アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究(★0)でも、「毎日のカロリーを少し減らすことが健康に有益である」とされています。とは言え、全ては正しい理解と知識があったうえで行われるべきこと。ただ闇雲に行うことは危険です。まずここでは、その知識を身につけましょう。

Jump to:

カロリー不足(カロリーの赤字)とは?

man tracking calorie intake with a mobile app while enjoying a healthy meal
Anchiy//Getty Images

減量とはまさに、会計のようなものです。ですが、その目的は正反対です。つまり、ここで目指すべきは赤字の収支であり、消費カロリーが摂取カロリーを上回ることになります。カロリーについては諸説あり、近年ますます議論が過熱していますが、それでも健康的な食生活の指標として、1日当たりの摂取目標の設定が有効であることに変わりはないでしょう。

UCLAメディカルセンターの上級臨床栄養士であるダナ・エリス=ハネス博士(★1)によれば、運動や生活で消費されるカロリー量が飲食によって摂取するカロリー量を上回る状態が、「カロリー不足(赤字)」の定義です。

「カロリー不足の状態を目指すのであれば、いくつか方法があります」と、エリス=ハネス博士は主張します。

「まずは、摂取カロリーを抑えて消費カロリーを下回るようにする方法。それから、摂取カロリーよりも多くのカロリーを燃焼させるという方法。そして三つ目として、摂取カロリーを抑えながら消費カロリーを増やすというやり方です」

ただし、カロリー赤字の最大化を目指すことはやめておきましょう。カロリーを減らしすぎてしまうことで、身体は脂肪よりも筋肉の備蓄を先に燃焼させてしまうからです。

カロリー不足には4つの副作用がある

減量中の食事
Kseniya Ovchinnikova//Getty Images

名医であれヤブ医者であれ、多くの専門家が「カロリーの不足」― つまり、必要とされる摂取カロリーよりも消費カロリーのほうが多い状態― こそが、減量のための最も確実な方法であることを知っています。もちろん、そこには正当な裏づけもあります。

ただし、カロリーカットが減量につながることを示す根拠(★2)が数多く示されている反面、その副作用について、積極的に論じようという専門家はそれほど多くありません。ということで今回は、カロリー不足(赤字)にともなう4つの副作用について学んでいきましょう。

副作用1:空腹になりやすくなる(当然です)

ひとことで言えば、カロリーとはタンパク質、炭水化物、脂質からなるエネルギーの単位です。減量を目指すのであれば、「1日あたり300~500キロカロリー程度の不足(赤字)」が目安とされる数値でしょう。

注意すべき点ですが、「身体が燃料不足に陥ると“空腹ホルモン”として知られるグレリンの分泌が高まり、その反面で食欲を抑制するレプチンの分泌が低下してしまう」と、スポーツ栄養士のニール・リブモア氏(★3)は指摘しています。

体重1kgあたり1gのタンパク質を毎日の目安として摂ることで、間食の誘惑に打ち勝つことが可能とされています。ラトガース大学の研究によると、「タンパク質を摂ることで満足感が高まり、精製された穀類や糖類への欲求が抑えられることが研究の結果で示されている」と言います。

副作用2:生産性の低下

1日あたりの消費カロリーの約20パーセントを占めるのが、タンパク質です。活動的に生きるためには、安定したエネルギー補給が欠かせません。「脳は筋肉と異なり、余剰のブドウ糖を蓄えておく能力がありません」と、リブモア氏は指摘します。

脳が飢餓状態に陥ってしまえば、気分の落ち込みに加えて、生産性も低下してしまいます。睡眠が重要なことは言うまでもありませんが、低糖質かつ消化速度の遅い炭水化物をたっぷりと加えた朝食を習慣づけることで、朝のダルさに打ちかてるという研究結果もあります。

プンパーニッケル(ドイツの伝統的なライ麦パン)にスクランブルエッグを合わせたり、オーバーナイトオーツ(オートミールをミルク類<牛乳・豆乳・アーモンドミルクなど>に浸して、一晩置いたもの)を取り入れるなど、工夫してみると良いでしょう。

