2020年9月24日(現地時間)、インターネット通販最大手のアマゾンがゲーム業界に参入することを発表し、ゲーム業界だけでなくIT業界にも激震が走りました。Eコマースの巨人が発表したそのゲームこそ、クラウドベースのゲーム配信サービス「Luna(ルナ)」です。発表からおよそ1カ月後の2020年10月20日、招待された少数のユーザーを対象に「ルナ」への先行アクセスを開始しましたが、膨大な数の申し込みがあったと言います。

 日本でのサービス開始があるのか? あるとすればいつになるのか? 気になることばかりのアマゾン「ルナ」。ここでは、現地時間2021年1月26日にアメリカのテック系ウェブサイト「POPULAR MECHANICS」に掲載されたルナの記事をご紹介します。


アマゾンの「ルナ」とは?

アマゾンのクラウドゲームプラットフォーム「ルナ」について知っておくべきこと
Amazon

 ルナとは、いわゆるクラウドゲーム(クラウドゲーミング)の一種です(クラウドゲームについては後述します)。ルナなら、お気に入りのゲームをアマゾンが提供するクラウドウェブサービス「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」でデバイスにストリーミングすることで、最新のゲームのプレイが可能です。高価な専用ゲーム機はおろか、ゲーミングPCを購入する必要もありません。時間を掛けてダウンロードをしたり、アップデートの必要すらありません。必要なのはしっかりと安定したネット接続環境、何らかのスクリーン(モニター)、そしてサブスクリプションだけです。

 現時点では、ルナは招待制となっています。シリアスゲーマーやTwitch(ツイッチ/Amazon.com 傘下のゲーム動画配信サービス)ユーザーが最初にアクセスできるようになっています。アメリカ国内から、アマゾンのリクエストフォームにアクセスし登録することで招待を受けられる仕組みとなっています。

 以下に、ルナの価格やスペックなどについての詳細をご紹介します。

Q. ルナの料金は?

A. 月額5.99ドル(約630円)、Ubisoft+でのベータアクセスで月額14.99ドル(約1570円)となっています。

Q. プレイできる端末は?

A. Fire TV、PC、Mac、iPhone、iPad、一部のAndroid端末からアクセスが可能です。

Q. 一度に何台の端末で遊べますか?

A. 現在のところ、2つの端末で同時利用が可能です。

Q. どのようなゲームにアクセスできますか?

A. 「バイオハザード7」「コントロール」「パンツァードラグーン」などのアクションゲーム、「プレイグ テイル -イノセンス」「ザ サージ2」などのアドベンチャーゲーム、さらに「グリッド(GRID)」「アブズ(ABZU)」などファンに人気のゲームをプレイすることができます。

クラウドゲーム(クラウドゲーミング)とは?

アマゾンのクラウドゲームプラットフォーム「ルナ」について知っておくべきこと
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 今回ご紹介しているルナを含め、新たなゲーミングプラットフォームとしてがぜん注目されているのが「クラウドゲーム(クラウドゲーミング)」です。2019年にグーグルが発表した「Stadia(スタディア)」をきっかけに、IT業界も含めて徐々に注目されるようになりました。

 ゲームと言えば、従来の据え置き型のゲーム機(ハード)を用いたものやオンラインゲームなどがありますが、クラウドゲームとはそれらとは異なり、ゲームの全てがサーバー上で処理される仕組みとなっています。プレイヤーが操作(使用)する端末は、サーバーでつくり出された映像をストリーミング方式で受信し表示するだけなので、映像描写に優れた最新ゲームでも手軽に遊ぶことができます。

 他にも、クラウドゲームにはメリットがあります。

 従来のゲーム機ではある端末でゲームをプレイしていても、それをそのまま別のゲーム機でシームレスに、同じ場面・同じ状況からプレイすることはかないませんでした。1990年代に登場した「セガジェネシス(日本名:メガドライブ)」、2000年代初頭の「ニンテンドーDS」、そして現在のリビングルームに転がっている「ニンテンドースイッチ」などはその代表例です。

