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CEDRIC DIRADOURIAN
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ワインの奥深さに敬意を払う一方で、「ワインやシャンパンって肩肘を張らず、もっとカジュアルで、でもエレガントで…おいしくて、誰でも楽しめるオープンな世界」という哲学を持つ、ワインスタイリストの藤﨑さん。

連載「satokoの一杯逸品」の第10回目は、ゲストをお迎えし「海苔(のり) × シャンパン」のペアリングの楽しみ方を体験したうえで、海苔に関するエピソードと共に対談形式にてお届けします。

「海苔とシャンパンは果たして合うのだろうか…?」、そんな疑問を持つ読者も少なくないかと思います。今回のインタビューを通して海苔とシャンパンそれぞれの深みに触れ、ぜひ試してみてほしいと思います。

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「梅の花」1号缶2本詰合せ 5400円購入は公式サイトから
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「東京プレミアムおつまみ海苔」2缶詰合せ 1296円購入は公式サイトから

ゲストとしてお迎えしたのは海苔の名家で、看板商品の「梅の花」や、スナック感覚でお召し上がりいただける「おつまみ海苔」など、幅広い商品を取り扱う山本海苔店の代表取締役社長・山本貴大さん。創業1849年から脈々と受け継がれるDNAと職人技術にて生み出される海苔と、グラン・クリュ畑の広がる(最高峰のピノ・ノワールを生み出す)アイ村で1860年に誕生し、160年以上の歴史を持つシャンパーニュ地方でも最も古いメゾンのひとつ「シャンパーニュ アヤラ(Champagne AYALA)」とのペアリングを考察していきます。

《Guest Profile・経歴》
山本海苔店代表取締役社長 山本貴大さん
…大学卒業後、銀行に勤務。仕入部を経験し、2021年に「山本海苔店」社長に就任。

香りを味わう
「海苔に大事なのは“香り”」

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藤崎さん:海苔とシャンパン…、実はもともとそのペアリングに興味があって、趣向を凝らしていました。私がプロデュースするシャンパンラウンジでも提供しています。皆さま、非常に驚かれますが…感じられる旨味に反応されるのか、「面白い組み合わせだ」と、おっしゃってくださいます。

その中でも香りもよく、海苔本来の旨味を感じられる山本海苔店さんの「梅の花」はシャンパンとの相性もよいと感じていて、私個人としても気に入っていてよく購入させてもらっています。子どもの頃から自宅に常備されていたノスタルジックも相まっているかもしれません…(笑)。

山本社長:ありがとうございます。「梅の花」は、海苔“そのまま”をおつまみとして食べていただけるように、特に“香り”を大切にしています。

ちなみに…、海苔を食べる前に“匂いを嗅ぐ”という方もいらっしゃると思います。この表現にはこだわりがありまして…、海苔本来から放たれるものを“香り”と表現しているワケです。

藤崎さん:食する前に放たれているのが、“匂い”というワケですね。

山本社長:その一方で私たちは、海苔を飲み込んだ後に鼻から息を吐いたときに感じるものを「香り」としています。良い海苔というのは、この「香り」がすごくいいんです。このように海苔には、“香り”のよさが必要不可欠な存在と考えています。

藤崎さん:なるほど、その感覚と表現はとてもおもしろいですね。確かにおいしい海苔には、必ず飲み込んだ後に必ず豊潤な香りも感じることができます。その香りがあるからこそ、海苔をそのまま食してもおいしくいただけるワケですね。

海苔と合うのはどちら?
ドサージュ(糖分添加)あり or なし?

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CEDRIC DIRADOURIAN

藤崎さん:海苔の香りを存分に感じるために今回、海苔とのペアリングとして用意してみたシャンパンは、「シャンパーニュ アヤラ ブリュット マジュール」と「シャンパーニュ アヤラ ブリュット・ナチュール」の2種です。

「シャンパーニュ アヤラ」は、コート・デ・ブラン地区(=シャンパーニュの主要産地のひとつ)の『グラン・クリュ』と呼ばれる、シュイィ(Chouilly)、オジェ(Oger)、そしてシャンヴォワジー(Champvoisy)、パッシー=グリニー(Passy-Grigny)、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ(Vallee de la Marne)に畑を所有しています。

《おさらい》
『グラン・クリュ(Grand Cru)』とは何?

