ロシアからの攻撃が続くウクライナでは、国民のうち1000万人以上が住む家を失い、何千人もが命を落としています。さらにユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会によると、「少なくとも53の文化遺産がロシア軍によって破壊された」と報告されています。

ユネスコの文化担当事務局長補エルネスト・オットーネ・ラミレスさんは記者会見で、「人類の遺産が危険にさらされている」と危機感をあらわにしています。被害を受けているのは宗教施設のほか歴史的建造物、博物館、記念碑など。ユネスコの広報担当者はアメリカの公共ラジオ放送『NPR』に対し、「今後もその他の遺産が被害に遭う恐れがある」と述べていました。

西部の都市リビィウ(リビウ)の「歴史地区」を含め、ウクライナでは7カ所が、ユネスコの世界遺産に指定されています。リビィウではロシアの攻撃に備え、市民が複数の文化遺産を保護するためビニールシートで覆うなどの対策を施していました。

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リビィウ市中心部にある像を保護するための作業をする人たち、2022年3月3日撮影。

これまでに被害が確認されているのは、ナチス・ドイツによってユダヤ人数万人が殺害されたホロコーストの追悼施設のひとつ、首都キーウ(キエフ)にあるバビ・ヤール・ホロコースト・メモリアル・センターなど。

バビ・ヤールが攻撃を受けた後、ユダヤ人であり、ホロコーストで亡くなった親族もいるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、次のようにツイートしています。

「バビ・ヤールの同じ場所に爆弾が落とされても世界が沈黙するなら、(戦後およそ)80年間、『二度と繰り返してはならない』と言ってきたことに、何の意味があるのでしょうか?」「歴史が繰り返されています」

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ロシア軍の砲撃で破壊された、ハリキウ(ハリコフ)郊外にあるドロビツキ・ヤール・ホロコースト追悼施設の「メノラ記念碑」2022年3月27日撮影

ユネスコの世界遺産委員会の次回の会議は、2022年夏にロシアのカザンで行われることになっています。ウクライナのオレクサンドル・トカチェンコ文化相は、会議の予定変更を求めており、メッセージングアプリの『テレグラム』の投稿でこう述べています。

「通る道にあるすべてのものを冷笑的に破壊するロシア連邦は、会議の主催者であっても、参加者であってもなりません」

トカチェンコ文化相はまた、ハーグ諸条約とジュネーブ諸条約に違反しているロシアは、ユネスコから除名されるべきだと訴えています。ロシアとウクライナはどちらも、武力紛争が発生した場合の文化財保護を目的に1954年に定められたハーグ条約、そしてジュネーブ条約の締約国です。

ユネスコによると、ジュネーブ条約によって定められた「ブルーシールド」と呼ばれる特殊標章が付けられていれば、その文化財は保護の対象であり、それを攻撃することは戦争犯罪に当たるということ。

つまり攻撃した者は、その行為に対して責任を負うことになるわけです。

Source / TOWN&COUNTRY

From: ELLE JP