愛される理由に満ちた
マツダ「ロードスター」

 1989年シカゴ・モータショーでマツダ「ロードスター」がアメリカで発表された当時、この小さなオープンカーがその後の世の中に、どれほど大きなインパクトを及ぼすことになるのか、予想できた方などいなかったことでしょう。

 発売から30年以上が経ち、その間他により軽量で、より高い俊敏性を備え、よりパワフルなスポーツカーは数多く登場してきました。しかし、この「ロードスター」ほど、走る喜びをドライバーたちに提供してきたクルマなど存在しないのではないでしょうか。

 その大きな理由としては、軽量な後輪駆動車として追求された性能もさることながら、このクルマが持つ優れた汎用性が挙げられます。これまでマツダは、100万台以上の「ロードスター」をアメリカ国内に送り出してきました。フロリダからアラスカまで、今や全米の至る所でこの粋なスポーツカーの姿を見かけることができます。

 手頃な価格はユーザーの懐に優しく、その気になれば手が届くクルマでありながら、驚くほどの楽しみが約束されているのです。

 憧れの「コルベット」の旧車を手に入れる前の、練習用のスポーツカーとして「ロードスター」に乗るという方もいるかもしれません。しかし、多くのドライバーにとって「ロードスター」を所有する喜びは、絶対に色あせることのない…かけがえのない体験に他なりません。

 それでは、これから4回にわたって、マツダの誇る「ロードスター」の30年以上に及ぶ歴史を振り返っていくことにしましょう。

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※マツダ「ロードスター」は、日本では発売当時「ユーノス・ロードスター」の名称で、北米ではマツダ「MX-5 ミアータ」(Mazda MX-5 Miata)の名称で販売されています。このページでは、「ロードスター」の表記で統一しますが、文章中に登場する日本国外のエディション名などを表す際は、「MX-5 ミアータ」で表記します。


初代:NAロードスター
[1989年~1997年]

マツダ「ロードスター(mx5 miata)」の歴史を振り返る① 【初代na/1989年~1997年】
MAZDA

 誕生から年月を重ねるに連れて運動性能を高めていく「ロードスター」ですが、初代「NA」は、例えるなら、生まれたばかりの子犬のような1台と言っていいでしょう。協調性や成熟度という点においては、後継モデルに劣ると言う方もいるかもしれません。ですが、公道を駆け回る楽しさなら、どのクルマにも負けることなどありませんでした。

 軽量で俊敏な英国スポーツカーの伝統的な魅力を、現代によみがえらせたのがこの「NA」でした。おまけに、英国車には欠けることのあった高い信頼性も兼ね備えていました。その証拠に、発売直後から文句なしのベストセラーとなり、1989年から1998年までの間にアメリカ国内で約40万台という驚異的な販売台数を記録しています。

 今では4世代目となる「ロードスター」の歴史の中においても、代名詞的な存在となっているのがこの「NA」であり、中古車市場においても求めやすく、最大の人気を誇るモデルと形容する批評家も存在します。

「ドライバーの遊び心を刺激し、ひたすら楽しませてくれるのが「ロードスター」。誰にとっても満足度の高いクルマです」- サム・スミス(カーメディア「R&T」)

 しかし、いつまでも状態の良い「NA」が簡単に入手できると考えるのは、大きな間違いでしょう。安価な「ロードスター」が大きな楽しみを提供してくれるクルマであることは疑いようのない事実ですが、それゆえセカンドカーとして所有されるケースも多く、手荒に扱われることも決して少なくありません。改造の手が加えられていない、状態の良い初代「ロードスター」をアメリカ国内で探し出そうと思えば、それ相応の努力が必要になるはずです。

 とは言いつつも、自由気ままに乗り回すことのできるのが「ロードスター」を駆る喜びであり、快感であることもまた事実です。あらゆる天候において快適な走りを提供し、他のクルマを置き去りにするその性能。その容姿と同じくらい、乗って楽しいのがこのロードスターの魅力なのです。