…フランス語で「特級」という意味を指します。例えば、ブドウ畑の区画によって、「格付けなし」「プルミエ・クリュ(Premier Cru=一級)」「グラン・クリュ(特級)」と区分けされていて、つまり「特級」の畑を指しています。ラベルに「グラン・クリュ」と明記さている場合は、その畑で採れたブドウのみを使って作られたワインという意味になります。
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「シャンパーニュ アヤラ ブリュット マジュール」ドサージュ 7g / L、シャルドネ45%、ピノ・ノワール35%、ピノ・ムニエ20%詳細
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「シャンパーニュ アヤラ ブリュット・ナチュール」ノン・ドサージュ、シャルドネ45%、ピノ・ノワール35%、ピノ・ムニエ20%詳細

藤崎さん:この2本の違いは、ブドウのブレンド比率が全く同じなのですが、唯一の違いはドサージュ(糖分添加)が有り or 無しのみです。それぞれのペアリングがどう違って、どのように合うのか? 山本さんと試してみたいと思っていました。

味付け海苔と、無しの海苔がありますね。この非常にシンプルな違いによって海苔本来の味を楽しむわけですが、それと同様にペアリングするシャンパンもシンプルな違いにすることによって、海苔の香りや旨味を感じられるのではないかと思っています。

山本社長:赤ワインや白ワインではなく、シャンパンを選んだのにも理由があるのですか?

藤崎さん:もちろん海苔に、赤ワインや白ワインと合わせることも良いと思います。文字どおり、(海苔は)海の香りがするのでワインとの相性にはいろいろな発見があると思うのです。一方で、その組み合わせ(フードペアリング)が多すぎて難しいかなぁ、と感じることもあります。であれば、ブドウ品種をしぼったほうが記憶に残る、と思ったワケです。

ですので、なんにでも相性の良いシンプルな味わいの海苔だからこそ、初心者向けでも比べやすいモノを選びたいと思いました。そこでシャンパンのドサージュ(糖分添加)の“有り無し”のみで、それぞれのペアリングと旨味の違いを楽しみたいと思ったのです。

シャンパーニュ地方の
白亜質石灰岩について…

藤崎さん:少しだけ歴史を振り返ってみると、納得がいくはずです。シャンパーニュ地方は約9000万年前…すべて海で覆(おお)われていたのです。 「海水中の堆積物(岩石質の堆積物)が海の底に蓄積し、その高さは約200メートルにも達した」とも言われています。

それが地殻変動で隆起して、今の土地(シャンパーニュ地方)になったと言われています。シャンパーニュ地方の白亜質石灰岩は、海洋微生物の死骸(coccolith=コッコリス)を起源とする方解石結晶粒からなり、矢石類(古代の軟体動物の甲羅)の化石が含まれていることが特徴です…。

小難しいことを説明しましたが、簡単に言うとシャンパーニュ地方のブドウの木は、例えば牡蠣の殻など海の色々な成分がある地層から、地下約20mぐらいまで伸びたブドウの根っこが栄養を吸い上げています。その実から造られるシャンパンだからこそ、シーフードが合うというセオリーになるワケですね。

それこそ「海苔」は海の代名詞的な存在。香りから楽しめる食材です。牡蠣やエビなどのシーフードと同じ立ち位置だと私は思っていて、シャンパンとの組み合わせが完璧だと思うのです。ペアリングのスタイルは無限大にあり…、フードペアリングは複雑ですが、実はシンプルな一面もあるのです。

山本社長:なるほど。海苔のおいしさを最大限に味わうためにシャンパンを選ばれたワケですね。

確かに海苔は合わせた食材のおいしさを、何倍にもしてくれる力があると信じています。ですので、何か食べ物と合わせて食べることが多いですが、実は海苔単体でもとてもおいしく召し上がっていただけるんですよね。

私たちの会社も、お客さまに海苔の味を最大限に感じてもらうために、海苔の製造時に焼き加減を“ミディアムレア”で焼いています

藤崎さん:え? 海苔の焼き方にレアとかあるんですか?

