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BMIとは? 計算式

世界的に健康への意識が高まる以前は、「自身の身体の状態を知るには体重計に乗るのが一番だ」と一般的に言われていました。ですが、「体重」と「身長」から算出される肥満度を表す体格指数である「BMI」が理解されるようになると、「体重」は自身の体型を客観視するためのひとつの目安にすぎない…という位置づけになったと言えるでしょう。

この「BMI(Body Mass Index)」とは「ボディマス指数」とも呼ばれ、自身の身長に対して体重が適正であるかどうかを算出するための体格指数のことを指します。この指数は、ベルギーの数学者で統計学者および社会学者であるアドルフ・ケトレー博士によって1835年に開発されたもので、その後ドイツの衛生学者イグナーツ・カウプ博士 によって小児の発育指数として利用されるようになり広く普及します。

さらに1972年には、ミネソタ大学生理学教授を務めたアンセル・キース博士らによる共同研究の結果とともに、「BMIは肥満に関するさまざまな指標の中で、最も優れたものである」と発表します。やがて1985年、The National Institutes of Healthアメリカ国立衛生研究所はこの指数を踏まえた上で、肥満を定義するようになったのです。

それはつまり、体重だけの数値で判断するなら非常に背が高い人や筋肉質の人は、“太りすぎ”と分類される可能性は大幅に高くなるのは想像できるはずです…。

BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
適正体重 =(身長m)2 ×22

しかし、ドウェイン“ザ・ロック”ジョンソンのようなタイプの体格を有するような人物を思い浮かべてください。彼の場合はBMIの数値から判断したほうが、医学的見地からの“肥満”と判断されがちの体格と言えます。ちなみにかつて彼は、身長/体重を196cm/118kgと公表していました。その数値でBMI値を計算すると…答えは30.71です。つまりWHO(世界保健機関)の基準では、「肥満1度」の判定になるというわけです。

これは「肥満」というの基準の問題で、 肥満とは「脂肪組織が過剰に蓄積した状態である」と定義されているから。 BMIは身長と体重から計算したものなので、例えばスポーツ選手のように筋肉モリモリの人も、見かけ上は高い値となります。ですが、このような場合は肥満とは判定すべきではないでしょう。

最終的に肥満を正確に判定するためには、体脂肪量を測定し、「体脂肪率(%)」という体重に占める体脂肪の割合を求める必要があるということになるのです。

体脂肪率:内臓脂肪、皮下脂肪の違いは?

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ではここで改めて、「体脂肪率」とは何を解説していきましょう。

この数値は人間の体重のうち、「体脂肪(身体に貯えられた脂肪)の重さが占める割合のことを指します。さらに体脂肪とは、身体のどこの部位についているかによって主に「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けられます。

では、「内臓脂肪」とは何でしょうか? 文字どおり、内臓の周りについている脂肪を「内臓脂肪」と言います。内臓脂肪は血中に脂肪を増やし、脂質異常症を生じさせる可能性があったたり、インスリンの働きを邪魔して糖尿病の原因となるなど…生活習慣病と関係が深いと言われています。

「皮下脂肪」に関しては、皮膚の下に蓄積される脂肪を指します。これは全身につきますが、特にお尻や太ももなど下半身に集中してつくため、皮下脂肪が多い肥満の体型を「洋ナシ型肥満」と呼ばれることもあります。文字どおり皮膚のすぐ下に蓄積されやすく、見た目にも脂肪がついていることがわかりやすくなっています。

また少しずつ蓄積され、体温の維持や内臓や骨を保護する働きがあるため、落としにくいという特徴があります。そして男性より、女性に蓄積しやすい傾向を持っています。

体脂肪があるメリットについて

体脂肪と聞くと、われわれは何となく「筋トレして落とさないと…」「健康診断までに痩(や)せたい」などと…安易に身体に不必要なものとしてイメージするかもしれません。ですが、「極端に多すぎるのと同様に極端に少なすぎるのも、健康被害のリスクが上がる可能性がある」と言われています。つまりは、ある程度の「体脂肪(脂肪細胞)」は身体にとって必要不可欠なものでもあるということです。

なぜなら脂肪細胞には、上述のように体温を保つ役割もあれば、外部からの衝撃から内臓を守る役目もあるワケです。また、身体の機能を正常に保つためのエネルギー源としてのストックでもあり、必要なホルモンなどをつくり出しているとも言われています。さらに女性の身体にとっては、「体脂肪(白色脂肪細胞)は正常月経の維持、妊娠・出産などに不可欠だ」とされているのです。

京都大学大学院農学研究科の河田照雄(かわだ てるお)教授は著書で、「白色脂肪細胞は、女性ホルモンであるエストロゲンの前駆体(働きが抑えられている状態)をエストロゲンに変換しています。脂肪を取り込んでいない白色脂肪細胞はこの変換機能を果たさないため、女性が痩せ過ぎると女性ホルモンの分泌が減り、生理不順などさまざまな問題を引き起こします。特に、思春期の女性の痩せ過ぎは問題です(※『脂肪細胞の正体』参照)」と、体脂肪(白色脂肪細胞)の重要性について説明しています。

BMI、日本人男性 / 女性はどれくらいで肥満と判断される?

