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「肌寒くなってくると、無性に食べたくなる」と言えば、暖かい鍋料理もそのひとつではないでしょうか。そこでぜひ使いたいのが、趣のある昔ながらの土鍋。かつては直火で使うものが主流でしたが、近年ではIHに対応しているものも販売されています。
このページでは、土鍋を購入するときのポイントを紹介。さらに、おすすめの土鍋や土鍋でおいしいご飯を炊く方法、土鍋を使い始める前にすべきことなどを詳しく解説します。
土鍋のメリットとデメリット
土鍋は金属製の鍋と比べると熱伝導率が低く、温度の上昇が緩やかです。実は「土鍋ご飯はおいしい」と言われるのは、これが大きな理由のひとつ。
お米の甘みを引き出す酵素アミラーゼは、40〜50度で活発に働くと言われています。土鍋は熱伝導率が低いので、アミラーゼが活発に働く温度を長時間キープできます。その結果、うまみたっぷりなご飯が炊けることが期待できるというわけです。
さらに土鍋は、お米だけでなく根菜類の煮物や茶碗蒸し、プリンなどの調理にも役立ちます。食材にゆっくり火が通るため、煮崩れしにくくなったり、すが立ちにくくなったりするのです(卵料理を加熱しすぎて、表面に細かい穴があいてしまうこと)。
ただ土鍋を使う前に、“目止め”と呼ばれる水漏れを防ぐ作業をしなければならないケースもあります。また、急な温度変化によってヒビが入ったり、割れてしまったりすることがあるため、火加減に注意が必要です。
しかし、手間がかかるぶん愛着が湧くというもの。時間をかけておいしい料理をつくりたいという人は、ぜひとも土鍋を使ってみてはいかがでしょう。
土鍋ご飯の炊き方
せっかく土鍋を購入するなら、ぜひとも土鍋ご飯にチャレンジしてみたいものです。次のステップを踏めば、誰でも簡単に土鍋でおいしいご飯を炊けるはず。ぜひ、参考にしてみてください。
- 米を研ぐ(最初に注ぐ水は、ミネラルウォーターや浄水器の水が理想です)
- 土鍋に研いだ米を入れて平らにならし、30分(冬は1時間)を目安に浸水させる
- 強めの中火で10分くらい加熱し、沸騰させる
- 沸騰したら弱火にし、10分くらい加熱し続ける
- 火を消し、蓋をしたまま10分蒸らす
ただし、土鍋の種類や厚みによって、仕上がりに微妙な違いが生じることもあります。何度か炊飯してみて、ベストな加熱時間や火加減を見つけてくださいね。
土鍋の選び方
土鍋を選ぶ際は、次の4点が肝心です。
土鍋は大きく、深型と浅型に分類できます。それぞれの特徴を理解した上で、適したほうを選びましょう。
深型|土鍋でご飯を炊くのにおすすめ
深型は全体にまんべんなく熱を伝えられるため、ご飯を炊くのにおすすめ。保温性にも優れており、余熱による調理も可能です。煮物や汁物、熱々のおでんなどをつくるのにも向いているでしょう。中には、炊飯に特化したモデルも。炊飯用の土鍋が欲しい人はチェックしてみてください。
浅型|鍋パーティにGood
浅型は口径が広いため、具材を取り分けやすく、卓上で使うのにぴったりです。家族や友人と鍋パーティーを楽しみたいなら、浅型がイチオシと言えます。ただし、深さがないぶん吹きこぼれしやすい点にご注意ください。
土鍋の大きさは、もともと「寸」だったものを改めて「号」で表されます。1寸は3cmなので、一般的な土鍋の号数をcmに換算すると下記のようになります。
- 5号:(サイズ)15cm(使用人数の目安)1人
- 6号:(サイズ)18cm(使用人数の目安 )1〜2人
- 7号:(サイズ)21cm(使用人数の目安 )2〜3人
- 8号:(サイズ)24cm(使用人数の目安 )3〜4人
- 9号:(サイズ)27cm(使用人数の目安 )4人以上
したがって、一人用の土鍋を探している人には5号がおすすめできます。一方、ご家族が多い場合は、8号もしくは9号がイチオシ。土鍋を使用する人数を考慮しつつ、ちょうどよい号数を選択してみてください。
土鍋ならではの風合いを感じたいなら、焼き物の産地から選ぶのもおすすめです。ここでは代表的な萬古焼、伊賀焼、信楽焼について紹介します。
