記事のポイント

  • 約4400年前のサフラー王のピラミッドを修復し、研究者たちはより広範囲にわたる設計図を作成しました。
  • 研究チームは、LiDAR(ターゲットにレーザー光を照射して距離を測定する測量方法)を使用。貯蔵室として使用されていたと思われる、これまで知られていなかった部屋の存在を発見しました。
  • 次のステップは、王族の埋葬品が保管されていたと思われる部屋に入ることです。

約200年前の仮説を証明する
新たな発見

「貯蔵室」という名は通常、発見したり調査したりするのに最も心を奪われる場所…とは言えないでしょう。ですが、その部屋が約4400年前のものであり、以前は全く謎に包まれていたものだとしたら、話は別です。それに古代の王族の埋葬品を発見するチャンスは、それがどんなものであってもワクワクするものです。

エジプトの首都カイロの南部に位置するアブシールで、王の埋葬地として建設された約4400年前の遺跡であるサフラーのピラミッドを調査していました。すると研究者たちは、これまでその存在が全く知られていなかった複数の貯蔵室を発見したのです。その発表は、2023年9月下旬に行われました。

高さ155フィート(約47メートル)のこの遺跡では2019年以来、保存修復作業が続けられてきましたが、研究チームはつい最近ピラミッドの元の寸法を割り出し、時間の経過とともに劣化していた控室の平面図を明らかにしました。構造が劣化すると古い壁は崩れ落ち、新しい擁壁(土砂が崩れるのを防ぐために設ける土留め壁)に取って代わられ、内部構造の一部が変化するのです。

1836年には、ピラミッドで発掘をしていた研究者たちが“瓦礫とゴミ”でいっぱいの通路を発見。「この控室が貯蔵室に通じている可能性がある」と考えましたが、他の研究者たちはこの仮説に反対し、通路は十分に調査されませんでした。

それが今、一変したのです。

エジプトとドイツのチームが、1836年の発見が正しかったことを証明する通路と、古代のピラミッドにあった8つの貯蔵室の両方を発見しました。これらは、「王族の副葬品を保管するための部屋」と考えられています。

「貯蔵室の北側と南側、特に天井と元の床はひどく損傷していますが、元の壁の名残と床の一部はまだ見ることができます」と、研究チームはヴュルツブルク大学のニュースリリースで発表しています。

部屋の全容を把握するため、研究チームはポータブルLiDAR(ライダー)による3Dレーザースキャンを採用。これにより、ピラミッド内部の詳細な調査が可能になりました。研究チームは次のようにも述べています。

「この高度な技術によって、ピラミッド外部の広大なエリアと、内部の狭い通路や部屋の両方を包括的にマッピングすることが可能になりました。頻繁にスキャンすることで、進捗状況がリアルタイムで更新され、探査活動の永久的な記録が作成できます」

サフラーのピラミッドは、古代エジプト第5王朝のファラオたちがナイル川近くに埋葬された、人気の高いアブシール遺跡群の中にあります。他の古代ピラミッド群ほど有名ではありませんが、このネクロポリス(巨大な墓地または埋葬場所)には13の重要な建造物が見つかっているようです。

preview for Inside the Matenadaran, the Stone Fortress Protecting the World’s Most Precious Manuscripts

未知の貯蔵室の発見とマッピングは、サフラーのピラミッド調査における一歩に過ぎません。次のステップは各部屋を復元することとなりますが、研究チームは「このプロセスがピラミッド構造の歴史的発展に関する見方に革命をもたらし、この分野における既存のパラダイムへの挑戦になる」と期待しています。

そしてエスクァイア日本版の編集長は、「その部屋で宇宙との交信してたんじゃないの? おそらく今も…」とか言っています(笑)。

source / POPULAR MECHANICS
Translation / Kotaro Tsuji
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です