「スター・ウォーズ」生みの親として知られるジョージ・ルーカスが、ここ数年大変な時期を過ごしていたようです。彼は莫大な資産を築いてきましたが、自らが生み出し、SFや映画の世界を一変させた「スター・ウォーズ」シリーズは巨大企業の手にわたり、クリエイティブ面での権限を失うことになりました。正直に言うと、60億ドル(約6462億円)ものルーカスの資産を考えれば彼のことをあまり気の毒には思えませんが、それでも現在のディズニーとの状況が決して愉快なものでないことは想像がつきます。2019年9月23日に販売開始となった、ディズニーのボブ・アイガーCEOの自伝『The Ride of a Lifetime: Lessons Learned from 15 Years as CEO of the Walt Disney Company(原題)』の中では、「ディズニーから自らの構想と異なるシリーズの方向性について伝えられ、裏切られたかのように怒りを覚えていた」というルーカス氏のエピソードが明かされています。 
 
アイガーCEOは、自伝の中で次のように語っています(comicbook.comより転載):

ルーカスフィルムの買収が進められていたとき、ジョージは新3部作のあらすじが完成したことを教えてくれました。彼の同意を得て、私とアラン・ブレイヴァーマン(ウォルト・ディズニーのシニア・エグゼクティブ・バイスプレジデント、ゼネラル・カウンセル兼セクレタリー)、ディズニー・スタジオの経営者として雇われたばかりであったアラン・ホルン(ウォルト・ディズニー・スタジオ会長でチーフ・クリエイティブ・オフィサー)の3人がこのあらすじのコピーを受け取りました。アラン・ホルンと私はこのあらすじを読み、買い取るべきだと判断しました。ただし、この際の契約において、ディズニーがジョージの考案したプロットに従う義務がない点は明確にしていました。 
 
ルーカスはクリエイティブ面でのコントロール権を私が譲らないことは分かっていましたが、それは彼にとって容易には受け入れがたいことでした。そうして、彼は不本意ながらもディズニーの要請に応じて、アドバイザーとして参加することで合意したのです。私はディズニーが彼のアイデアにオープンに対応することを約束しましたが(これは難しい約束ではありませんでした。ルーカスのアイデアですから、耳を貸すのは当然です)、この約束もあらすじと同様に、ディズニーが何らかの義務を負うものではありませんでした。

 その後、アイガーCEO、ルーカス、脚本家のマイケル・アーント、ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ社長の4人は、スカイウォーカーランチ(映画制作会社ルーカスフィルム本社が入るスタジオの総称)で新3部作のアイデアについて話し合うミーティングを行ったとのことです。

ジョージは彼らが説明を始め、自らが交渉中に提出したストーリーが使われないことがわかると、すぐに怒りました。実のところ、キャスリーンとJ・J・エイブラムス(『フォースの覚醒』の監督・脚本家)、私とアランの4人は新たな3部作の方向性について話し合い、「ジョージの描くあらすじとは違う」ということで一致していたんです。ジョージはディズニーが契約上自らのアイデアに従う義務がないことは知っていましたが、私たちがこのストーリーを買い取ったことが「アイデアを採用する」という暗黙の約束だと思っていたのです。そして、彼は自らのストーリーが切り捨てられたことに失望したというわけです。

私はジョージと最初に話したときから決して誤解を招かないよう注意を払ってきましたし、今でも自分が誤解を与えたとは思っていません。ですが、この件はもっとうまくやれたかもしれません。J・Jとマイケルとのミーティングの前に、4人が「ジョージのアイデアとは別の方向性がベターだ」と一致したことを伝え、心の準備をしてもらうべきでした。あらかじめこのことを話しておけば、彼を驚かせたり怒らせたりすることは避けられたはずです。「スター・ウォーズ」の将来についての初めての話し合いで、ジョージには「裏切られた」と感じさせてしまいました。このプロセス全体が彼にとっては耐え難いものだったことでしょうし、私たちは無用に前途多難なスタートを切ってしまいました

 ちなみに、ルーカスは以前にエピソード7〜9の構想について語っており、この物語は人気絵本『マジック・スクール・バス』と他の絵本たちを混ぜたようなものにも思えました。この中には「ウィルス(Whills)」という要素が登場し、「スター・ウォーズ」ユニバースのミクロの世界を冒険するような話でした。ルーカス自身がインタビューの中で「『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』が嫌われたように、多くのファンはこの物語を嫌ったことだろう」と認めていたのです。 
 
 というわけで、ジョージ・ルーカスとディズニーの関係はたしかに気まずい状況であったかもしれませんが、「スター・ウォーズ」のためには、ベストなことであったのかもしれません。 

 

 
 

From Esquire US
Translation / Wataru Nakamura 
※この翻訳は抄訳です。