本誌の最新号「メンズクラブ4月」では、ワールドスナップを特集しています。
去る1月に、イタリア・フィレンツェで行われたメンズファションの総合見本市であるピッティ イマジネ ウオモへ取材に飛んだ本誌編集部員。そこで彼らは、その着こなしの変化に驚き、歓喜したのでした。
というのも、今回のピッティ会場に世界中から集まった伊達男たちは、“真面目で正統”なスタイルを着こなした洒落者たちで溢れていたからなんです。まさに現在のファッションは、トラディショナルのエッセンスとした正統スタイルがトレンドとなっている…ということを目の当たりにしたのでした。
でも、それは昔と同じものというわけではありません。そこにあるのは、決して懐古主義的なトラッドではないのです。まさに生きているトラッド、成長し続けるトラッド。現代の息吹がシルエットやレングスに注がれ、大人へと変容しているのでした。それらのスタイルはまさに、いま「メンズクラブ」が提案している“大人トラッド”なわけなのです。
そこで、そんな“大人トラッド”に不可欠はアイテムとは何か?考察してみました。皆さんも、ぜひとも参考にしてください。
普通なようで、実はちょっと違うネイビージャケット
最近、なぜか「ブレザー」が気になるのです。ブレザーは、皆さんご存知のアイテムかと思います。ネイビージャケットにボタンがメタル製のもの。その起源は、あまりはっきりしていません。イギリス生まれだということはわかってるのですが…諸説あるのです。有力と言われている説は2つ。
ひとつは1830年代(あるいは60年代説もある)に、英国の軍艦ブレイザー号に女王陛下が乗船することになり、失礼に当たらないようにと艦長がメタルボタンをつけた紺サージの上着を乗務員たちに即席で着せたのが始まりという説。そしてもうひとつは、1877年に英国のケンブリッジ大学とオックスフォード大学の間で競われたボートレースで、ケンブリッジ大学の学生が真紅のジャケットを一斉に放り投げ、それがブレイズ(=炎)のように見えたのがはじまりという説になります。他にもいろいろあるのですが、いずれも決め手がないようです。
そうして日本では60年代に、第一次ブレザーブームが起こります。その頃、若者の間でアイビールックが流行しました。そのアイビーの流れもあると思うのですが、どうも1964年の東京オリンピックも関係しているのでは…と思うのです。開会式で赤いブレザーを着こなし闊歩する日本選手団たちの勇士は、同時誰の眼にも誇らしく見えたに違いありません。彼ら彼女らがビシッと着こなしブレザーを自らも着こなすことで、自信と逞しさを身に着けようとしていたのではないでしょうか。
折しも今年はオリンピックイヤーであり、その次のオリンピックは東京での開催となります。ふたたびブレザーが注目されるのでは…と、期待してもいるのです。とはいえ、こちらの見解はあくまでも願いでもあるのですが…。しかし、そんな考察を抜きにしてもイタリアのピッティ会場の実例があるように、世のなかの着こなしは正統派トラッドスタイルへの再注目の兆しが明確にあるのです。皆さんもそんなブレザーが気になってきませんか。
そんななか見つけたブレザーが、ランズエンドの『メンズ・ストレッチ・ネイビー・ブレザー』です。このランズエンドのブレザーは、快適ストレッチコットン・ブレンド素材を使用し、さらにフロントボタンはメタル性ではなく、フロントの3つのポケットはすべてパッチポケットというディテール。これこそ、時代の最先端をいく現代版ブレザーそのものではないでしょうか?
これならウールパンツと合わせ、ビジネスに着用しても大丈夫。しかも、着用したまま長時間の会議に出席しても、疲れないこともないのでは。さらに、チノやデニムとコーディネイトして、休日の大人トラッドスタイルも完成するのです。ストレッチ素材なのでジャストサイズを選び抜いても窮屈なこともないので、心地よくスタリッシュなスマートスタイルがこなせるのです。皆さんも、ぜひともこんなネイビーブレザーに注目してみてください!
