2021年モデルのジープ「ラングラー4xe(フォーバイイー)」は、怪力を誇る「ラングラー ルビコン392」に次ぐ、強力なパワーを備えた1台です。2.0リッター直列4気筒ターボエンジンの最高出力は375馬力、最大トルクは470lb(この数値は「ラングラー ルビコン392」と同等)ですが、エンジンとトランスミッションの間には電動モーターが搭載されています。

 米国環境保護庁(EPA)によれば、燃費は49MPGe(編集注:「MPGe」=電気自動車などの電気エネルギーで走行するクルマの燃費を表すためにEPAが定めた単位)を達成し、これは「ラングラー」の中では優秀と言える数値です。ただし、このEPA規定に適った数値はEVモードの場合のみ、という点には注意が必要です。

 電動モーターのバッテリーが切れて通常のハイブリッド車として走らせた場合には、この数値は20MPGeまで低下します。バイブリッド仕様ではない「ラングラー」の各モデルと大差ない数字となるどころか、その中でさえ優れた数値とは言えません(ディーゼルエンジン搭載の「ラングラー ルビコン」でさえ、23 MPGeですので…)。

 つまり、その圧倒的な馬力の他に(もちろん、これだけでも十分な理由にはなるのですが…)「ラングラー4xe」に乗る理由を見出そうとするならば、EVモードを積極的に使用する必要があるのです。さて、そこで問題となるのが「ラングラー4xe」のEVとしての実力です。その辺りについて、このあと見ていきましょう。

走行性能は「合格」と呼べる走り

 
Car and Driver

 数あるプラグインハイブリッド車(PHEV)の中には、シボレー「ボルト」のように 堅実なショートレンジEVモードを備えているものもあれば、ミニ「クーパーSEカントリーマン・オール4プラグイン・ハイブリッド」のように、EPAの数値をうたいたいだけ、もしくは、「エコカー減税等の基準をクリアするためだけに、手の込んだ細工をあえて施したのでは?」と疑いたくなるものもあります。 

 この「ラングラー4xe」ですが、堅実な側のPHEVに属すと言っていいでしょう。

 約14.0kWh(キロワット時)のバッテリーパックは、EPAの評価で21マイル(約34km)の電動走行が可能で、アメリカ国内における7500ドル(約82万4000円)のEV税控除の対象となる基準を満たしています。電気モーターの出力は134馬力でトルクは181lbと、それなりの仕様となっています。

 PHEVの中には、例えばミニやボルボのように、電気モーターを前後いずれかの車軸に搭載することで、全輪駆動を可能にしている車種もあります。ですが「ラングラー」は、8速オートマチックの優れた変速比を活かすべく、電気モーターの先にトランスミッションを置いています。そうすることでEVモードでも、広い回転域での4輪駆動を可能にしているのです。EVが複数のギアを必要としないというのは常識かもしれませんが、それでもやはり複数のギアを用いるメリットはあるのです。

 さらに、プラグイン仕様の「ラングラー4xe」は、“ハイブリッドモード”、“EVモード”、“バッテリーセーブモード”の各パワートレインの選択を、ドライバーが自由に行えるよう設計されています。EVモードを選択すれば切替設定値に達するまで、値を設定していない場合にはバッテリー切れになるまで、ずっとEVモードのままで走行することも可能です。

 その設計によるアドバンテージを見事に活かした「ラングラー4xe」のEVモードは、2002年型「ラングラーTJ」世代の4気筒エンジンよりも低い馬力で、「ラングラー」の最強モデルである「ラングラー ルビコン」に匹敵する巨体を走らせることを可能にしています。

 では、肝心の走行性能はどうでしょうか? そういった重要な問いに対する答えは、「合格」です。ここからは、その理由を見ていきましょう。

加速するには時間が必要?

