「朝に飲むコーヒーや紅茶は好きだけど、カフェインが身体に与える影響が気になる」という方は少ないないかもしれません。確かに、一般的にカフェインというものは良いイメージはなく、特に不眠症不安感など、カフェインの副作用に悩まされている方もいることは事実です。そこに「デカフェ」という選択肢があるなら、自然とそちらを選ぶ方もいることでしょう。

 しかしながら、あなたの大好きなその飲み物から、いかにカフェインが抽出されているのか気になったことはありませんか? そして、「デカフェのコーヒーや紅茶は、健康への害はないのか?」も気になりませんか。

 そこで管理栄養士のジャスミン・カーボンさんに、カフェインを抜く方法やデカフェを選んだ場合の健康への影響について話をうかがいました。


デカフェ」のコーヒーや紅茶とは何か?

 「簡単に言うと、デカフェとはコーヒー豆や茶葉に入っているカフェイン(化合物)を取り除くことです」と話すカーボンさん。

 紅茶やコーヒーがデカフェとして分類されるには、カフェインの97%以上が除去されている必要があります。つまり飲み物の中には、まだ少量のカフェインが残っていることになります。

どのようにカフェインを除去しているのか?

 「カフェインを抽出する方法は数多くあります。有機化合物を溶解するジクロロメタンや酢酸エチルなどの化学物質を使ったり、熱と水と圧力を使う方法もあります」と、カーボンさんは説明します。

♢化学物質を使う方法

 「コーヒー豆からカフェインを抽出するために使われる化学溶剤としては、ジクロロメタン(別名塩化メチレン)や酢酸エチルなどがあります」とのこと。「焙煎する前の生豆を蒸してから溶剤で洗い流すことで、カフェインが抽出されます。ですが、コーヒーの味や栄養分の元となる分子は、ほとんど影響を受けません。この工程をカフェイン含有量が基準を満たすまで、8~12回繰り返しています」とのことです。

♢化学物質を使わない方法

 「化学物質を使わない方法の例として、トリグリセリド手法というものがあります」とカーボンさん。「カフェインを豆の表面に引き寄せるために、まず生豆をお湯に浸します。その後、豆を別の容器に移し、コーヒーの出し殻から抽出したコーヒーオイルに浸します。高温で数時間置いておくことで、トリグリセリドと呼ばれる油の中にある脂肪化合物が、コーヒー豆の味を残したままカフェインを除去するというわけです」と説明してくれました。

 「他には、水と圧力とカーボンフィルターを使ってカフェイン分子を除去するスイスウォーター手法などがあります」とも教えてくれました。また、「茶葉の場合は、二酸化炭素(天然ガス)と圧力と水を使った方法でカフェインを除去します」とも言います。

♢気をつけるべきことは?

 現在、カフェインを除去する方法は、すべて安全だと考えられています。ですが、化学物質を使わずに除去するオーガニックな方法を好む方もいることでしょう。

 「人によっては、化学溶剤を避けるためにカーボンフィルターや二酸化炭素を使った方法を好むようですが、いずれかの方法が他よりも安全だという証拠はありません」と、カーボンさんは話します。

 また残念ながら、どの手法でデカフェされたかを判断することは難しい場合もあります。「生産者の中には、ラベルにカフェイン除去に使用された方法を明記する方もいますが、法的な義務はありません」と、カーボンさんは言います。

デカフェのコーヒーや紅茶にはどれくらいのカフェインが含まれているのか?

 デカフェのコーヒーや紅茶には、少量のカフェインが含まれています。カフェインの含有量は除去方法によって異なりますが、平均量は次のようになっています。

【コーヒー】

  • 1杯のコーヒーに含まれるカフェインは、80~100mg
  • 1杯のデカフェコーヒーに含まれるカフェインは、2~15mg

【紅茶】

  • 1杯の紅茶に含まれるカフェインは、約48mg
  • 1杯の緑茶に含まれるカフェインは、約28mg
  • 1杯のデカフェ紅茶に含まれるカフェインは、約1mg
female hands eating breakfast in the living room
Yuki Kondo//Getty Images

デカフェのコーヒーや紅茶は身体に悪いのか?

 「ジクロロメタンや酢酸エチルが溶剤として使われるようになる以前、カフェインを除去するために使われていた一般的な溶剤はベンゼンというもので、現在は発がん性物質として認識されているものです」と、カーボンさんは話します。「幸い、デカフェの飲み物からこの物質を摂取する心配はもうありません」とのこと。

現在使われている化学溶剤は安全なのか?

