記事のポイント

  • 何十年もの間、古生物学者たちは「非鳥類型恐竜を最終的に絶滅に至らしめたのは、火山活動なのか小惑星の衝突なのか」ということについて議論してきました。
  • 議論に新たな考えを加えるためダートマス大学の科学者たちは、相互接続されたプロセッサで、人間のバイアスを排除した独自の結論を出すことに。
  • その結果、「インドのデカン・トラップの火山活動が恐竜の絶滅に影響した可能性が最も高い」と結論づけられました。ですが、全ての古生物学者が同意しているわけではありません。

コンピューターが
恐竜の絶滅に影響したのは
火山活動と結論づけたが…

「約6600万年前、全ての恐竜(鳥類以外の)が地球上で絶滅した」--何十年もの間、科学者たちは「インド(中西部にあるデカン高原に分布する地球上で最も広大な火成活動の痕跡とされる)大規模な火成岩からなる丘『デカン・トラップ』をつくり上げた火山活動によって、“K-Pg境界(地質年代区分の用語で、約6550万年前の中生代白亜紀と新生代古第三紀の境目とされる)”として知られる、地球における5回目の大量絶滅の引き金になった」と信じてきました。

ですが1970年代後半のこと、石油探鉱者たちはメキシコ湾とカリブ海の間に突き出たユカタン半島で小惑星が衝突した痕跡と見られる巨大なクレーターを発見します。そこで科学者たちの中には、「恐竜を絶滅させた犯人を見つけた」と歓喜した者も少なくありませんでした。

その一方で、クレーターを発見してからこの数十年間、「恐竜を本当に殺したのは何か?」について古生物学者たちの間で議論も交わされてきました。「宇宙からタイミング悪く飛来した小惑星が、致命的な一撃を与えたのか?」、それとも「何十万年にもわたる火山活動によって大気中に10兆4000億トンもの二酸化炭素が放出され、地球がこれまで何度もそうであったかもしれないようにゆっくりと窒息死していったのか?」ということを…。

そこでダートマス大学の科学者たちは、この論争に決着をつけるために…あるいは、少なくとも公平な視点を加えるために、相互接続されたプロセッサを使って地質学データと気候データを解析しました。このデータは、深海掘削で得られた海洋コア(海底堆積物の柱状サンプル)から抽出した微生物を解析して得たものということ。

そうして化石記録を逆解析し、この長年の絶滅論争に人間の手を加えることなく結論を導き出しました。そこでは、(人間を介さず)コンピューターが自ら大量のデータを学習し、分析や予測といったタスクを遂行するためのアルゴリズムコンピューターによって、K-Pg境界の前後100万年にわたる30万通りのシミュレーションを実施されたのです。それは現存する化石の記録に残っている結果を再現できるまで、高度に改良されたもの。そして2023年9月下旬に、そこで算出された結果が学術誌『サイエンス』のウェブサイトで公開されました。

その結論は? というと、「火山活動だ」ということになりました。

ダートマス大学の地球科学助教授であり、この研究の共著者であるブレンヒン・ケラー氏は、プレスリリースで次のように述べています。

「われわれのモデルは、地質学の記録に見られるような気候や炭素循環の乱れを引き起こすだけの二酸化炭素と二酸化硫黄の量を決定するために、人為的なバイアスをかけずに独自にデータを処理しました。そしてこれらの量は、デカン・トラップから放出されたであろう量と一致することがわかったのです」

よってこの研究は、「小惑星の衝突がなかったとしても、恐竜はすでに絶滅していた可能性が高い」と主張。ですが、小惑星によってもたらされたとされる1億メガトンの爆発に関しては、『絶滅を後押しする要因となった』とも解釈できます。つまりこの研究結果は、「小惑星の最初の衝突によって大量の硫黄が大気中に放出され、深海の動植物が死滅し、地球の気温が低下した」という可能性も示唆しているとも解釈できます。

ですが、全ての科学者がこのコンピューターによる結論に同意しているわけではありません。「Sience News」の取材に応じたある(過去の気候を研究する)古気候学者は、「小惑星の影響は小さかったかもしれませんが、特にガスの放出に関しては、そのような急激な変化が地球に壊滅的な影響を与えた可能性はあります」と語っています。

つまり、コンピューターはこの問題について結論を出したかもしれませんが、K-Pg境界の大論争はいまだ続いていると言えるのです。

source / POPULAR MECHANICS
Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です