「ポルシェが、『マカン」のEVモデルと新型の内燃機関モデルの開発に取り組んでいる」という話を小耳に挟んだことがあるかもしれません。ドイツ・シュツットガルトに本拠地を置く同社は2021年5月10日(ドイツ時間)に、現在テスト中であるEV版「マカン」の新たな写真や詳細情報を公開。現状のポルシェにとってのベストセラーモデル、「マカン」の先行きを明らかになりました。
ポルシェは、「マカン」に関して興味深い戦略をとっています。まず2021年中には、大幅に改良された内燃機関モデルの「マカン」を発売。その後2023年に、アウディとポルシェが共同開発したEV専用プラットフォームを採用したEVモデルの「マカン」が発売される予定です。
このEV専用プラットフォームは「プレミアム・パフォーマンス・エレクトリック(Premium Performance Electric、略してPPE)」と呼ばれ、いち早くアウディの「E-Tronコンセプト」に採用されてデビューを果たしたものです。
ポルシェの開発部門を率いるミヒャエル・ステイナー氏は声明の中で、「EV需要は高まり続けていますが、変化のスピードは世界中でかなり異なっています」とし、「われわれが従来の内燃機関を採用した『マカン』現行モデルの改良版を、2021年にリリースするのはこのためです」と語っています。
「ロード&トラック」のインタビューの中で、ポルシェの広報担当者は次世代の内燃機関を採用したモデルの「マカン」について、「完全な再設計ではなく、現行モデルを手直しするカタチになる」と認めています。
一方でEV版「マカン」については、ポルシェ「タイカン」と同様の800ボルトの電気アーキテクチャを採用しつつ、このモデルとは異なるプラットフォームや基盤を採用したものになる見込みです。
また、『カー&ドライバー』誌の報道によれば、EV版「マカン」は「タイカン」よりはるかに長い航続距離を実現し、その数字は「タイカン 4S」のEPA(経済連携協定)基準の航続距離である、約365kmを上回る見込みだと伝えられています。
異なるプラットフォームを採用する2つのバージョンの「マカン」を開発し、同時に手がけるという戦略はポルシェによって特筆すべきことです。と言うのも、どちらのパワートレイン(推進装置)を載せられる共有プラットフォームを1つ開発するほうが、はるかに単純だからです。
実際、ポルシェの競合メーカーが進めてきた開発の方向性も、後者に近いやり方です。アウディ「E-Tron」やメルセデス・ベンツ「EQC」、BMW「iX3」などはいずれも、EVモデルと内燃機関モデルでプラットフォームを共用しています。
これはおそらく、ポルシェは独自にEV版「マカン」用プラットフォームを開発するほうが、電動パワートレインや関連機器のパッケージングの最適化が実現できるち判断したからでしょう。ゼロ・エミッション(人間の活動から発生する排出物を限りなくゼロにすること)のパワートレインを、内燃機関向けに設計されたプラットフォームに無理やり載せることより総合的な意味で好ましいと判断したに違いありません。
逆に内燃機関版「マカン」のほうは、EV版への適応という新たな課題を加えることなく、改良し続けることができるわけです。とは言え、次世代のパワフルな「マカン」は、現在ポルシェ「カイエン」にも採用されているフォルクスワーゲングループの進化版の縦置きエンジンプラットフォーム「MLB evo」へと移行することも可能です。
さらにEV版「マカン」のPPEプラットフォームは、将来的にアウディやポルシェの複数のモデルに採用されることでしょう。さらには、ベントレーにも採用される可能性もあります。つまり、「同じ小型SUVで2つの大きく異なるモデルを開発する」という一見して不可解に思えるポルシェの戦略は、フォルクスワーゲングループ全体での大規模な部品共有の可能性を推察するならば合理的でもあり、理にかなっていると言えるはずです。
EVと内燃機関の新型「マカン」2モデルは、2023年に市場投入を見込んでいるとのこと。販売価格は未定となっています。
Source /Road & Track
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。