※2017年10月19日(現地時間)、フロリダ州ゲインズビルにあるフロリダ大学キャンパス内での出来事。その過激さで知られる白人至上主義「alt-right(オルタナ右翼)」の指導者でのひとり、Richard Spencer(リチャード・スペンサー)氏の演説会の会場付近で「オルタナ右翼」の一員であるRandy Furniss(ランディ・ファーニス)は、反対派から揉みくちゃにされていたのでした。そこに…。
――その日、フロリダ大学では一人の男性がスピーチを行う予定でした。
その男性とは、Richard Spencer(リチャード・スペンサー)氏。堂々と人種差別的な発言を繰り返しながら、ナチスへの共感を示す過激な白人至上主義者の運動「alt-right(オルト・ライト=オルタナ右翼)」の先導者のひとり。
すると、その演説会開催のアナウンスを聞き、あたりには数百人規模の群集が集まることになったのです。そして、スペンサー氏に対する強烈な抗議とともに、周辺はかなりヒートアップ気味に…。
フロリダ大学の講堂でスピーチをする予定だったスペンサー氏。しかし、その講堂の中へ入ることができたのはスペンサー氏を含め、彼の支持者側ほんの30数名ほどでした。このスペンサー氏の行動に対する反対派のほうが圧倒的に多数となり、その場は一斉に「ノーモア・スペンサー!」などという叫びが響きわたったそうです。
さまざまなヤジが重なり合って飛び交うなか、スペンサー氏は一度は登壇。すると彼は、「素晴らしいあいさつです――歓迎ありがとうございます。話を始めてもいいでしょうか?」などと口火を切るも、そのセリフはあたりの声にかき消されるカタチに。そして結局、演説を行えないまま降壇となったわけです。
そして、「反体制派知識人」と自らを呼ぶスペンサー氏はこれに対し、「君たちは自分たちのメッセージを発した! なぜ対話をしようとしないんだ? ―― 結局、君たちは言論の自由を信じていないんだろう」などと述べながら、最後には「大きく育ちつつある運動、白人のために立ち上がろうとしている運動を君たちは卑劣にもつぶそうとしている」と怒鳴ったのでした。
そのときコートニー氏は、突然質問を繰り出したのでした。
2017年10月19日(現地時間)、フロリダ大学キャンパス内。中央左でメディアのマイクロフォンに向かって激しくコメントする白シャツの男性が、「alt-right」という言葉を普及させた白人至上主義を唱えるリチャード・スペンサー氏。Photograph / Brian Blanco(Getty Images)
このスペンサー氏演説の当日は、フロリダ大学周辺には厳戒態勢が敷かれいました。フロリダ州知事であるRick Scott(リック・スコット)氏は大学一帯に非常事態宣言を出し、ゲインズビル市内には大勢の警官隊が配置していました。
アメリカのデジタルメディア「New York Daily Mail」も、「大学周辺にはスペンサー氏を支持する者、反発する者などが大勢集まって、互いに意見を主張しあう事態になった」とレポートしています。そして、当時参加していた白人至上主義を主張するRandy Furniss(ランディ・ファーニス)氏はその反対派に取り囲まれ、激しく非難を受けていたのした。
するとそのとき、そんな場面を眺めていた一人のアフリカ系アメリカ人、Aaron Courtney(アーロン・コートニー)氏はふと以下のように思ったそうです。
「実際に、自分たちのことを嫌っている人間と話すよい機会だ…」と。
そのときコートニー氏は、
突然質問を切り出した…。
そして、Aaron Courtney(アーロン・コートニー)氏はその集団の中に加わって、Randy Furniss(ランディ・ファーニス)氏の目の前に立ちます。そして、こう問いかけたのでした。
「…なぜボクを嫌うんだ? ボクの何がいけないというんだ? 肌の色か? 歴史か? それとも、このドレッドヘアなのか?」
これを聞いたファーニス氏はこれらの質問に対して、しばらく無言を続けたのでした。つまり、すべて無視。その態度にコートニー氏は、怒りすら感じ始めていたというのですが…そこはグッとこらえて、次の行動へと移したのでした。
「彼に必要なのは、愛なのではないか!? アフリカ系アメリカ人とちゃんと接したことがないからでは?」と思ったと語るコートニー氏。思わずファーニス氏の体に腕を回してハグ。そのままファーニス氏に対し、ハグし返してくれるように訴え続けたとのこと。
この突然の行動にファーニス氏もビックリして、最初は抵抗を見せたのです。しかし、諦めずに何度も体を抱きしめてくるコートニー氏に根負けしたかのように、ファーニス氏も最終的にコートニー氏をハグし返すのでした…そして、質問の答えを口にしたのです。
すると衝撃の答えが…
白人至上主義を主張するファーニス氏のこの答えに対し、黒人男性のコートニー氏はメディアに対して次のようにコメントしています。
「あの言葉が、彼の正直な気持ちなんじゃないでしょうか。彼自身も、差別する理由が分かっていなかったんです――『たった1回のハグで、世界を変えることだってできるのかもしれない』って思いました。シンプルなことですが…」
と、語ってくれました。
それはコートニー氏自らに対して、言い聞かせいたかのようにも聞こえます。ですが…それ以上に、彼のこの無意識の行動は、この件に関して一歩二歩も踏み込んだ、大きなヒントになるかもしれません。そう望みます…。
参照:Chicago Tribune
引用:NYDailyNews.com,
Courtesy of Twitter@Politics4dum
編集者:小川和繁