※本記事は、「エスクァイア」イタリア版の編集部が、ミラノを拠点にする泌尿器科医のニコラ・マッキオーネ先生への取材をもとに寄稿した記事になります。

《目次》

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これまで、「男性器のサイズ」の悩みに関しては“杞憂(きゆう=無用の心配)する必要などない”と幾度となく紹介してきました。ことパートナーとのセックスにおける満足度に関しては、「サイズとは関係ない」と何度も言ってきたかと思います。とは言え…(何故なのでしょうか)古今東西、「男性器のサイズ」について気になるという人はあとを絶たないのも事実。

泌尿器科医が記事を監修「誇大広告に警鐘を鳴らす」

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その需要に応えてか、これまでペニスのサイズを大きくする奇跡の方法を謳(うた)った広告が、古い雑誌の終わりのほうのページにがずらっと並んでいたものです。皆さんも憶えていますよね? そんな時代も終わり、インターネットの時代になってはいますが、それでもネット上になおも同様に誇大な宣伝文句からなるポップアップが次々と現れているのを目にしているはずです。また、メールボックスには魅力的なタイトルのスパムであふれかえっているでしょう––いわく、「30日で、プラス4cmを保証」などなど。そんな彼らの特大サイズへの幻想によって、こうした商売がなおも成り立っているというわけです。その背景にある、「ペニスサイズによって性的能力が評価される」という脅威の都市伝説への不安と恐怖にさいなまれながら。

そうです、なおも多くの男性が「自分のペニスは小さすぎるのでは⁉」という恐怖感を抱き続けているわけですが、実際のところ大多数の男性が間違いなく、平均的なサイズであることは研究によって立証されてもいます。また実際のところ、平均サイズより大きい男性は全体の15~20%程度であるという数値も報告されています。

つまり、もし自分のサイズが気になるようであれば、効果が当てにならない、お金がかかる上に身体に害を及ぼす可能性まである対処法に手を出す前に、性器医療の専門家に相談するのが得策と言えるのです。

問題を明確にするため、数字をいくつか挙げておきましょう。

一般的に、ペニスの勃起時の平均的な長さは約13.5cmであり、外周は約11.6cmとされています。そんな数値と比べる以前に、男性の約91%が「自分のペニスは平均よりも小さい」と考えがちなのも事実なのです。この男たち特有となる局部への根強いマイナス思考によって、「“性的能力の欠如”と言われる前に解消すべき」という思考を高め、実行することになぜか急がせてしまうのです。

現在の“特大サイズ”市場が提供しているのがまさにそれであって、科学的な裏づけがないのにもかかわらず、この市場はますます豊かで多くの人を引きつけるほどの活況を呈しているわけです。

飲み薬、クリーム、ローションで男性器増大は期待できるのか?

これらの商品(飲み薬、クリーム、ローション)の中には、ペニスサイズをアップさせるだけでなく、性的パフォーマンスまで同時に向上することを約束しているものもあります。ですが一般的に、これらの商品にはビタミン、ミネラル、ハーブ、ホルモンまたはホルモンに似た物質など、わけのわからないものが配合されていがちです。

これらは、その謳い文句やいかにも効きそうな名称とは裏腹に、実際に効果があるという医学的な根拠は皆無であり、ときには人体に有害であることが判明しているものすらあるのです。

米国メリーランド大学の研究者がそれらのうちのいくつかを分析したところ、鉛、殺虫剤の成分、バクテリア(大腸菌など)、さらには動物のフンなども検出された例もあるそうです。そういうわけですから、どうか惑わされないようにしてください。奇跡は起こらず、むしろ逆効果となるのです。

ペニス増大エクササイズ「ジェルキング(jelqing)」の効果は?

日本でも「チントレ法」の最右翼的存在として、オンライン販売されている「ジェルキング」の教則ビデオには、「海綿体の勃起組織に含まれる血液の容量を増やすため、柔らかい状態のペニスを親指と人差し指を使って“牽引する”」といったいくつかの系統だったエクササイズから構成されていることを説明しています。

とは言え残念ながら、このテクニックを科学的に裏づける証拠もなさそうです。それどころか、誤って陰茎筋膜を傷つけてしまう可能性もあります。そうなれば、感覚障害を引き起こす恐れすらあるのです。

ペニス吸引および牽引用の器具の是非

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TUOMAS A. LEHTINEN

ここで言う“吸引”を行えば、海綿体に血液を一時的に“吸い込む”ことでペニスのサイズを一時的に大きくすることはできるでしょう。ですが、その“変化”が長続きするかどうかについては、意見が分かれています。

最近の研究によれば、31人の男性に1回約20分間の吸引を週に3回、6カ月にわたってペニス吸引をやってもらったところ、ペニスの長さに大きな変化は見られなかったということ。ですが、被験者のうち「ペニスの長さが1cm伸びたという人が11パーセント」、「それなりに満足したという人が30パーセント」だったと報告されています。この数値をどう判断するかは、それぞれ異なるというわけです。