ここで再び、BMIにフォーカスしましょう。その計算式は世界共通ですが、肥満の判定基準は国によって異なります。

一般的な人にとっては、「体脂肪」と「除脂肪体重」の比率はより信頼性の高い健康指標と言えます。全てにあてはまるわけではありませんが、BMIが「18.5〜25未満」になる体重であれば、日本肥満学会の判定基準としては標準体重になります。この判定は、最も病気になりにくい状態であるとされています。

  • BMI18.5未満が「低体重」
  • BMI18.5以上25未満が「普通体重」
  • BMI25以上が「肥満」で、肥満はその度合いによってさらに「肥満1」~「肥満4」に分類されます。

厚生労働省が発信する「健康情報サイト」のよれば、日本人の成人で「BMIが25を超える」と肥満と定義づけられており、「BMI35以上で高度肥満」と判定されます。

日本人の肥満判定と国際基準(WHO)が違うのはなぜ?

WHOの国際基準になると、BMI30以上からが肥満であり、25以上30未満は過体重(overweight)とされています。日本人の肥満判定が、WHO基準に比べて1段階低いBMIから肥満と定義している主な理由は、日本では欧米諸国ほどの顕著な肥満者は少ない傾向にあるからということ。そして日本人の場合は、BMI25以上でも肥満に関連する疾患(肥満がもたらす健康被害)が多いから…とされています。

また、男性と女性では体脂肪のつき方が違うため、判定基準も異なります。それでは、一般的な体脂肪率による肥満判定の目安も見ていきましょう。

体脂肪率は何%で肥満と判断される? 男女別:体脂肪率による肥満の目安

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Viktorcvetkovic//Getty Images
体脂肪率(%)=(体脂肪の重さkg ÷ 体重kg)× 100

体脂肪率(%)の測り方には、さまざまな方法があります。われわれが日常で行うには、体組成計で簡単に測るといいでしょう。肥満と判断される体脂肪率は、以下のようになります。

男性の場合|肥満の目安

  • 軽度肥満:体脂肪率20%以上
  • 中等度肥満:体脂肪率25%以上
  • 重度肥満:体脂肪率30%以上

女性(15歳以上)の場合|肥満の目安

  • 軽度肥満:体脂肪率30%以上
  • 中等度肥満:体脂肪率35%以上
  • 重度肥満:体脂肪率40%以上

「どれだけ痩せられるかは、遺伝子にも関係しています」、そう話すのは、理学療法士でトランスフォーメーションコーチ(=思考・感情・反応・行動を意識的にコントロールし精神的向上をもたらす自己変革・他者変革の手法をとるコーチ)でもあるマーク・ロスです。

彼は、「健康的な体脂肪率は、人によって異なるものです。ある人は非常に低い割合でも健康でいられるかもしれませんが、ある人にとってはそうではない場合もあります」、と説明しています。

肥満によって引き起こされる可能性がある11の健康障害

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Ratnakorn Piyasirisorost//Getty Images

肥満症診療ガイドライン2016」 によると、肥満によって引き起こされる可能性のある健康障害を次の11疾患を上げています。

  1. 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症、痛風
  5. 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
  6. 脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作(TIA)
  7. 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患、NAFLD)
  8. 月経異常、不妊
  9. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  10. 運動器疾患:変形性関節症(膝、股関節)、変形性脊椎症、手指の変形性関節症
  11. 肥満関連腎臓病

厚生労働省「e-ヘルスネット」によると、同じBMIでもどこに脂肪がついているかによって、健康への危険性は大きく異なってくることも留意されています。

例えば、筋肉の内側の腹腔内(=肝臓、腎臓、脾臓、大腸、小腸、胆嚢、胃、膀胱などの臓器)に脂肪が多く蓄積するという…「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」の人は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などを発症する確率が高くなることを伝えています。

一方、腰まわりや太ももなど下半身を中心に皮下脂肪が多く溜まっていても、内臓脂肪は少ないという…「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)」の人は、こうした症状はあまりみられないことを伝えています。

体脂肪率ひと桁台は痩せすぎの危険性

「極めて引き締まった見た目の人の体脂肪率は、5%~15%ですが(理想は体脂肪率10%~18%台の身体に維持)、体脂肪率がひと桁の場合は『痩せすぎのステージ:英語でステージリーン(stage lean)』と見なされ、簡単には維持していけるものではありません」と、ロスは注意をうながしています。

ボディビルダーや、その見た目を追求する必要のある人…自身の適正な体脂肪率レベルを下回ろうと目指すことは、厳しい精神力が必要となるでしょう。「体脂肪率ひと桁は、365日24時間の努力と完全な集中力がなければ達成できるものではありません」と、ロスはつけ加えています。

つまり、これを目指すには好きな食べ物や仕事帰りの一杯も、「やめる」といった表現どころか「厳禁」の域に達するわけですから…。

まとめ

脂肪の蓄積は、身体が機能するためには一定の量は必要とします。「脂肪がなければ免疫力は低下し、テストステロンレベルが下がり、代謝も悪くなる可能性があります。体脂肪率が5%を下回ると神経系へのダメージも受ける傾向にあり、骨ももろくなるリスクも高まる研究もありまます」と、ロスは警鐘を鳴らしています。

くっきりと割れた腹筋を手にする理想の体型が欲しいなら、体脂肪率15 %を目安にがんばりましょう。研究やトレーナーによってその数値は多少誤差はありますが、取りまとめると約10%~18%くらいに維持することが、健康と美しさのバランスをとるための最善な方法と言えるようです。それには食事の栄養素のバランス、そしてその分量を細心の注意を払いながら…好きなものを食べて飲んでください。このように人生を楽しむことこそ、本来大切なことだと思いますので…。

Source / Men's Health UK
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。