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【※編集注:以下は全てEVモードで走行した際の数字と結果となります】

 走り出してみるとすぐに、「ラングラー4xe」が悪くないクルマであることが実感できるはずです。

 街乗りも快適です。非公式の加速実験を行った結果、時速0から時速30マイル(時速約48キロ)までの加速は6秒弱とまずまずでしたが、その先で劇的に落ち込みます。時速50マイル(時速約80キロ)から60マイル(時速約96キロ)までの加速に、1、2秒を要するといった具合です。

 静止状態からの加速は、デジタル表示のスピードメーターの数字が飛ぶように跳ね上がることはありません。そして時速50マイル(時速約80キロ)を過ぎると、表示される数字が増えていくのをじっくり確認できるほどです。道路の流れに合せて走るには、低速ギアで十分でしょう。そしてバッテリーが許す限り、高速道路でのクルージングも問題ありません。ただ、加速までに時間が必要なことは確かです。

 「ラングラー4xe」が積んでいる電気モーターは2つあります。しかし、第2のモーター(44馬力、トルク39lb)はEVモードでは役に立ちません。その理由は、クランクシャフト・プーリー(編集注:クランクシャフトの先端に取り付けられる補機類を駆動するためのプーリーのこと)に接続されており、スターター用のジェネレーターとしてのみ機能するからです。

 つまり、ICEエンジン(※編集注:ICEとはインターナル・コンバッション・エンジンの頭文字で、内燃機関のこと)が停止した状態においては、このモーターの出る幕はなさそうです。

Q. 牽引は可能?

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 はい、問題ありません。

 試しに12フィート(約3m65cm)のユーティリティトレーラーに、2021年製のポラリス「RZRトレイル」(車重約562kg)とホンダ「TRX 90X」(車重約119kg)を載せた状態で牽引してみました。

 トレーラー本体も含めた総重量は、約2000ポンド(約907kg)にも達します。ほぼ1トンとなり、これは「ラングラー」の牽引可能重量の半分以上の重さとなります。さらに低速になった「ラングラー4xe」ですが、4気筒エンジンの助けを借りることなく、急勾配の坂道や時速約88.5キロ以上の道路においても、何の問題もなく積荷を運ぶことができました。

 ただし、航続距離(一回の充電による走行距離)は大きく減少し、通常の半分ほどに落ち込みます。それでも近場への移動であれば、EVモードでの牽引でまったく問題ないと言えるでしょう。

Q. バーンアウトはできる?

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 発進前にあらかじめタイヤを空転させて加熱する、「バーンアウト」もテストでは問題ありませんでした。

 「ラングラー4xe」が「ラングラー ルビコン392」と異なるのは、2輪駆動モードを備えている点です。リアドライブに設定してトラクションコントロールを切り、EVモードを選択した上でブレーキを踏みながらアクセルをふかせば…滑らかにバーンアウトすることができます。

 電気モーターがブレーキの制御を振り切れるはずもなく、タイヤが唸り声をあげるだけの力はありません。しかし、それは舗装路での話。ダートではどうでしょうか? 自宅のドライブウェイに残された、2本のタイヤ跡が証明してくれているとおりです。

Q. オフロードでの実力は?

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 「騒音を立てることなくオフロードを楽しみたい」という方も、「ラングラー4xe」のオーナーの中にはいるはずです。オフロードにおける「ラングラー4xe」は、「ラングラー ルビコン」同様に屈強です。30インチ(約76cm)の水深に対応し、フロントとリアのデフにはロック機能、電子制御によるSWAY BAR(アンチロールバー)の切断システムなども備えています。

 EVモードでオフロード走行を試みたところ、低速での正確な反応というトレイルにおいて求められるテクニカルな実力は、電動パワートレインの性能と実によく噛み合っているという印象を受けました。

 それでも、もしあなたがグラミス砂漠(編集注:カリフォルニア州最南東部にあり、オフロードの人気スポットとして知られています)を駆け抜けたり、地元の泥んこレースで賞金を狙いに行くというのであれば、4気筒ターボエンジンを発動させるべきかもしれません。

 EVモードが実用的なのは、間違いありません。その上、必要に応じてその威力を見せる375馬力の強力なパワーが眠っていることも忘れないでおくべきでしょう。

Source / CAR AND DRIVER
この翻訳は抄訳です