スペイン・ナバラ州エステーリャのSt. Michael(聖ミカエル)教会にある16世紀に作られた木製の彫像が、「素人の業者の手によって勝手に塗り替えられる」という信じられないことが起こりました。
Courtesy of ArtUs Restauración Patrimonio
Navarre's Ecce Homo
その彫像は、聖人サン・ホルヘ(聖ゲオルギオス)がドラゴンを退治する雄姿を表現したとされる作品です。そしてこのたび、教会は地元の業者にクリーニングを依頼したところ…この結果に。
現地メディア「EL PAÍS」によれば、「依頼を受けた業者が、勝手に修復を試みてしまった ―― 修復ではなく、あくまで掃除を依頼した」というのが教会側の主張になります。
ご覧ください!
元の絵の具の層は見事に削り取られ、鮮やかな塗料でポップな印象へと全体が塗り替えられているのです…。そうしてここに、500年という時の積み重ねによる重みと面影は消え失せる姿となったのです…。それはもう、アニメの主人公にでもなりそうなほど、軽快な表情に…。
今回の騒動に対してスペイン芸術保護協会(ACRE)は、「これ以上、私たちの文化遺産に対する攻撃を許すわけにはいきません。文化遺産は危険に晒されています」と、怒りをあらわにしています。
また、エステーリャのレオス市長は「ガーディアン」紙の取材に対して、「ナバラ州政府も町の自治体も、何も聞かされていませんでした…」と語っています。
ピカソやベラスケスを生んだ芸術の国、スペイン。「芸術への価値」に造詣が深い国だけあって、今回の“大きな損失”は非常に残念な結果となっています。しかしながら、本当の経緯はどうなのでしょう。実際に教会は、「修復」ではなく「掃除」として依頼したのでしょうか? と思う方も少なくないのでは?
実はスペインでは、2012年にも同様の事件が起こっています…。19世紀に描かれたというキリストのフレスコ画が、一般の女性信者によって勝手に修復されていたのです。その結果、崇高なるキリストの表情は、まるで「モンキー」のように…。
このとき、修復を行ったのは敬虔な信者…。つまり、「自らの手で修復したい」という強い思いの駆られる可能性は高いことが理解できます…。ですが、今回は業者とのこと。仕事として、そんな無茶なことをするのでしょうか? それとも、その担当者が熱心な信者だった…という可能性もないわけではありませんが。
いずれにせよ、いまとなっては「藪の中」と言えるでしょう。
レオス市長は今後専門家を集め、再び元の状態に戻せるかどうかを検討するとのこと…。ぜひとも、この間違った復元から元の状態に戻れること…そしてさらに、正しい復元がなされることを願っています。
「修復」で変わり果てた16世紀の彫像の姿をご覧ください。
さらに「ザ・ガーディアン」紙による、2012年の「モンキー・キリスト」事件の動画もご覧ください。
Source:CNN「'Navarre's Ecce Homo': Another church in Spain falls victim to a well-intentioned restorer」
Courtesy of ArtUs Restauración Patrimonio
Edit / Lumiere SATO, Kaz OGAWA