副作用3:より“健康”になる

カロリーカットは単に体重計の数値を下げるだけでなく、代謝機能障害のリスク低下をもたらすかもしれません。

デューク大学メディカルセンターの研究(★4)によれば、「1日あたり300キロカロリーほどのカロリー不足(赤字)が適度」とされており、「コレステロール値や血圧、血糖値などの健康指標の大幅改善に効果を発揮する」という実験結果もあります。300キロカロリーと言えば、カプチーノ1杯とビスケット2枚を合わせたくらいのカロリー量に相当します。

副作用4:筋肉量および持久力の低下

私たちの神経系は、食糧不足を感知するとエネルギーの備蓄(つまり脂肪の備蓄)のために活動レベルを引き下げてしまうことがあります。

「そうすると、私たちの身体は無自覚のうちに思考や生理機能を低下させ、エネルギーを節約しようとします」と、リブモア氏は言います。つまり、意識しないまま有酸素運動を控えてしまいかねないのです。

「エクササイズが思うようにはかどらない」と感じるときは、あえて活動量を増やすことを意識し、「カロリー消費を減らしたい」と願う身体自体の衝動にあらがうよう心がけましょう。

無脂肪体重(※編集注:体脂肪以外の、筋肉や骨、内臓などの総重量のこと)1kgあたり25キロカロリーの摂取量を下回ってしまうと、筋肉増強に支障をきたすことでしょう。また、疲労骨折のリスクが高まり、さらに持久力の低下を招く恐れがあります。

日々の体調を記録することもお忘れなく

体調を記録する男性
PeopleImages//Getty Images

長続きしなければ、効果的なダイエットとは言えません。その日の気分やエネルギーレベル、筋肉の状態、睡眠の質などを記録する習慣を身につけることが、継続的なダイエットへの近道となるでしょう。

「やり方さえ間違わなければ、それが良い影響となって体調にも確実に表れます」と、リブモア氏。もし何かうまくいっていないと感じたら、状況が上向くまで毎日100キロカロリーほど摂取量を減らしてみましょう。

食事ごとの記録は大いに役立つものですが、1g単位まで厳密に記録する必要はありません。一週間あたり2~3日の記録をつけるだけでそれなりの結果を得られることが、コネチカット大学の研究によって明らかになっています。

カロリー不足の状態を維持するメリットとは?

肉体的なメリットと、精神的なメリットを見てみましょう。

メリット①:減量の達成

カロリー不足(赤字)を維持することのメリットのひとつは、「適正な不足状態を保ち、空腹感の常態化を起こさない限り、体重を自然に落とせること」とエリス=ハネス博士は言います。

「ただし筋肉量を減らさないように、カロリー制限をほどほどに抑えることを意識する必要があります」と、博士は注意を促します。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の推奨する健康的な減量とは、「6カ月で当初の体重の約10%減を目指す」というもの。これは1週間あたり0.5~0.75ポンド(約227~340g)の減量に相当します。

メリット②:炎症を抑える

「カロリー不足(赤字)を維持することのメリットとして、炎症を抑えるばかりでなく、IGF-1(※編集注:『インスリン様成長因子1=Insulin-like growth factor 1』の略称。細胞の増殖分化および分化した角化細胞の生存にも重要に寄与します)の流出を抑える効果が認められています」と、エリス=ハネス博士は指摘します。

「慢性疾患の多くは炎症作用によって悪化すると言われています。カロリー不足(赤字)状態で炎症を抑えることは、慢性疾患の発症リスクの低下にもつながります」とのこと。

メリット③:寿命が延びる(可能性がある)

現状では、まだ確固たる結論は出ていません。ですが、寿命が延びる可能性が指摘されているというのも見逃せないメリットでしょう。

「カロリー不足(赤字)を維持することの利点として、長寿の可能性が挙げられています。サルとマウスを用いた研究によってですが、『カロリー不足(赤字)を80%程度のレベルに保つことでそれぞれ寿命が延びた』という結果が示されています」と、エリス=ハネス博士。

「人間の場合はまだ解明されていませんが、動物実験を用いた研究は進められています」と続けます。

メリット④:カロリー不足を維持していれば何を食べてもOK

カロリー不足(赤字)さえ維持していれば、特定の食品や食材を避ける必要はありません。つまり、「量さえ適正であれば、いかなる食品であっても禁止する必要がない」ということになります。

