発見された事実とは?

  • レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作 モナリザから採取した油絵具の微細な粒を分析することで、科学者チームはダ・ヴィンチが使っていた油絵具の混合に関する新たな手がかりを発見しました。
  • 油絵具の混合物には、酸化鉛パウダーの存在を示すと思われる珍しい化合物「プランボナクライト(塩基性炭酸鉛)」が含まれていました。
  • このパウダーを加えることで、厚く塗られた油性塗料を迅速に乾燥できるようになったのです。

ダ・ヴィンチの絵の具は
何世紀にもわたって使われる
優れた配合だった

私たちはレオナルド・ダ・ヴィンチを、世界的そして歴史的に有名なイタリアの画家として知っていますが、ダ・ヴィンチに化学者としての一面もあったことをご存だったでしょうか。

今回のモナリザに関する新たな研究は、ダ・ヴィンチが新しいタイプの油絵具を調合し、それが何世紀にもわたって油絵具の標準的な混合となって用いられてきた可能性があることを明らかにしました。

絵画の右上隅から取り出された本当にわずかな油絵具の微粒子を分析することで、研究チームはその物質の化学的な構造を解明しました。その結果は、アメリカ化学会より発行される学術雑誌『Journal of the American Chemical Society』誌に掲載された論文の中で、「鉛を多く含む強鹸(けん)化油とセリュサイト欠乏鉛白色顔料の特異な混合物」として研究チームが発表しました。

中でも大きな注目を集めたのは、「プランボナクライト」の存在でした。これはアルカリ性環境でのみ見られる安定した珍しい化合物です。「レオナルドは恐らく、モナリザの木製パネルを覆うのに適した厚い絵の具を調合するため、『油を高負荷の酸化鉛II(PbO)で処理したのではないか?』と考えることができる」と論文には記されています。

酸化鉛という成分が使われていたことも衝撃です。AP通信で「プランボナクライトを使用するというのは、ダヴィンチならではの特徴と言えるでしょう」と称賛したのは、研究の筆頭筆者でありフランス国立科学研究センターの化学者であるヴィクター・ゴンザレスでした。そして、「これが化学的に確認できたのは、歴史上初めです」とも述べています。

研究チームは「高角度分解能放射光X線回折と顕微フーリエ変換赤外分光法」を用いて、その組み合わせを突き止めました。シンクロトロン装置は粒子を加速させることができ、研究者はX線を使って化学組成を突き止めることができたのです。検査に使われた塗料の微粒子は、作品の下地層にある髪の毛ほどの小さな点から採取したものです。

ゴンザレスによれば、「恐らくレオナルドは、オレンジ色の酸化鉛の粉末を亜麻仁油かクルミ油に熱で溶かしたのでしょう。その結果、絵の具の厚みが増し、乾燥も早くなったと考えられます。それは、非常にきれいな蜂蜜のような黄金色の油です」とのこと。次のようにも語っています。

「『作品にさまざまな絵の具を混ぜることで、レオナルドは芸術に対する現代的なアプローチを世に示してきた』と考えています。彼は実験が好きな人で、彼の絵はそれぞれが全く違う技術を用いて描かれています。モナリザの下地層に特別な技法があることは、とても興味深いことです」

モナリザの下地層を厚くし、そして素早く乾燥させるためにこの酸化鉛の粉を使うことは、1500年代初頭には新鮮なアプローチだった思います。ですが、今では一般的な手法となっています。ゴンザレスによれば、「レンブラントの絵には、17世紀までプラムボナクライトが使われていた」とのこと。

「このレンブラントと重ねれば、ダ・ヴィンチのレシピが何世紀にもわたって受け継がれてきたことを物語っているのではないでしょうか。まさに、それは“非常に優れたレシピ”だったというわけです」

source / POPULAR MECHANICS
Translation / Yumi Suzuki
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です