ジャケット「メンズ・ストレッチ・ネイビー・ブレザー」2万5900円(ランズエンド)
伝統がもつ泥臭さを軽やかに表現した春先アウターにも注目を
カジュアルの領域でトラッドと言えるのが、こんなハンティングジャケットやフィールドジャケットではないでしょうか。かつてのトレンドだった時代は、70年代でしょうか。この頃、アメリカではBack To Nature運動が高まって、その前後にはアウトドア関連のウエアやグッズが多く登場してきました。それを組み合わせたファッションスタイルがヘビーデューティーというキーワードでムーブメントを起こしました。丈夫で機能性が高く、耐久性に優れたアイテムを総じてヘビーデューティーと呼んでいました。そこには、男らしい泥臭さ・汗臭さがあったのでした。
そんなヘビーデューティー・ギアを彷彿とさせるギア・スタイルも、今季注目を集めています。が、こちらもかつてとまったく同じものではありません。イタリア人が実践しているように、ライトウエイトでスマートな印象を放つヘビーデューティなアイテムが今年の気分なのです。そこで、おすすめしたいのがこんなハンティング・ジャケット。ヴィンテージ風の素材とディテールを持ちながらも、一枚仕立てなので非常に軽やか着心地です。ジャストサイズを選んでシルエットも細身に着こなせな、大人トラッドを実践できることでしょう。定番的なデザインが基本となっているので、このままネイビージャケットやブレザーの上に羽織っても◎。本物を知る男のスタイルとなるに違いありません。
コート「メンズ・クラシック・ハンティング・ジャケット」1万7900円(ランズエンド)
定番のチノだけど、その先細シルエットが最先端のスタイルにしてくれる
60年代のアイビールックの定番ボトムスといえば、このチノになります。そもそもチノとは、「チノクロス」と呼ばれる綿やポリエステルの生地で仕立てたパンツである、「チノクロスパンツ」と呼んでいました。それを略して「チノパン」「チノ」「チノーズ」と呼ぶようになったのです。
「チノクロス」という素材は、元々19世紀中頃に英仏の軍隊の制服に使われた生地。作業着にも使われていることも多く、主にカーキ色、茶色またはそれに類する色のものが多かったのです。そんな用途で使用されたアイテムなので、かつては動きやすい太目のものが多かったのです。アメリカンカジュアル全盛期では、日本でも定番として認知され、誰もがはきこなしていたのです。ですが、現在のようにイタリアを中心としたヨーロッパのスタイルがトレンドを牽引する時代になると、マイノリティなアイテムとなっていったのです。
ですがここ数年、イタリアンブランドのチノが人気に。なぜなら、こちらのチノはアメリカンブランドのチノに比べ、そのシルエットが実にスマート。体型をカバーしつつも、その着こなしは現代的なバランスを保つよう、そのシルエットは膝下から裾に掛けてがすぼまったテーパードが施されたフィットするチノなのです。
それを今度はアメリカンブランドは取り入れ、テーパードされたチノが世界的に定番化していくことになったのです。そんな一本がこのチノです。
こちらはさらに股上も現代風に浅めに、そして後股上はしっかり取ることで安定したはき心地をキープする立体的な仕様にも…。腿から膝にかけては、なだらかに無駄をなくしたシルエットが映え、膝から裾に向かってはすっきりとシェイプすることでシャープな印象を与えてっくれるのです。
軽快な“今どき”を表現したこんなチノも、この春注目となるでしょう。もちろん、ネイビージャケットやブレザーにもばっちりの相性でモダンなコーディネイトに仕上げてくれるはず。しかも、素材は伝統的なチノによるものなので、そこへの愛着はひとしおのはずです。
パンツ「メンズ・ライトハウス・チノ/プレーン/スリムフィット」6900円(ランズエンド)
爽快なニュアンスのなかにある、確かな存在感が魅力のニットタイも気になります!
「映画『卒業』(1966年)を観たことはありますか?」と聞いても、2016年の現在、手を挙げる人は少ないでしょう。でも、ダスティン・ホフマンが演じる主人公ベンジャミンのアイビールックは、観ていてとても参考になるはずです。ストーリー上、彼は東部の大学を優秀な成績で卒業した想定になっているので、まさにアイビーリーガーだったのでしょう。
そんな彼の着こなしをチェックすると、ニットタイがもつ魅力も理解できるはずです。ニットタ イはふっくらした弾力に富んだ編み目で袋状につくられ、中に芯地がないもの。形は大剣の先がスクエアにカットされ、太陽にかざすと素材が透けるほどゆるやかに編まれています。
そう、ニットタイにはエレガンスを表現しようとしているのですが、そこにはスポーティでヤンチャな遊び心も感じさせる、至極多面性をもったドレスアップアイテムなのです。なので、当時の学生たちにも好まれたのでしょう。つまり、ニットタイというアイテムは当時から大人トラッドなアイテムだったと言えるのです。単に上品なだけでなく、時代の先端をいくカッティングエッジなニュアンスを有しているのです。
ならばニットタイは、今こそコーディネイトに適したアイテムではないでしょうか。ぜひとも皆さん、試してみてください。きっと「好印象」スタイルに仕上げてくれることでしょう。
ネクタイ「メンズ・ブレトン・ストライプ・ニット・タイ」9900円(ランズエンド)