今シーズンのワールドチャンピオンの座は“失ってしまった”(接戦の末、ドライバーズランキング2位となった)ルイス・ハミルトン(メルセデス)ですが、トレーニングは未だフルスロットルで継続中です。

そうです、2021年、ハミルトンは8度目のF1ワールドチャンピオンの座は逃してしまいました。ですが、最も劇的な状況で「敗戦」してしまった最中、彼は真の人柄を証明しました。そうです、“彼こそが真の、そして永遠のチャンピオン”と言えるでしょう。

ルイス・ハミルトン、
2021年シーズンF1の結果
最終戦アブダビGP
を振り返る

ご存じない人のために説明すると、F1グランプリの最終レースが行われたアブダビ(アラブ首長国連邦)で残り周回数が5周となった時点では、メルセデスのF1ドライバーであるハミルトンは優位にレースを運んでいました。

彼のメインライバルである、レッドブルのマックス・フェルスタッペンにとって、彼を追い抜くには奇跡が必要なくらいの状況だったのです。が、なかなかそのチャンスが訪れることはありませんでした。しかし、レースディレクターである「スチュワード」の助けがやってきたのです。

それは残り数周のところで、クラッシュが発生しセーフティカーが出動。その際に、「スチュワード」が周回遅れのマシンの追い抜きを認め、最終周1周のみのスプリントレースを実現させるという判断により、フェルスタッペンはそのレースのチャンピオンとなり、ハミルトンは来シーズンにシーズン最多優勝記録を再び目指すこととなったわけです

この判断に対し、怒りの声を挙げたとしても許される状況でもあったのに。ハミルトンは、真のチャンピオンとしての自制心と寛容さを見せたてくれました。インタビューを受けた彼は、「まず初めに、マックスと彼のチームへおめでとうございます」と相手チームへの気遣いを見せてから、「僕のチームも、工場でつくしてくれたみんなも、関わったすべての方が、今シーズン素晴らしい仕事をしたと思います。年間通して、一生懸命頑張りました」とコメントを贈りました。

さらに続けて、「最も困難なシーズンでした。私はこのチームをとても誇りに思いますし、一緒に挑戦することができたことに感謝しています。われわれはすべてを出しつくし、決して諦めませんでした。これこそが最も大事なことです。この2カ月間、特に最後はマシンのフィーリングが最高でした。でも正直に言うと、われわれはまだコロナ禍の中にあります。みんなが安全に過ごせて、家族と一緒に良いクリスマスを過ごせることを今は願っています。来年2022年のことは、そのあとで…」と、話したのです。

ルイス・ハミルトン
独占インタビュー

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Men's Health US

来シーズン、どのような展開となるかは今の段階ではわかりません。ですが、ハミルトンがどのように準備をしていくかはわかっています。『メンズヘルル』US版では、彼にインタビューを行うことができました。

7度のF1ワールドチャンピオンを達成しているハミルトンは、重要な食生活の変化、つまり植物由来の食生活に切り替えたことで、“フィットネスレベルの著しい改善”につながり、10年前よりも“さらに機動的で良い状態”になったことを含めて、自身のF1への身体的アプローチについて明らかにしてくれました。

植物由来の食生活に切り替えたF1ドライバー、肉体的メリットとは?

Q.肉体的に最高を維持し続けるために工夫していることはありますか?

ルイス・ハミルトン:ウェイトリフティングは好きなのですが、やり過ぎないように気をつけなければなりませんね。F1ドライバーは、体重には気をつけなければなりませんし。筋肉が増えれば、体重も増えてしまいますので。

また、マシンの重心を低くする必要があるため、肩や腕に筋肉がつきすぎると不利にもなります。F1ドライバーとして重要なことは、心肺機能を高めることです。2時間のレース中に、平均心拍数は160〜170bpmになります。予選では、190bpmまで上がることもあります。なので、私はたくさん走っています。すべてのトレーニングに、「スプリント(全力疾走)」を組み入れています。

Q.約15年前にF1を始めてから、自身のトレーニングはどのように進化していますか?

ルイス・ハミルトン:若い頃はたくさんエネルギーがあったので、何でもできると思っていました。戦略もありませんでしたし、ストレッチもしていませんでした。

ただマシンに乗り込み、勝利のために走るだけだったのです。けれどここ数年は、ボクシングやムエタイなど、いろいろな種目を試してきました。最近ではピラティスをよくやっていて、体幹の部分、つまり、筋肉の下にある筋肉を鍛えることに意識してやっています。

25歳の頃よりも機動性も高く
体調も優れている

Q,栄養面ではどのような工夫をされていますか?

ルイス・ハミルトン:3年前に植物由来の食事に切り替えました。後悔しているのは、「もっと前から始めておけば良かったな」ということだけです。

ファラフェル、アボカド、ビーツ、新鮮なフルーツやドライフルーツなど、以前は食べようと思わなかったものが、今では私の味覚に合うようになって大好きになりました。食生活を切り替えてから体力の大幅な改善も気づき、そのことでモチベーションも上がっています。

Q.つまり、植物由来の食事をすることが、あなたのピークを維持することに役立っているということですか?

ルイス・ハミルトン:食べ物へのアプローチを変える前からすでに、トップレベルをキープすることができました。ですが、以前よりもそれを維持することに対して苦労することも増え、エネルギーも安定していませんでした。エネルギーを強く感じる日もあれば、消耗してしまう日もあったのです。

ですが、植物由来の食事にしてからは、そういった気分の浮き沈みはかなり少なくなりました。それから睡眠と健康全般にも、プラスの効果がもたらされていることにも気づきました。その効果は続いていて、正直にこれまでで最も調子が良いですね。

(2021年1月7日で)36歳になったので、理論的に言えば以前よりも体力が落ちているはずです。が、25歳の頃よりも機動性も高く、体調も優れています。

Q.F1と言えばハイオク、ハイアドレナリンのイメージで、常に緊張を維持していなければならないと思いますが、「休息」と「充電」はどのようにしていますか?

ルイス・ハミルトン:そのときは、完全にF1から離れることが私のルーティンの基本です。レース後にリラックスすることがとても重要で、そうすることでクリアな思いで次のレースに臨むことができるのです。

そんなときは、友人や家族と過ごすことが一番で大好きです。彼らと一緒にいると、リラックスできてエネルギーが回復しますね。でも私は、アドレナリンなしには生きられませんね。プライベートな時間でも、心拍数を上げるスキー、スカイダイビング、サーフィン、トレーニングなどが好きなんです。

「労働者階級出身で、黒人として初のF1チャンピオンでした。道を切り開いたことに誇りを持っています」

Q.これまでの自身のキャリアの中で、最も誇りに思っていることは何ですか?

ルイス・ハミルトン:私は労働者階級出身で、黒人として初のF1チャンピオンでした。これからの人たちのために、道を切り開いたことを誇りに思っています。

私の好きな言葉の1つに、『You can’t be what you don’t see.あなたは、あなたが見えないものになることはできない』というのがあります。例えそれが子どもであっても、表彰台に立つ私を観たなら、誰もがそれを自分の夢を追いかける刺激にできるはずです。そのように役だったことを実感できたときこそ、私は自分の仕事に満足できるのでしょう。ダイバーシティ(多様性)に関しては、なおもF1が直視しなければならない問題です。そこで私は、他の人たちに刺激を与えるだけでなく、さまざまなコミュニティの人たちにより多くのチャンスを与えるために協力していくことでこのスポーツの進歩を支援し、自分の役割を全うしていきたいと思っています。

Source / Men’s Health US
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。