 「ジクロロメタン」とGoogleで検索してみると、コーヒーや紅茶からカフェインを除去するのに使われるだけでなく、塗料剥離剤として広く使用されていることがわかります。おそらくこれが、今でもデカフェのコーヒーや紅茶が議論の的となっている理由でしょう。

 ジクロロメタンは直接吸入した場合、咳・喘鳴・息切れ・頭痛・吐き気・嘔吐などの症状を引き起こすことが報告されています。しかし、デカフェの紅茶やコーヒーに含まれるジクロロメタンは微量であるため、英国では「健康に悪影響を与えることはない」と言われているのが現状です。

 「化学溶剤でカフェインを除去されたコーヒーを飲んでも、残留物について心配する必要はありません」と、カーボンさんも話しています。「工程後に残る溶剤のレベルは非常に低く、ヨーロッパの規制では安全とみなされるレベルを下回っていますので」とのこと。

 さらにカーボンさんによると、化学物質を使ったデカフェの環境への影響も、大きな害は出ていないので心配はいらないそうです。しかしながら、「小さな影響なら放っておいていいのか」といった思いも浮かんではきます…。

 「大規模なコーヒーの焙煎が行われるようになってからは、デカフェのコーヒーをつくるための溶剤を再利用する方法が開発されました。そのため、このサイクルを何百回繰り返しても、大気汚染を引き起こすことはないと考えられているのです」と、少々安心できる意見を語ってくれたカーボンさん。

デカフェのコーヒーや紅茶による健康効果

 では本題です。デカフェのコーヒーと紅茶は、身体にいいのでしょうか?

 あまり良い評判を聞かないコーヒーですが、実はクロロゲン酸などのポリフェノールが豊富に含まれているのです。その量はカフェインよりも多く、コーヒーの褐色や苦味、香りのもととなっています。コーヒーの飲用ががんや糖尿病、動脈硬化などの予防に有効であるという研究成果が相次いで報告されているのは確かなこと。その効果にクロロゲン酸などのポリフェノールが持つ抗酸化作用が寄与しているのではないかと、注目されています。

 ポリフェノールは植物がつくり出す抗酸化物質で、分子内に複数のフェノール性-OH基を持っています。赤ワインではアントシアニン、お茶ではカテキン、ココアではカカオポリフェノールなど、すべてがポリフェノールの仲間になります。その他、野菜や果物にも多く含まれていて、その数は5000種類以上あると言われています。そんなわけでコーヒーの生豆には、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が多く含まれていることが報告されています。 

 2017年にAmerican College of Physicians(米国内科学会)から報告された、およそ52万1000人を対象に行ったある研究によれば、コーヒーを飲む男性と女性の両方がコーヒーを飲まない人よりも死亡リスクが低いことが報告されています。また、2018年7月にNational Cancer Institute(アメリカ国立がん研究所)が公開した研究には、健康へと導く身体の“さび”を防ぐことに有効な活性酸素が含まれていることが確認されています。 

 そしてコーヒー1杯(約140cc)には、約280mgのポリフェノールが含まれと言われ、これは赤ワインと同程度、お茶の約2倍にあたるそうです。現在コーヒーを飲むと、がんや糖尿病、動脈硬化などの予防に有効であるという研究成果が相次いで報告されている状況です。

 では、デカフェでも同じ効果があるのでしょうか?

 「カフェイン除去の工程は、豆や茶葉に含まれるカフェインレベルを変えるだけなので、その他は残っていると考えていいでしょう」と話すカーボンさん。「身体の“さび”を防ぐ 活性酸素は身体から有害なフリーラジカルを除去する素晴らしいものです。また、デカフェコーヒーや紅茶には、重要なミネラルも含まれています。ある研究では1杯のデカフェコーヒーで、マグネシウムの1日の推奨摂取量の2.4%、カリウムの4.8%、ナイアシン(ビタミンB3)の2.5%を摂取できることが報告されています」とも言います。

天然のカフェインレスという選択肢

 「温かい飲み物が欲しい」というのなら、その選択肢は化学物質を使ったデカフェか化学物質を使わないデカフェだけではありません。もともとカフェインが入っていない飲み物を、選んでみてはいかがですか。

 「植物の葉や果物をベースにしているハーブティーは、デカフェやカフェイン入りの飲料に代わる、天然のカフェインレスの飲み物です」とカーボンさん。「おすすめとしては、ペパーミント(研究によると、過敏性腸症候群の症状の緩和に効果があることが報告されています)、カモミールやレベンダー(どちらも、心を落ち着かせる効果が期待できます)、エキナセア茶(いくつかの研究で、風邪やインフルエンザの症状の緩和に効果があることが報告されています)などが挙げられます」とのこと。

Source / NETDOCTOR
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。