マツダ「ロードスター(mx5 miata)」の歴史を振り返る① 【初代na/1989年~1997年】
MAZDA

エンジンは2種類ありました

 初期の「ロードスター」には、116馬力の1.6リッター4気筒エンジンが積まれていました。1994年以降になると、128馬力の1.8リッターエンジンがそれに取って代わります。実はどちらの初代「NA」も、約998kgという軽さにも関わらず、決して速いクルマとは呼べませんでした。

 後期の1.8リッターモデルのフライホイールを軽量なものに付け替えれば、初期型「NA」のような感度の良さを得ることが可能で、多少のパワーアップも実現することが期待できました。

特別仕様車は人気も価値も高い

 そんな「ロードスター」には、数多くの特別仕様車が存在していました。それらは標準車よりも、高額で取り引きされることも珍しくありません。

 1994年にアメリカで発売された「MX-5 ミアータ Mエディション」には、木製のステアリングとシフトレバー、サイドブレーキが採用されています(編集注:日本では1990年7月に発売された「ロードスター Vスペシャル」に、このナルディ製のウッドパーツが装備されています。日本における「ロードスター Mタイプ」は、標準車にパワーステアリングとパワーウィンドウのみが装備されていました)。

マツダは今も「NA」用の新パーツを製造中

 全パーツを新品でそろえることはほぼ不可能ですが、マツダが日本限定で提供している「NAロードスターレストアサービス」のおかげで、多くの再生産パーツが入手可能です。年季の入ったクルマをリフレッシュしたいのであれば、まずはお近くのマツダディーラーに問い合わせてみることをおすすめします。

マツダ「ロードスター(mx5 miata)」の歴史を振り返る① 【初代na/1989年~1997年】
MAZDA

Miata.netという最強のファンサイトをご存知?

 「ロードスター」が史上最大の人気を誇るクルマのひとつということは、すなわち利用可能なサービスが充実しているということも意味します。「ロードスター」に魅せられたファンが集う「Miata.net」は、知見の宝庫と呼ぶべきサイトです。このクルマに関する膨大な情報が整理されています。

カスタマイズも楽しもう

 ターボ使用車の爆発力をお求めですか? そんな願いも、「ロードスター」なら朝飯前です。V型8気筒の新型「コブラ」のようなモデルがご希望ですか? オフロード用コンバーチブルに乗ってみたいのですか? そのどちらの希望も、「ロードスター」なら楽勝です。改造の可能性は無限大とも言えるかもしれません。

「NAロードスター」の歴史

マツダ「ロードスター(mx5 miata)」の歴史を振り返る① 【初代na/1989年~1997年】
MAZDA

▼1989年

 1990~1991年の初期モデルには、いわゆるショートノーズクランクシャフトに問題を抱えた車両が存在します。結果的にエンジンの故障につながる可能性があり、走行距離の少ない初期のモデルには、十分な注意が必要です。

▼1990年

 雨の多いイギリスで特に大きな人気を博した「ロードスター」には、オプションとして、ディーラーで搭載可能なターボチャージャーが用意されていました。1200台ほどが生産されていますが、いずれも150馬力というやや物足りない出力でした。現在では「ロードスター」用のターボチャージャーキットが数多く生産されています。

▼1991年

 「ロードスター」史上初となる、特別仕様車が登場したのが1991年。ボディはブリティッシュレーシンググリーンに塗装され、ナルディ製のアクセサリーパーツが採用されています。4速オートマチック仕様がオプションに加わりました。

▼1993年

 1994~1997年にかけてのモデルは、シャシーの剛性が高く、よりパワフルな1.8リッターエンジンを搭載。ブレーキにも改良が加えられています。この年代の「ロードスター」こそ、最も魅力的なモデルと言う方も少なくありません。

▼1996年

 マイナーチェンジの結果、5馬力のアップが実現し、OBD-IIポートへの変更がなされています。この年、マツダはクーペのプロトタイプも製造していますが、そちらは生産には至りませんでした。

▼2000年

 この年の2月、北カリフォルニアで初となる、「ロードスター」限定のレース・「スペック・ミアータ(Spec Miata)」が開催されています。誰でも参加可能な低予算の大会は、その後シリーズ化されています。

Source / Road &Track
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。