どの程度のカロリー不足が望ましいか?

healthy food for lunch
VioletaStoimenova//Getty Images

一般的に、1週間あたり0.5~1ポンド(約227~450g)の減量なら安全な範囲とされています。これは1日あたり250~500キロカロリー分の不足(赤字)に相当します。パスタなら1~2人前、約170gの鶏むね肉なら1~2枚といった分量です。

減量に適したカロリー量や、減量のペースは専門医にご相談を。この数値を把握しておくことで、減量の際のカロリー計算がわかりやすくなります。

カロリー不足の計算方法

ヘルシーな料理をする親子
MoMo Productions//Getty Images

以下に、2ステップ・プランをご用意しました。

ステップ1:1日の摂取カロリーを計算する

まず、毎日の食事で摂取しているカロリー量の算出から始めましょう。MyFitnessPal(★5)といったアプリを使って、3日間(1日では正確な評価はできませんので…)の飲食を全て記録し、1日あたりの総量を算出します。

次にあなたの活動レベル、つまりエクササイズの頻度に基づき、体重を維持するために必要なカロリー数を以下の計算式で算出します。

(注:以下のサンプルは体重185ポンド<約84kg>の場合です。また、体重の単位は全てポンドで考えていきます。ちなみに1ポンドはおよそ0.454kgとなります)

A. エクササイズ回数=0回

体重 × 10。つまり体重185ポンド(約84kg)の男性であれば、1日あたり1850キロカロリー。これがあなたの基礎代謝量(BMR)です。

B. エクササイズ回数=週1~2回

体重×12(=2220キロカロリー)

C. エクササイズ回数=週2~4回

体重×14(=2590キロカロリー)

D. エクササイズ回数=週5回以上

体重×16(=2960キロカロリー)

現在の摂取カロリーと、体重を維持するために必要なカロリーとを比較してください。基礎代謝量より多く食べていれば太り、少なければ痩せることになります。

ステップ2:1日の消費カロリーを計算する

もしカロリーの不足化ができていない人の場合、まずは1日の最大不足を250~500キロカロリーの間で設定し、減量を目指しましょう。おさらいですが、健康的で持続可能な減量の目安は、1週間あたり0.5~1ポンド(約227~450g)です。必要なのは「摂取カロリーを減らすか」「消費カロリーを増やすか」、またはそのどちらかです。

さて、体重185ポンド(約84kg)の男性で、週に2~4回のエクササイズを習慣としている場合、1日あたり2590キロカロリーで体重を維持できるという計算になりました。それではこの場合の消費カロリーについて、また消費カロリーを増やす方法について調べてみましょう。

1. 基礎代謝量(BMR):1日の消費カロリーの60~75%。

これは、生きているだけで身体が必要とするエネルギーの総量です。身長、体重、性別、年齢によって異なりますので、ネット上のBMR計算式(★6)などを用いて概算を求めてみましょう。

  • 70%=1813キロカロリー
2. 食事誘発性熱産生:10%

これは、消化によって燃焼されるカロリーの値です。一般的に、脂質として摂取したカロリーの0~3%、炭水化物のカロリーなら5~10%、タンパク質のカロリーなら20~30%、アルコールのカロリーの場合10~30%が消費されています。

  • 10%=259キロカロリー

タンパク質は、脂質や炭水化物よりも消化に使われるカロリーがはるかに多いため、タンパク質の摂取目標は毎日必ず達成するようにしましょう。そうすることで、労力を割かずに、多くのカロリーを消費できるからです。成人男性の場合、1日最低56グラムのタンパク質が必要とされています。鶏肉や魚といった、脂質の少ないリーンな食材をタンパク源として選ぶことがおすすめとなります。

3. 身体活動:15~30%

これは運動など、日常的な活動レベルで消費されるカロリー量です。フィットネストラッカーを使用することで歩数や心拍数などから、その日の消費カロリーの概算を知れます。

あるいは、オンラインのエクササイズ計算式(★7)に個々のアクティビティやワークアウトを入力して算出しても良いでしょう。ただし、必ずしも正確な数値が示されるわけではありませんので、あくまでも参考程度に。