萬古焼
萬古焼(ばんこやき)は、江戸時代中期に豪商、沼波弄山(ぬなみろうざん)が三重県朝日町小向(おぶけ)に窯を開いたことが始まりとされます。萬古焼には食器や花器などさまざま焼き物がありますが、特に土鍋は全国シェア80%を占めるほどです。
萬古焼の土鍋の特徴は、何と言っても丈夫なところ。陶土にペタライトという鉱物を配合しており、高火力のガスで使っても割れにくいと言われています。また現在では、IH対応の土鍋やタジン鍋、無水鍋といった商品も開発されています。
伊賀焼
伊賀焼は、三重県伊賀市を中心として奈良時代から製造されている由緒ある焼き物。中でも桃山時代につくられた花入や水指は、国の重要文化財の指定を受けました。また1982年には、国の伝統工芸品にも指定されています。
伊賀焼に用いられる陶土には、約400万年も前に花崗岩(かこうがん)が風化し、琵琶湖の底に堆積してできた亜炭などが含まれているのが特徴です。蓄熱性が非常に高く、火から下ろしても冷めにくいのが魅力です。
信楽焼
滋賀県甲賀郡信楽町を中心に製造されている信楽焼(しがらきやき)。信楽焼には徳利や土鍋、タイルといった多種多様な焼き物があります。
信楽焼の特徴は、陶土に岐阜県瑞浪(みずなみ)地方や愛知県瀬戸地方に分布する、木節粘土を混ぜているところ。可塑性(かそせい=固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質)に優れており、こしのある、肉厚な質感が魅力です。ナチュラルなデザインがお好きなら、信楽焼の土鍋にもぜひ注目を。
手軽さを求めるなら「セラミック」もおすすめ
セラミックは目が大変細かく、表面がつるつるしているため、色やにおいが付着しにくいと言われています。ゆえに、お手入れも簡単。使い始めるにあたって、目止めをする必要もありません。購入後、すぐに使えるのもうれしいところです。
IHに対応している製品も多いので、自宅のキッチンがガス火でない人にもおすすめできます。とにかく手軽さを求めるなら、セラミックの土鍋も候補に入れてみてください。
「土鍋を使いたいけれど、キッチンの熱源がIHだから…」と諦めている人もいるかもしれません。しかし最近では、IHに対応している土鍋も増えてきています。
IHに対応している土鍋には主に、素材にセラミックを採用しているタイプ、鍋底に「IH対応発熱プレート」を敷いて使うタイプの2種類があります。
ただし、全てのセラミック製の土鍋がIHに対応しているというわけではありません。購入前に商品の仕様に目を通し、IHに対応しているか否かを確認しておくとよいでしょう。
土鍋のおすすめ9選
縁が高めで、ふきこぼれにくい構造をしています。具材がたっぷり入る、深型なのもポイント。水炊きやキムチ鍋、すき焼きやしゃぶしゃぶなど、あらゆる鍋料理に適しています。
3〜4人で使うのにちょうどよい8号サイズで、家族や友人と鍋料理を楽しみたいときにもうってつけ。蓋(ふた)は白、本体は黒のツートーンカラーが見た目にもおしゃれです。
- サイズ:8号
- 素材:陶磁器
- IH対応:×
陶土にペタライトという鉱物を配合し、優れた蓄熱性を誇る萬古焼の土鍋です。原料や釉薬の調合、製造過程に工夫を凝らし、汚れやにおいがつきにくいといった長所があります。
食材にじっくり熱を伝えられるため、彩のよいかやくご飯や、モチモチ食感のメロンパン風ちぎりパンなど鍋料理以外の料理もつくれます。
- サイズ:8号
- 素材:耐熱陶器(萬古焼)
- IH対応:×
一人暮らしの人にイチオシな、コンパクトサイズの土鍋です。商品名のとおり、蓋をひっくり返しお椀として活用できるのがポイント。洗い物が減らせて助かります。
ガス火はもちろん、電子レンジに対応している点も要チェック。土鍋ご飯が手軽に食べられます。
- サイズ:幅約18.5 × 奥行き約15.5 × 高さ約12cm
- 素材:陶器
- IH対応:×
直火はもちろん、IHでも使える2Way仕様の土鍋です。さまざまな鍋料理が映える、明るい白色も人気の秘訣。2〜3人で使いやすい7号サイズです。土鍋の中では、比較的手頃な価格なので、手に取りやすいのもGoodポイント。気兼ねなく使える土鍋を探している人は、候補に入れてみてください。
