少なくとも49人の犠牲者を出したニュージーランド・クライストチャーチの2つのモスク(イスラム教礼拝所)での銃撃事件。そして、その事件から1日も経たないうちに、同国のアーダーン首相は銃規制法を変えることを明言しました。
 
 アーダーン首相は3月16日(現地時間)に行われた記者会見で、「容疑者が銃保有ライセンス取得と複数銃器の保持に至った経緯については捜査中ですが、今現在言えることが一つだけあります…」と語りました。「…わが国の銃規制法が変わるということです」と続けて話しました。 
 
 悲しいことながら、米国の人々にとってもモスクでの銃撃は身近な話です。

 2018年10月には、米ペンシルバニア州ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)「ツリー・オブ・ライフ」で、2015年6月にはサウスカロライナ州チャールストンの「エマニュエル・アフリカン・メソジスト・エピスコパル(AME)教会」で銃乱射事件がありました。無差別銃乱射事件の深い悲しみと恐怖は、米国人も共有するところです。しかし、もしアーダーン首相の約束が実施をみれば、今回のクライストチャーチの事件は抜本的な銃規制改革という、米国ではまだ実現していない結果をもたらすことになるでしょう。 
 
 ニュージーランドの銃規制は他の欧米諸国と比べてゆるく、銃の保有率は国民の3人に1人と、隣国オーストラリア(8人に1人)よりも高いのです。しかし、米国に比べればまだ低水準。米国には世界の銃器の40%が集中し、その数は人口を上回ります。

Aftermath Of Mosque Terror Attack Felt In Christchurch
Fiona Goodall//Getty Images
銃撃事件が起きたモスク内の生存者の様子。

 
 ニュージーランドでは長年、銃保持率の高さにもかかわらず、銃犯罪の発生率は低く、2016年には銃による殺人事件はわずか9件でした。ニュージーランドでは武装警官の数も少なく、ボディガードがつく政治家は首相のみ…と、実に「安全な国」として知られています。 
 
 また、ニュージーランドでは米国と異なり、銃所有者には身元調査と銃器についての講義受講が既に義務づけられています。しかし、政府はすべての銃器の登録を法制化してはいないのです。

 今回のモスク襲撃事件を受け、議員たちは犯行に使用されたのと同じ半自動式拳銃の禁止について議論しています。アーダーン政権は、同年3月18日の閣議で銃規制改革について協議…同国の警察協会は、銃登録制度の導入を呼びかけました。 
 
 隣国オーストラリアも、銃による殺人を減らすための具体的な計画を打ち出しています。

 1996年に起きた銃乱射事件を受け、同国は半自動式拳銃の保持を非合法化し、銃器の保持には正当な必要性があることとしました(例えば農家や狩猟家はOKですが、自己防衛目的の所持は認められません)。政府は国民から銃を回収し、多くを破壊しました。法制度の改正後の銃による自殺者数は80%近く減り、2014年のシドニーのカフェでの事件まで、18年間にわたって銃乱射事件は起きていませんでした。 
 
 今回の事件で多くの人々の命を奪った「銃」に対して、ニュージーランド政府は平和な国のイメージともに、実情での平和を保つためさらなる改革案が出てくることでしょう。 
 

 
 

From Esquire US 
Translation / Keiko Tanaka 
※この翻訳は抄訳です。


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