記事のポイント

  • スウェーデンで行われた新しい研究では、100歳以上の人々の血液を調査し、「どのようなバイオマーカーが長寿の可能性を示すか?」を明らかにしました。
  • バイオマーカー群の違いが目され、主に「糖のレベルが低いこと」、「肝臓と腎臓が健康であること」と長寿が関連していると考えられています。
  • 研究者たちは“100歳以上の人々は全体的に、バイオマーカーのプロファイルが均質”ということを発見しました。

バイオマーカーが示す
長寿の秘訣

「バイオマーカー」は、“嘘をつかない”と考えられてきました。このバイオマーカーとは、ある疾患の有無、病状の変化や治療の効果の指標となる項目・生体内の物質を指します。 バイオマーカーとして使用されるものは主に「血圧」、「心拍数」や「心電図」、そして「血液中に測定されるタンパク質」などの物質といった生体由来のデータとなります。そしてこのたび私たちは、このバイオマーカーから“長寿への手がかり”となるかもしれない科学知識をほんの少し得られたようです。

スウェーデンの研究チームは、64歳以上の4万4000人(100歳以上の人を少なくとも約1200人を含む)の血液、特に血液中のバイオマーカーを調査しました。老化に関連する科学ジャーナル『GeroScience』誌に掲載されたこの研究*1は、長寿者と短命者を比較できるようにするため、これまでで最大のデータセットを調査したということです。

そこで彼らは、ある違いを発見しました。

この研究の著者たちは、「死亡する約10年以上前の、100歳以上の人々と100歳未満の人々のバイオマーカー値の差は、これらのバイオマーカー値に反映される遺伝的因子および/または恐らく修正可能な生活習慣因子が、卓越した長寿に重要な役割を果たしている可能性を示唆している」としています。

カロリンスカ研究所のカリン・モディグ准教授(疫学)は、研究チームの結論についてニュースメディア『The Conversation』に寄稿*2しました。

彼女は研究で、「100歳の誕生日を迎えている人は、60代以降、グルコース、クレアチニン、尿酸の値が低くなる傾向がある」という重要な発見をしたということ。そしてユニークなことに、「100歳以上の人々は全体的に、極端に高い値も低い値もなく、むしろバイオマーカーのプロファイルは均質だった」ということなのです。

要するに「糖分を制限し、肝臓と腎臓に気をつけること」が肝要と言えるのです。年をとればとるほど、このアドバイスは重要になってくるかもしれません。著者らは次のようにも述べています。

総コレステロールと鉄の値が高く、グルコース、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、LDH(乳酸脱水素酵素)、TIBC(総鉄結合能)の値が低いことが、100歳を迎えることと関連していました。

モディグ氏によれば、研究チームはバイオマーカー値の原因である生活習慣要因や遺伝子についての結論は導いていませんが、“栄養やアルコール摂取などの要因が一役買っていると考えるのが妥当”という見解を出しています。よって彼女は、「腎臓と肝臓の健康状態、グルコースと尿酸値に注意するように」とすすめます。

この調査には、64歳から99歳の間に健康診断を受けた4万4000人のスウェーデン人のデータが含まれています。最長35年間の追跡調査がなされ、そのうち1224人が100歳を迎えました。特筆すべきは、100歳以上の人々の85%が女性であったことです。

研究チームは炎症、代謝、肝機能、腎機能、栄養不良や貧血に関連する12の血液バイオマーカーを調査。これらは、これまでの研究でいずれも老化や死亡率と関連していました。「この12のうち、10が100歳になる可能性と関係がある」と、研究チームは考えています。

全体的に100歳の誕生日を迎えた人は、「60代以降のグルコース、クレアチニン、尿酸の値が低い傾向にあった」そということ。モディグ氏は、「100歳以上の人々もそうでない人も、診療ガイドラインで正常とされる範囲外の値を示した」と記していますが、それは恐らくこれらのガイドラインがより若く、より健康な人々を対象としているからでしょう。彼女は次のようにも記しています。

私たちが発見した違いが全体から見て、かなり小さいものであったとしても、代謝、栄養、そして類まれな長寿との間には関連性がある可能性を示唆しています。

「例外的な年齢に達するには、どこかで偶然が関与しているだろう」と認めてもいますが、バイオマーカーに違いが観察されたことから、遺伝子やライフスタイルも重要である可能性が確認できたのではないでしょうか。

バイオマーカーの今後の研究に期待が高まります。皆さんもぜひ注目を。

【脚注】

*1:Blood biomarker profiles and exceptional longevity: comparison of centenarians and non-centenarians in a 35-year follow-up of the Swedish AMORIS cohort

*2:Centenarian blood tests give hints of the secrets to longevity

Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Popular Mechanics