  • 20%=518キロカロリー

飲んだ分のカロリーもお忘れなく。もちろん、炭酸飲料だけが問題ではありません。毎朝のジュースや夕食時のグラスワイン2杯など、ついつい忘れてしまいがちです。というわけで、飲み物からのカロリー摂取量を記録しておくことも大切です。飲み物のカロリーは、自分が思っている以上に高くなりがちですのでご注意を。

例えばビール1缶のカロリーは銘柄によっても異なりますが、350ml缶でおよそ150キロカロリーが目安となります。たった2本飲むだけで1日あたり300キロカロリーが加算されることになるのです。1日の食事から250~500キロカロリーを減らしたところで、これでは台なしということになってしまいます。

カロリー不足の達成に向けて

young handsome man doing cardio exercises with treadmill in gym with dumbbell fitness health club
LuffyKun//Getty Images

摂取カロリーより消費カロリーを多くするだけ――とは言え、これは言うほど簡単なことではありません。

カロリー不足(赤字)を達成するために特に重要なのは、自分が日常的に摂取しているカロリーを把握すること。これもまた、そう簡単なことではありません。あらゆる食材の数値を調べ、栄養成分にも目を配らなければならないのですから、かなり面倒です。

幸いなことに、そのようなタスクを助けてくれる簡単なツールがつくられています。MyFitnessPalのような、カロリー計算のためのアプリもあります。このアプリの中には、何千種類もの食材や食品に応じたカロリー含有量のデータベースが組み込まれています。自分が食べた量さえ間違わなければ、計算はすべてアプリにお任せです。

いちいち記録するのは性に合わないという人は、カロリーカットのための方法は他にいくつもあるので、それを覚えておくと良いでしょう。まずは間食を控える、ポテトチップスの代わりにサラダを食べるなど、シンプルな食習慣を取り入れるだけでストレスを感じることなく摂取カロリーを減らせます。

重要なのは、自分が何を摂取しているのかに着目することです。加工食品を食べることで、より多くのカロリーが体内に取り込まれるという研究結果があります。つまり、スムージーを飲んだ場合、生のままのフルーツを食べるよりも、より大量のカロリーを摂取することになってしまうのです。また、素材を生かした、ありのままの状態の食品のほうが満腹感を得やすいことも判明しているので、「食事の量を総じて減らせる」とも言われています。

カロリー不足(赤字)の状態を長期にわたって継続しながら、さらに栄養豊富なホールフードをバランスよく摂ることで体重を確実に減らしながら、それ以上の恩恵を得られるでしょう。

カロリー不足のはずなのに、体重が落ちないのはなぜ?

ジャンクフード中心の食生活を続けていれば、長期的に見て健康を損ねる可能性が高まります。また、塩分の取り過ぎという問題も懸念しなければなりません。塩分の多い食事をすれば、その後の数日間、体重計の数値が上振れすることになるでしょう。

これは「一時的な影響」と見ることもできますが、いずれにせよクリーンなタンパク質(特に、心臓に必要なオメガ3脂肪酸を豊富に含む魚類)、じゅうぶんな野菜と果物、そしてできるだけ多くの食物繊維を含む食事を心がけることが重要となります。

なかには、甲状腺の疾患、糖尿病、うっ血性心不全といった基礎疾患のせいで減量がうまく行かないというケースもあります。最善を尽くしているのに「結果が出ない」という場合、医師の診断を受けてみるのも重要かもしれません。

「どうしても思うように減量できない」と感じたら、管理栄養士に相談を持ち掛けるのが良いでしょう。カロリー不足(赤字)達成のための効果的なプランを、一緒に考えてくれるはずです。


[脚注]

0:Calorie restriction in humans builds strong muscle and stimulates healthy aging genes

1:Dana Ellis Hunnes PhD, MPH, RD

2:Journal of Applied Physiology

3:Neil Livemore Consulting

4:Duke Health

5:MyFitnessPal

6:TC Calcuators

7:Exercise Calculator

Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health UK