山本社長:はい、海苔を光にかざしてみてください。ところどころ赤みをおびていませんか?

藤崎さん:確かに赤い部分が見えますね。

山本社長:これは海苔の焼きが甘い場所(スポット)なんです。あえて、焼きの甘いところをつくることによって、甘みを感じることができるように工夫しています。

藤崎さん:素晴らしいですね。知りませんでした。「梅の花」は海苔の甘みが最大限に引き出されてるからこそ、シャンパンの酸味が絶妙にマッチしておいしさが増しているんですね。

山本社長:そうなんです。丁寧に繊細につくっているからこそ、海苔を袋から出したらすぐに食べていただくことを推奨しています。海苔は空気に触れ続けると、湿気っていってしまうので…。開封した瞬間がもっとも、おいしくいただけるかと思います。

藤崎さん:空気に触れた瞬間から、味が変化していく…。まるでワインのようですね。

まとめ & アドバイス
「シャルドネの酸味が海苔とマッチ」

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CEDRIC DIRADOURIAN

藤崎さん:ドサージュありの「シャンパーニュ アヤラ ブリュット マジュール」は甘みが加えられている分、海苔の甘みとバランスが取れてより旨味を感じます。

一方でドサージュなしの「シャンパーニュ アヤラ ブリュット・ナチュール」は、どちらかと言うと塩味や海苔本来の香りをより感じることができますね。特に「梅の花」は、どちらも非常に合うので好みや気分で飲み分けてみてはいかがでしょうか。

今回は、海苔とのペアリングとして「シャンパーニュ アヤラ(Champagne AYALA)」を用意してみましたが、それが手に入らないという人や海苔をもっと感じたいという読者の人は、シャルドネ100%にこだわって選んでみてください。

海苔そのままの甘み、口に入れて広がる塩味、そこにシャルドネの酸味が加わって、海苔の持つ本来の旨味を感じることができるかと思います。

それでは、次回もお楽しみに!!

《Profile・経歴》
藤﨑聡子(Satoko FUJISAKI)
ワインスタイリスト

…1997年ワイン専門誌「ワイン王国」創刊、編集・作家担当・広告業務を担当。2003年ワインスタイリストとして独立。以後、男性ファッション誌、女性ファッション誌でシャンパン、ワイン、料理制作、スタイリング、レストラン紹介などを連載・執筆。

世界的に発刊されているワイン漫画『神の雫』では、シャンパン女番長としてワインと食材のマッチングコラムを2年半にわたり執筆。これはフランス、上海、北京、香港、台北、ソウル、アメリカで翻訳され現在も発売中。単行本では24巻から36巻まで収録されている。

レストランのワインリスト作成、メニュー開発、またスタッフに対するワインセミナーもジャンルを問わず手掛ける一方、ファッション撮影ではインテリアコーディネート、フードスタイリングなども担当構成。2014年12月、シャンパン100種類、メインディッシュは餃子、唐揚げをリスティングするラウンジ・Cave Cinderellaを東京・西麻布にオープン。

フランス・シャンパーニュ生産者組合団体・シャンパーニュ騎士団より2007年シュヴァリエ・ド・シャンパーニュ、2009年ジャーナリスト最年少でオフィシエ・ド・シャンパーニュを叙任。シャンパン、餃子、唐揚げ、ポテトフライ、ゴルフをこよなく愛する。

Photograph / Cedric Diradourian
Hair and make-up / BOTAN
Interviewer / Shane Saito