2018.09.10

連載:ココロの行脚 with 松山大耕

ところ変われば

ダボス会議への出席や、ローマ教皇への謁見、ダライ・ラマ14世と会談するなど、世界各国で宗教の垣根を越えて活躍する退蔵院の松山さん。地元の京都では外国人に禅体験を紹介したり、京都でアジア初の宗教間交流駅伝を主宰するなどその活動も幅広く面白い。そんな松山さんから、今を生きる秘訣をお届けします。

ところ変われば

 
Episode 10

 先日、初めてイスラエルを訪れた。中東に来るのはひさびさだったが、中東に来るときにはいつも気をつけていることがある。それは、なるべく法衣や作務衣で出歩かない、ということだ。なぜかと言うと、テロの対象になるとか、そういうセキュリティ上の理由ではない。ただ単にめんどくさいからだ。
 
 以前、モロッコに行ったとき。作務衣で空港のセキュリティを通ろうとしたら、係りのお兄さんにいきなりファイティングポーズをとられた。
 
 「お前はkarateマスターだろ。俺を倒さない限り、ここは通さない」。
 
 ひたすらめんどくさい。空手はおろか、体育の授業で柔道の受け身を習ったことしかない。どうしようか迷ったが、時間もなかったので「日本では本当に強い奴は素人と闘ってはいけないことになっている」そう言うと、彼は深々と礼をして、ろくに鞄の中身も見ずに通してくれた。
 
 チュニジアでは、俺に合気道を教えてくれ、と街中で突然懇願された。イスラエルに来てからも、テルアビブのホテルではドアを開けた瞬間に、廊下で会ったおじさんから、「お前は太極拳をやってるのか」と話かけられた。
 
 ショッピングモールで買い物の途中、「あなたはブディストか」「禅が大好きなんだ。いつも禅の音楽を聴いている」などなど、ややこしい質問攻めにあうので買い物をしている暇もなく早々に引き上げてきた。数々の経験から学んだことは、中東で落ち着いて見聞を広めたいなら、服装には気をつけたほうがよい、ということだ。

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《Profile》

 
    
松山大耕さん(妙心寺退蔵院・副住職)
…1978年京都市生まれ。2003年東京大学大学院 農学生命科学研究科修了。政府観光庁Visit Japan大使、京都観光おもてなし大使を兼任。2016年『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」に選出。前ローマ教皇やダライ・ラマ14世との会談、ダボス会議に出席など世界各国で宗教の垣根を超えて活動中。

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