。その後1975年から1977年の3年間は、クレーコート(土を固めた地面の上に石灰石と赤土を敷いたテニスコート)になり、最終的に1978年にデコターフと呼ばれるハードコート(セメントとアスファルトが敷かれたテニスコート)に変更され標準コートになったわけです。
そんな歴史をたどる「全米オープン」。ちなみに2019年大会の男子シングルスは、33歳のラファエル・ナダルがグランドスラム通算19勝目を飾りました。一方、女子シングルは第15シードから勝ち抜いた19歳ビアンカ・アンドレスクがセレーナ・ウィリアムスを決勝で破り、カナダ勢初の四大大会(グランドスラム)優勝をはたしました。
From TOWN & COUNTRY
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。