 一方クラウドゲームでは、ひとつの画面でプレイしたタイトルをまた別の端末でプレイし、その後に、また別の端末でその続きをプレイすることも可能です。つまり、理論的にはPCで「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」をプレイしてから、iPhoneでその続きをプレイすることができるのです。

 もちろん、クラウドゲームはルナだけではありません。2020年11月にマイクロソフトは「プロジェクト・エックス・クラウド(Project xCloud)」の限定プレビューを開始しています。すでに欧米をはじめとする22カ国において、月額14.99ドルの定額制サービス「Xbox Game Pass Ultimate」を使って、約100本のXboxゲームをAndroidスマートフォンやタブレットでプレイできるようになっています。

 そして数あるクラウドゲームの 中でも、ルナの比較対象となり得るサービスが、2019年に開始された先述の「Stadia(スタディア)」でしょう。利用料は不要で、2つの無料ゲームへのアクセスと、月額9.99ドル(約1050円)のStadia Proの1カ月間のトライアルを試すことができます。

インターネット接続の重要性

 しかし、コンテンツが常にデバイスに配信されている以上、常時安定したインターネット接続が必須となります。アマゾンでは、最低でも10Mbps(毎秒10メガビット)の接続を推奨しています。また、Destructoidのレビューによると、ルナのプラットフォーム上でプレイすると、1時間あたり10GBのデータを使用するとのこと。

 自分のデータ容量の上限がわからない、または現在、毎月どれくらいのデータを使用しているのかわからない場合は、ルナを含むクラウドゲーミングの契約を購入する前に使用量をチェックしてみるとよいでしょう。また通信速度については、米国の平均速度は約50Mbps、日本の平均速度は29.11Mbps(※)ですが、それでも自分の速度を確認しておくとよいでしょう。Speedtest.netにアクセスして「Go」ボタンをクリックするだけで、通信速度を計測することができます。

(※インターネット回線速度計測サービスSpeedtestを提供するOokla発表の2018年における、世界のモバイルと固定回線の通信速度のデータから抜粋)

なぜルナが注目されているのか?

 ルナの成功のカギを握っているのは、やはり運営元であるアマゾンとなります。サービス全体がクラウドに依存していることを考えれば、アマゾンがサービスを提供しているという点はプラスに働くと見て良いでしょう。アマゾンが提供する「AWS」はクラウドコンピューティングの最大手のひとつであり、世界中に計り知れない数のサーバーを保有しているのです。

 他にも、ルナが持つ最大のセールスポイントのひとつが、2014年にアマゾンが買収したビデオゲームストリーミングプラットフォーム「Twitch(ツイッチ)」との緊密な連携にあります。人気のあるツイッチのゲーム動画配信をルナから直接視聴することができ、もしそのゲームを気に入ればツイッチの視聴画面から1クリックでそのまま遊ぶことも可能です。

 ルナには、より快適なゲームプレイを叶える対応コントローラも用意されています。キーボードとマウスや、サードパーティ製のゲーミングコントローラーがあれば完璧ですが、ルナのコントローラーなら、アレクサへの対応機能や、ゲーム遅延の少なさ、そしてAWSのクラウドサーバーとの接続によりデバイス間の接続をシームレスに切り替えられ機能などの便利さを実感することでしょう。

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 現時点では、月額5.99ドル(約630円)で「ルナ+ライブラリ」に加入し、限定されたゲームライブラリにアクセスできます。しかしアマゾンは、ユービーアイソフトのプラットフォーム「Ubisoft+」と契約して「アサシン クリード ヴァルハラ(Assassins Creed Valhalla)」や「ファークライ6(Far Cry 6」などのタイトルを含む、パブリッシャーのゲームライブラリにアクセスできるオプションも用意しています。

 この取り組みは、アマゾンのプレスリリースによると「現在開発中のルナのゲームチャンネルの第一弾という位置づけ」であり、「プレイヤーは好きなパブリッシャーやジャンルのゲームをプレイすることができる」とのことです。

 まだまだ気になる事ばかりのルナですが、果たして日本でのサービスは開始されるのでしょうか? 続報が待たれるばかりです。

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Source / Popular Mechanics
Translate / Esquire JP
この翻訳は抄訳です。