先日、オランダ・アムステルダムで開催されたプレスイベントに登場したステランティス社のカルロス・タバレスCEOが、米国市場における同社のEV展開の計画について語りました。その中で、ジープからブランド初となる完全電動のEV(電気自動車)が発売予定であることも明かされています。さらに同じく今後登場予定の、「ラムEV(Ram EV)」に関する新情報も発表されました。

ステランティスは既に、ジープ「ラングラーEV」を米国で2024年に発売することを明らかにしています。そのクルマこそ、「ジープ初のEV」と考えていた人も少なくなかったかもしれませんが、実際はその前に別のクルマが登場するというわけです。

ステランティスは、「デア・フォワード2030(Dare Forward 2030)」と題した長期戦略を打ち立てています。これは同社の傘下に属する14のブランドから、なんと100種類ものEVが2030年までに展開されるという壮大な計画です。

今回発表となったジープのEVと「ラムEV」は、この「デア・フォア―ド2030」戦略の先鋒を担うものとなります。この計画自体はすでに以前から発表されていましたが、今回明かされたジープ初のEVモデルのティーザーに、会場からは驚きの声が漏れたことを付け加えておきます。

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STELLANTIS

さて、気になるそのジープの新型EVですが、その外観は現行のジープ「コンパス」を思わせるデザインです。しかしモデル名については、公表されていません。確かなのは、すでに投入が決まっている「ラングラーEV」よりも1年早く市場に姿を現すことになるという点のみ。ステランティスによるとその新型EVは、2023年早々にも販売が開始されるものとしています。

「ラングラーEV」の米国販売は、2024年が予定されています。そして、そこで同時投入される予定なのがマッスルカーの代名詞であるダッジ(Dodge)のEVです。さらに同2024年の内に、ジープのEVがさらにもう一台お目見えする予定とされています。

実は、話はこれで終わりではありません。

待望される「ラムEV」の詳細な情報についても、タバレスCEOは明かしています。電気トラックの開発については他社に若干の遅れを取っている感のあるステランティスですが、その遅れを取り戻す計画があるというのです。

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STELLANTIS

2024年に投入される「ラムEV」は、すでに各社が競うように発表している次世代型の電気トラックの上を行く性能を備えていると、CEOは自信をのぞかせています。フォード「F-150ライトニング」、リビアン「R1T」、テスラ「サイバートラック」よりも優れた航続距離と充電速度を備え、積載量と牽引力においても「ラムEV」に軍配が上がることになるというのです。

話題がトラックに及んだところで、ステランティスは大型トラック用の水素燃料電池についても独自の計画があることを匂わせています。これは重工業分野における脱炭素化に向けた大きな一歩を期待できそうですが、詳細は今後さらなる情報が届くことになる見込みです。一方で、「ラム プロマスター」の水素エンジン搭載型バンも2025年に米国に登場することが明らかになっていますので、おそらくヘビーデューティな大型トラックの世界における脱炭素化時代もそう遠くないでしょう。

こうして車社会の脱酸素時代、そしてEVの時代が本格的に幕を開けようとしているのです。

この先10年間で、ステランティス単独でも100種類もの新たなEVの生産が計画されています。そして、同社による米国でのEV展開の試金石となるのが今回発表された2つのモデルであることは明確。これはステランティス肝入りのEV計画と言えます。その先陣を切るSUV、トラック、そしてマッスルカーの各EVに対する期待は今後高まるばかりです。

Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。