記事のポイント

  • アメリカ食品医薬品局(FDA)が老化を「疾病(しっぺい)」に分類すれば、製薬会社は「不老」に向けた創薬も可能に
  • 科学者は、老化を予防する役割が期待できる細胞内のタンパク質を特定済み
  • 世界保健機関(WHO)は、老化を「疾病」とみなすトレンドの高まりを支持

現在、アメリカ食品医薬品局(以下、FDA)は「老化は自然なことである」との立場を取っています。しかしながらここで、FDAがその認識を変えて老化を「疾病(疾患)」に分類となれば、老化を逆行させるために科学者はこれまでとは全く異なるアプローチをとることができるようになります。つまり、健康な状態で日常生活を問題なく送られる期間を延ばし、「不老長寿」が実現する可能性も高まることでしょう。

アメリカの政治専門紙「The Hill」でも取り上げられているように、アメリカにおける現行のルールでは、「製薬会社は老化の進行を遅らせたり、逆行させたりすることを目的とした薬を製造することはできない」ことになっています。製造できるのは、特定の疾病に対する薬のみということになっているのです。

よって、これまでは「老化の根本原因ではなく、老化による症状を緩和すること」に目を向けられてきました。ですが、FDAの規則で老化が「疾病」という分類に変更されれば、「老化の原因となる、細胞の変性を遅らせる」というコンセプトで新たに研究に取り組めるようになる可能性があります。

研究室
Solskin//Getty Images

一方で科学者たちは長い間、「私たちの身体がどのように老い、衰え、死に至るのか?」を究明する研究に力を注ぎ続けてきました。その中で、「細胞内のタンパク質には、老化を遅らせたり完全に止めたりする働きある」と考えられています。これについては、研究が進めば進むほどさらに解明されていくでしょう。

アメリカのテックメディア「WIRED」が報じているように、現在では「老化細胞を除去する加齢治療薬の製造は可能」と研究者が考える段階にまで来ているとのこと。その背景には、2018年にアメリカ国立衛生研究所(NIH) に掲載された論文で「老化細胞を除去することで、マウスの寿命および健康寿命が延びる」という結果が発表された経緯があります。そこでは、ガンの兆候の減少や活動の活発化、毛の状態改善がマウスにみられたことも触れています。

マウス
Adam Gault//Getty Images

「老化を逆行させ、死を克服し、人類が永遠に生きられるようにする」という考え方は、世界全体の生活の質を大きく向上させるだけでなく、ビジネスも大きく動かすことでしょう。

「WIRED」によれば、「ジェフ・ベゾスのような億万長者やアメリカを代表する医療機関 メイヨー・クリニックといった組織の支援を受け、すでに20社以上が「ゾンビ細胞」とも呼ばれるこうした老化細胞を除去する研究に取り組んでいる」とのことです。

世界保健機関(WHO)も、2019年に改訂版国際疾病分類「ICD11」の中に「老化(エイジング)関連」という項目を加えているように、「疾病」に分類するという面では少なくとも支持していると言っていいでしょう。そしてそれに熱心な研究者たちは、細胞内のタンパク質の研究を進めることに対して期待を示しています。このこと自体が、FDAの今後の動向に影響を与えることも大いに期待できるでしょう。

そうしてひとたび規制のハードルがクリアされれば、科学界の究極の目標である「不老長寿」ないしは「不老不死」に向けた新たな道筋は具体的に見えてくるに違いありません。それも、ChatGPTを代表に昨今のAI搭載アプリが音を立てながら進化しているかのように…まさに、あっという間の開発も期待できるかもしれません。

Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です。