記事のポイント

  • 東アフリカ大地溝帯(EARS)は、ヨルダンからモザンビークにかけて広がる世界最大級の地溝(地殻の裂け目)です。
  • 長年、地質学者たちは「なぜEARSが亀裂に対して典型的な垂直方向ではなく、平行方向に変形をするのか?」と謎に思っていました。
  • バージニア工科大学の科学者たちは、その答えがアフリカのスーパープルーム(地中深くからの溶岩と熱の上昇流)と、その北上するマグマの流れにあると考えています。

バージニア工科大学が
長年の謎を解明

東アフリカ大地溝帯(East African Rift System:EARS)は、アジア南西部のヨルダンから東アフリカのモザンビーク周辺に広がる、全長4000マイル(約6400キロメートル)に及ぶ大陸の地溝です。この地溝は、ヌビア(スーダン北部からエジプト南部にまたがるナイル川流域の地名)とソマリアのプレートが地質学的な力によって引き離された結果生まれたものであり、そのプロセスは約2500万年前に始まったとされています。

科学者たちは、「この地溝がいつかアフリカ大陸を2つに分け、新しい海を形成する可能性さえある」と考えています(ただし2つのプレートは現在、1年に約0.5インチ<約1.2センチメートル>というスピードで移動しているため、それにはしばらく時間がかかるかもしれません)。

地溝の主な特徴の一つとして、「プレートの動きに対して垂直方向に変形すること」が挙げられます。ですが、東アフリカ大地溝帯はこの法則に反しており、地溝に対して垂直と平行の両方向に変形する傾向があります。

東アフリカ大地溝帯の複雑なメカニズムを理解するためには、東アフリカの地震活動の大部分を担っているこの地溝を解明することが肝要となります。しかし何年もの間、科学者たちはこの異常な変形に対する答えを見つけることができませんでした。

そんな中、2023年3月に査読付きの科学誌『ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ』に発表された新しい論文では、バージニア工科大学の科学者たちがGPSと3Dの熱力学モデリングを使って、東アフリカ大地溝帯の内部構造を探ったことが発表されました。そしてその結果、アフリカのスーパープルーム(地中深くからの溶岩と熱の上昇流)によって引き起こされる北向きのマントル流が、地溝に平行な非典型的な変形の原因であることが判明したということ。

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Virginia Tech
いくつかの研究から得られた詳細なプレートの動きと、2つの噴煙モデルを説明する図。

一方では、リソスフェアの浮力(リソスフェアとは、地殻と上部マントルを含む地球のプレートのこと)として知られる別の地質学的な力が、さらに垂直方向へと変形を引き起こしているとされています。

共著者のタヒリー・ラジャオナリソン氏は、バージニア工科大学のプレスリリースで次のように述べました。

「マントルの流れが、東西方向、つまり地溝に対して垂直な方向への変形を引き起こしているのではなく、地溝に対して平行な北方向にあたる、変則的な変形を引き起こしている可能性があります。

この調査では、『リソスフェアの浮力が地溝を動かしている』というこれまでの考えを確認しましたが、『地溝の異常な変形は東アフリカで起こる』という新たな洞察も得ました」

この発見は、東アフリカ大地溝帯の将来の活動をモデル化し、これらの地質学的な力がアフリカ大陸をどのように形成するかを予測するうえで、重要な役割を果たすでしょう。

source / POPULAR MECHANICS
Translation / Kotaro Tsuji
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です