ペニスを牽引する器具のほうは、「機械の力で組織を継続的に牽引することによって、組織改造を行う」といった原理を応用したものになります。

また、イタリアのある研究によると、16人の被験者に1日4~6時間、6カ月にわたって牽引処置を行ったところ、そのうち1名のペニスの長さに顕著な伸び(平静時で2.3cm、勃起時で1.7cm)が見られたことが報告されています。このように期待の持てる結果が出るには出ましたが、外周の伸びはわずかなもの(0.03cm)にとどまっていたそうです。

また、44人の被験者を使った別の研究では、長さに平静時で約2.5cm、勃起時で約1.6cmの伸びが見られたそうです。ですがここでも、太さに関しては処置の3カ月後に計測しても、その“伸び”も微々たるものだったそうです。つまり牽引器具は、長さを数cm伸ばしたいという人にとっては有効な妥協策と言えるかもしれません。

ペニス増大の注入療法

太さを増すのに最もよく利用されているのがこの方法で、“注入可能な物質”としてはいまのところ、自家脂肪が最も幅広く使われています。

これにはまず、通常は本人の腹部から脂肪を吸引し、それをペニスに皮下注射することになるわけです。主な研究報告によると、この手術から1年後の外周は平均で約2.5cm増えています。副作用として結節ができたり、感覚が失われたり、皮膚が変形するといった術後の合併症が見られることも珍しくなく、傷跡の悪化から脂肪塞栓症で命を落とすこともありました(過去に1例の報告あり)。

最近では、シリコンを代替物として使用することが提案されています。ですが、これだと外見や機能面の問題が高い確率で生じる可能性があります。軟組織の化粧用注入剤に関してはその懸念をよそに、2000年以降は312%の増加を示し、年間約270万件の手術に使用されていると推定されます。

ヒアルロン酸・PMMAを使用した陰茎増大手術について

ヒアルロン酸、カルシウムヒドロキシアパタイト、コラーゲン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ミクロスフェアなど多くの素材が、ペニスの手術を含む数えきれないくらいの小規模美容手術に使用されています。

ヒアルロン酸は最も多く使われている注入剤のひとつであり、平均注入量20.56mlの注入を1回受けた男性41人を調査した報告では、ペニスの外周が7.48±0.35cmから1カ月後には11.4±0.34cmへ、18カ月後では11.26±0.33cmへ、それぞれ増えている結果も出しています。

ここで唯一の欠点と言えるのは、局部感度が鈍くなるということでしょう。

PMMAもよく使用される注入剤で、非吸収性軟部組織に対して使われます。文献によると、約1000人の患者がこの技術による治療を受けた症例が記録されており、外周が平均して約2.5cm伸びてるといい値を示していました。ですが残念ながら、これらの場合でも、約30~50%の症例に外見上の不完全さ(しばしば修復が困難)が見られました。

外科手術という選択肢、効果とリスクは?

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「フラップ & グラフト(Flap & Graft)」というのは、ペニスを大きくする手術であり、海綿体の“伸縮可能な”表面を伸ばすために素材を添付します。

使用されるのは生体適合性のある豚の真皮細胞移植片(InteXen)で、69人の施術を行った患者について調査したところ、平静時と勃起時の両方で手術前(平均でそれぞれ8.1cmと10.8cm)から外周に大きな伸びが見られました(平均でそれぞれ11.3cmと13.2cm)。

移植片を添付するリスクとしては、その後に起きるペニスの収縮や、たまに見られる感度の鈍化があるそうです。

男性器増大手術「ペヌマ(Penuma)」とは? 効果とリスク

よく行われる手術にはもうひとつ、“皮下への埋め込み”があります。もっともよく知られているのは「ペヌマ(penuma)」で、陰茎を長く広げるために陰茎の皮膚の下に挿入される三日月形の医療グレードのシリコンをペニスの後ろ3/4を包み込むよう、 恥骨の上部を切開して皮膚の下に挿入して亀頭に固定するものになります。

外周の伸びは患者によって個人差がありますが、平均すると3~4cmと報告されていて、こちらの場合も術後の合併症は少なくありません。が、ほかのに比べるとはるかに対処しやすいもののようです。このような外科手術で最も重要なのことは、海綿体の表面を横に拡張するパッチを添付して大きなペニスをつくるという点につきます。

外周の伸びはおよそ4.5cmと推定されていますが、長期間にわたって残るペニスの傷跡から勃起不全に至るまで、大きなリスクも伴っています。

結論

要するに病的な状態のサイズでないのなら、ペニスに奇跡を起こす必要はないでしょう。それを乗り越えるまでの道のりは長く、そしてとても険しく危険も多いです。なので、決して正当性があるものとは言えないようです。そんなことよりも、穏やかで健康的な性的能力の向上に目を向け、何の役にも立たない“特大サイズを手に入れる”よりも、“自分のサイズが好き”に宗旨(しゅうし)替えしたほうが、よっぽど有意義と言えるでしょう。

Source / Esquire IT
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。