※本記事は、デイビット・パールマター博士へ実際にインタビューしたときのものです。 


 早いもので、私(筆者パールマター博士)が『「いつものパン」があなたを殺す(三笠書房/2015年ベストセラー(原題:GRAIN BRAIN/2013年)』を出版してからすでに6年の月日が経ちました。脳の「健全性」、「機能性」、「耐病性糖質」といった側面に注目しつつ、炭水化物そしてグルテンなどの成分が、「脳」に対していかに脅威となり得るかについて論じた本になります。

 本書に対して寄せられた読者の皆さまからの反応は、極めて好意的かつ肯定的なご意見が多かったのですが、中には厳しい指摘や意見もありました。つまり、食事において多くの脂肪分を摂ることが、脳の健康や減量、血糖値の維持などに対して良い影響を与えるという議論を受け入れ難いと感じた読者もいたということになります。
 
 しかしながら、脂肪分を食生活に取り戻し、同時に糖質とグルテンを取り払うべきだという考えは、当時から既に科学的根拠に裏づけられたものでしたし、それこそが私たちのあの本の中心的テーマだったわけです。

Font, Tan, Beige, Peach, Recipe, Coconut, Publication, Label, pinterest
KEVIN SWEENEY
SHOP NOW


 著書『「いつものパン」があなたを殺す』が出版されて間もなく、世間の関心が急速に高まってゆくのを目の当たりにしました。その後訪れた本書の国際的な成功は、私たち筆者による健康とライフスタイルに関するアドバイスを読者の方々が正しく受け取って、実践してくれたことの現れであると考えています。

 そして、6年という時間が流れた現在、私たちはその間にさらに多くの物事を学び、知識は大幅にアップデートされました。何よりも重要なことは、現在の科学的文脈が私たちの当初の主張を支持したうえで成り立っているということです。

Food, Dish, Bread, Cuisine, Ingredient, Loaf, Soda bread, Baked goods, Vegetarian food, Sourdough,
Stefan Kirchner//Getty Images

セリアック病でなくてもグルテンの悪影響を受ける可能性について

 私たちの主張とは、「セリアック病(celiac=タンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症。全栄養素の吸収生涯が生じる自己免疫疾患)」の患者でなくても、グルテンに対する免疫反応を示す可能性があるというものでした。

 セリアック病と診断された人々以外は、「グルテンの摂取を制限する必要がない」という、それまで一般的に信じられてきた栄養学の考えを覆す説となりました。セリアック病を患っていなくても、グルテンにより免疫反応が引き起こされ、そのことによって内蔵以外の人体の部分にまで深刻な問題が生じるという可能性について、私たちは訴えたのです。

 2013年の出版当時には暴論と見なされもしましたが、その後、2016年ついに米国医師会雑誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(Journal of the American Medical Association=JAMA)』で私たちの説が支持を得るに至り、多いに勇気づけられました。






糖質および高血糖食品が健康に及ぼす悪影響について

 現在の最先端科学においては、糖質と高血糖食品は避けるべきであるという考えが主流になりました。医学誌『ランセット(The Lancet)』が2018年になって取り上げられていますが、5大陸18カ国において、炭水化物の過剰摂取による死亡リスクは28%高く、反面、脂肪分の摂取による死亡リスクは23%低く認識が改められています。欧州糖尿病学会が発行している医学ジャーナル誌『Diabetologia(糖尿病学)』には、血糖値の指標であるヘモグロビンA1cと認知症との明確な関係性を示した驚くべき論文が掲載されていました。

 低糖質の食事を心掛けつつ健康的な脂肪分を多く摂取し、そしてグルテンを避けるべきという『「いつものパン」があなたを殺す』が出版された6年前には、まだまだエキセントリックだと思われていたこの考えも、近年では一般的な理解として共有され広まっているのです。

 今日において、その研究はさらに深まっており、健康一般や疾患予防に関する知見、そして特に私たちの「脳」が高機能と抵抗力を維持するための知見が、2018年12月18日に出版されたばかりの『「いつものパン」があなたを殺す』の改訂版には、余すことなく詳細に盛り込まれています。


デイビッド・パールマター博士(David Perlmutter, M.D.)
…米国栄養学会会員。米国栄養学会の「年間最優秀ヒューマニタリアン賞」や、神経変性疾患の先駆的研究に対する「ライナス・ポーリング賞」をはじめ、数々の賞を受賞。医学関係のさまざまな出版物に著作を発表し、世界各地で講演を行なっている。


From MEN’S HEALTH
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。

※記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がESQUIRE DIGITALに還元されることがあります。