老舗の「壹番館洋服店」の社長であり、仕立て屋として手を動かしながら、銀座人として幅広い人脈を持ち、この土地ならではの丁寧な商いをする渡辺新さん。男はこんな風に銀座のお店は楽しむべき! 怖くない、銀座の裏口案内を2週間に1度の連載でお届けします。
余分な飾りがない。でも、必要なものはすべて満たしている。杉山 衛さんは寿司幸4代目。130年にもなる名店の店主だ。杉山さんの人柄に惚れ、永年のファンで常にお店はにぎわっている。
銀座のすべてのお店の課題は「継続」だ。いかにして商いを続けていくか? 明確な答えなど誰ももっていない。皆、手探りで毎日闘っている。常に、お客様の期待に応えなくてはならない。しかし人間は、贅沢で飽きっぽい。どこかで、期待を裏切るような新鮮な驚きを求めている。そして寿司幸本店は、130年進化し続けている。
老舗は、絶えざる挑戦なしには続かない。4代目杉山さんの挑戦はワインだ。今では珍しくないお寿司とワインの組み合わせ。この取り組みを本格的に始めたのが杉山さんだ。ブルゴーニュ・ワインに対しての深い知識と愛情は別格。そして、新たなる挑戦は今日も続く。
目下の挑戦は、海外からのお客様。夜九時以降は、海外からのゲストの時間だ。外国人は遅い夕食でも気にしない。日本人はワインを飲み、外国人は日本酒を飲む。不思議な光景だ。衛さんは海外にも招かれて、頻繁に握りに行く。
寿司幸の新たな挑戦を支えるのが、徹底した基礎。見えない所こそ、手を抜かない。清掃も徹底している。店の中は勿論のこと。店の前の重いコンクリート・ブロックも毎日裏返して、デッキブラシで水洗い。ここまでの清掃をやる店は見たことがない。だから、接客も清々しく、気持ち良い。
本物を味わいに、銀座に馴染みの店をつくられてはいかがでしょうか。
寿司幸本店
東京都中央区銀座6丁目3−8
TEL 03・3571・1968
《Profile》
渡辺 新さん
…1966年生まれ。「壹番館洋服店」代表取締役社長。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、渡欧。イタリアのドムスアカデミーで洋服作りを学ぶ。著書に『銀座・資本論 21世紀の幸福な「商売」とはなにか?』(講談社+α新書)。現在、2018年公開予定の銀座の映画作りのサポートにも奔走している。