- サイズ:7号
- 素材:陶器
- IH対応:◯
鍋の底に発熱体が焼き付けられたIH対応の土鍋です。直火やハロゲンヒーター、ラジエントヒーター、電子レンジやオーブンもOK。すべての熱源で使える汎用性の高さが魅力です。
吸水率が低い素材を採用しており、料理のにおいが土鍋に移りにくいのもポイント。さらに付属のすのこを利用すれば、鍋料理だけでなくヘルシーな蒸し料理も楽しめます。
- サイズ:幅26 × 奥行き22 × 高さ6.5cm
- 素材:陶器
- IH対応:◯
大切な人へ土鍋をプレゼントするなら、コチラの土鍋もおすすめです。蓋に「〇〇家の鍋」と名前が入れられる、まさしく一生ものと言える土鍋です。
結婚祝いや新築祝いに贈っても、きっと喜ばれることでしょう。直火はもちろんのこと、IHや電子レンジで使えるのもうれしいポイントです。
- サイズ:9号
- 素材:(蓋)美濃焼、(本体)萬古焼
- IH対応:◯
デザイン性に優れた土鍋をお探しなら、コチラを候補に入れてみてください。モダンな雰囲気を感じさせる深いブルーが、食卓をおしゃれに演出します。
使用前の目止め処理が不要なため、購入後すぐに使える点も見逃せません。さらに、においや汚れがつきにくいオリジナルの釉薬を使っているところもポイントです。
- サイズ:7号
- 素材:陶器(萬古焼)
- IH対応:×
BRUNOの土鍋は、内側に「落とし構造」を採用しているのがポイント。吹きこぼれを防げるため、鍋が焦げついたりコンロが汚れたりしにくいのがメリットです。
さらに土鍋自体に料理のにおいや汚れもつきにくく、お手入れもラクラク。カレーや煮込み料理づくりにもうってつけです。季節を問わず使える土鍋をお探しなら、注目してみてください。
- サイズ:8号
- 素材:セラミック
- IH対応:◯
電子レンジでも使える一人用の土鍋です。土鍋に特有の遠赤外線効果によって、食材のうまみを引き出しながら加熱できると謳(うた)っています。保温性が高いことに加えて、和食や洋食どちらにもマッチするデザインのため、そのまま食卓に出すのもよし! とりわけ一人暮らしの人におすすめしたい土鍋です。
- サイズ:5号
- 素材:陶器
- IH対応:—
土鍋を長く愛用する秘訣
お気に入りの土鍋を買ったなら大切に使い続けたいもの。土鍋を長く愛用するには、実はちょっとした秘訣があります。
土鍋は、土からつくられる焼き物です。そのため、表面に小さい穴が無数にあいています。この穴のことを“目”と言い、目を塞ぐ作業のことを“目止め”と言います。
目をふさがないと使っているうちにヒビが入ったり、においが染みついてしまったりするため、土鍋を使う前に次の手順で目止めを行いましょう。
- 土鍋を水でよく洗う
- 土鍋をよく乾かし、8分目くらいまで水を入れる
- 米、小麦粉、片栗粉などを入れ、蓋をしないで1時間くらい弱火にかける
- 火を止め、土鍋がすっかり冷めたら水で洗う
ちなみに米、小麦粉、片栗粉などを使うのは、これらにでんぷん質が含まれているから。でんぷん質が目をふさぐ「つなぎ」の役割を果たすのです。
なお、中には目止めが不要な土鍋もあります。商品の仕様をチェックし、必要な場合に限り目止めを行ってください。
土鍋はとてもデリケートなもの。急激な温度変化に弱く、いきなり強火で熱すると真っ二つに割れてしまうこともあります。使用後すぐに冷水で洗ったり、硬く目の粗いスポンジでゴシゴシ洗ったりするのもやめましょう。
急に加熱したり冷却したりしないこと、やわらかいスポンジを使って洗うことなどが、土鍋のひび割れを防ぐコツ。また、洗浄後はカビが発生しないように、風通しのよい場所で十分に乾燥させるのもポイントです。
まとめ
土鍋は、使用前に目止めをしたり火加減に注意したりする手間がかかりますが、熱伝導率の低さを活かして、ふっくらしたご飯や味がしっかり染みた煮物、なめらかなプリンなどがつくれる便利な鍋です。このページを参考に、ぜひお気に入りの土鍋を探してみてください。