モータージャーナリストとして活躍し、ファッションにも造詣の深い松任谷正隆さんが、毎号のテーマに即したクルマと、それを運転するあなたが魅力的に映る装いまで、クルマのあるおしゃれな生活をスタイリング。今回は、今どきなアイビースタイルにマッチする一台です。

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Illustration / Kazutaka Tsugaoka

ひと言でたとえるなら
“羊の皮を被った狼”

松任谷(以下 松):今回はこれにしたよ。

編集Y(以下 編):ミニですか。しかもクラブマン。うーん、わかるようなわからないような…。

松:やっぱりさ、あの時代はあの時代で、今に平行移動するのは難しいんだよ。

編:なるほど、あの時代に“アイビー”に似合うクルマといったら?

松:いわゆる日本のアイビーのことだよね? 当時流行した。

編:もちろんそうですよ。なにせメンズクラブですから。

松:おっ、今回はやたら自信満々じゃないか。

編:何を言ってるんですか。アイビーを流行らせたのはメンズクラブですよ。ご存じないんですか?

松:うーん、生まれてもいないやつに言われたくないなあ。しかも俺、当時からの読者なんですけど…。

編:確かに、松任谷さんのファッションにはアイビーの片鱗がありますよね。うんうん。

松:なんか上から目線だなあ。まあいいけど。

編:言いたいことはわかりますよ。本場のアイビーはアイビー・リーガーのことだけど、日本ではファッションとして捉えられてしまった、と。

松:なんだ、知ってるんだったらいいんだよ。メンズクラブもそういう啓蒙をしていたからね。なんかちょっと複雑なんだよな。

編:でも、そこで独自のファッションが芽吹いたと言ってもいいわけですよね?

松:まあね、そこがファッションというか、流行というか、もっといえば文化の面白いところなんだけどね。

編:で、松任谷さん的に当時似合うクルマを挙げるとしたら?

松:日本的に、と考えるなら、俺なら「スカG」かなあ。

編:日本車ですか…。

松:そうねえ。やっぱりアイビーは基本、学生ファッションだからさ。親のおさがりでなければ、死ぬほどバイトして買えるクルマとしては、このあたりが限界だったんじゃないかな。

編:ただのおっさんクルマではなく、どこか羊の皮を被った狼みたいな?

松:おっ、その言葉もずいぶん古いぜ。当時のイギリスフォードがコーティナにロータスのエンジンを積んで、ロータスで作っていた「ロータス・コーティナ」あたりがその言葉の起源だと思っているんだけどさ。

編:1960年代初め、ですかね。

松:あのクルマもアイビーにはぴったりだよね。基本はいいところの大学だからお坊ちゃんで、でもどこかやんちゃで、外見は人と同じようでも中味は違うという、ね。

編:スポーティでないと、ですもんね。

松:そうだねえ。アイビーの基本はスポーティだよね。で、それを表に出すのではなく、内に秘めているような。どこかインテリの香りがしないとね。

編:で、今だとミニですか…。しかもクラブマン。このところ5ドアばかりになっちゃいましたよね。ちょっとおっさんぽくないですか?

松:確かになあ。片側だけに小さいドアの付いているやつのほうがムードだったけど、使いやすさを考えるなら断然こっちだよな。

編:ま、だけどミニという選択は、親のおさがりっぽくもないし、価格的にもスライドさせていけば当時のスカGあたりの感覚になるんですかね。

松:爽やかだろ? 若々しいというか。それでいてちょっとだけ頑固。

編:アイビーのファンは頑固だったんですか?

松:日本のアイビーファッションは基本形が割合決まっているから、それぞれがそのなかで独自性を出そうとするだろ? そうするとどうしても頑固になるよね。

編:なるほど、どうりで…。

松:なんだよ、その顔は。とりあえず乗るぜ。

編:何かいい感じですね。フロントスクリーンが立っていて、本当に独特ですよね。ガラスルーフがこんな前まで来るんだ…。これだとサンルーフの意味がありますよね。それとこれ、ガソリン車ですか?

松:アイビーにディーゼルはなんか似合わないと思ったんだよ。さて、走るよ。どう?

編:すごく締まっていますね。結構揺すられるけど、独特の安心感があります。ショックの角が丸いからかなあ。それとボディがオイスターケースのようでもあります。

松:初代とかはこのハンドリングが微蛇でも過敏でね。ゴーカートフィーリングはいいけど、長距離はごめん、というクルマだったんだよ。でも今はハンドルの据わりもよくなって、しかし一旦パッと切ればくるりと曲がるような、あのフィーリングもちゃんとあるでしょ?

編:でも乗り味はいま流行のセッティングとちょっと違うような…。

松:そこがポイントなんだよ。我が道を行く、的なね。BMWがこの味を残したのは本当に素晴らしいこと。ミニに対する敬意以外の何物でもないよ。

編:なんだか、アイビーファッションと通じるものを感じるようになってきました。スタイル、ですもんね。

松:カラーもオプションも充実しているからね。自分だけのミニができる。個人的には昔あったロールス・ロイスの塗装、内装を使った「ミニ インスパイアード バイ グッドウッド」みたいなクラブマンがあったらいいなあ。

編:渋いところ行きますねえ。大人のアイビー。それ、僕も欲しいです。

松:高いよ。きっと。

編:…。

 
>>>会話のなかで登場したクルマたちをみる!

MINI COOPER S CLUBMAN

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インテリな顔して中身はやんちゃな
アイビー・リーガーのような一台

 小さくて個性的であることをウリにしていたMINIですが、今は実用性を重視したモデルの販売比率が高まっています。しかし、実用一辺倒でないところがMINIの最たる魅力です。なかでもミニ クラブマンは、全長を伸ばしてシューティングブレークに仕立てつつ、ボディ後部に観音開きのリアゲートを備えるなど、MINIらしいおしゃれさを忘れていません。パーソナル感と多機能性が見事に調和され、”個性”以外の付加価値が得られます。
 

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 ボディカラー、内装パネル、シート表皮の素材や色など、多彩なバリエーションから自分好みに選んで仕立てることができます。

おしゃれで知的で、利便性もあり!

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観音開きドアはリモコン操作やリアバンパー下に足をかざして開けることも可能です(右側のみ、オプション)。

 
♢MINI COOPER S CLUBMAN
404万円〜(税込)

お問い合わせ先
MINI カスタマー・インタラクション・センター
TEL / 0120・3298・14

NISSAN SKYLINE GT

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ヤングカップルが憧れた「愛のスカイライン」

 2017年に生誕60周年を迎えた通称ÒスカGÓですが、そのなかでもいまだ人気を集めるのがÒハコスカÓことC10型です。典型的なセダンですが、ボディサイドに刻まれたサーフィンラインによって、スポーティな印象が際立ちます。レースでも活躍したGT-Rとともに中古車はプレミアものです。

FORD LOTUS CORTINA

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ロータスがチューンを手がけた本格スポーツモデル

 一見すると癒し系のファミリーカーという雰囲気が漂いますが、その心臓部にロータスが手がけたパワフルなエンジンを搭載したホットモデルです。1960年代のモータースポーツシーンを席巻し、ハコスカと同様に”羊の皮を被った狼”と呼ぶにふさわしいパフォーマンスを披露していました。


Masataka Matsutoya

1951年、東京生まれ。音楽プロデューサー、作曲家、アレンジャーとして活躍。モータージャーナリストとしても日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、「CAR GRAPHIC TV」のキャスターと多彩に活動中。


Photograph / Katsunori Suzuki Text / Masataka Matsutoya, Koji TakahashiEdit / Satoru Yanagisawa