「ポルシェやBMWなどいろいろと持っていますが、キャンプに出るときはSUVというのが普通でした」と、オレゴン州ポートランドの自宅で話してくれたのは、起業家として知られるブロック・キーン氏です。

スポーツカーを
キャンプに使おうなんて、
考えたこともありませんでした

 そもそもは、購入したルーフトップ用のテントが予定していた「レンジローバー」のルーフレールにうまく合わなかったことがきっかけでした…。困ったキーン氏は、2004年式のポルシェ「911 カレラ4S」にそのテントを設置して、お店から自宅へ持ち帰ることになりました。

 帰宅したキーン夫妻ですが、このテントが積まれたポルシェを改めて眺めてみると、「実はクールかもしれない!?」と気がついたのです。2人はこの楽しいクルマでの活動の記録として、Instagramのアカウント「@996roadtrip」をつくりました。すると、瞬く間にフォロワー数は増え、「あえてスポーツカーで、キャンプへ出かける」という流行を生む結果となったわけです。

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このクルマ、実はクールかもしれない!?

 そうは言ってもスポーツカーですから、トヨタ「4RUNNER」(日本名は「ハイラックスサーフ」)やジープ「ラングラー」といった専門的なクルマのように、どこまでも遠出できるわけではありません。実際、大自然に囲まれた曲がりくねったワイルドな道を苦労して進んだ経験のある方は、一体どれほどいるのでしょうか?

 「トラックやSUVなどの大型車のルーフトップにテントを乗せて出かけるのは、格別の楽しみがあります。ですが、そこまで大型ではないクルマでそれをやってみると、これもまた思いのほか楽しいということを発見したのです」とキーン氏は話します。

 アメリカ国内において、絶景を楽しめる道の多くが州立公園や国立公園の中にあることを考えれば、キーン氏の取り組みは理にかなった話かもしれません。おまけに、「911 カレラ4S」は車高が低いことでテントへの出入りも簡単となり、テントの設営もよりシンプルで済むというメリットもありました。

ポルシェと一緒にキャンプって本気?「911」をキャンピングカー仕様にした男性
GRANT HINDSLEY

とはいえ…問題が
ないわけでもありません

 当然のことながら、キーン氏のポルシェのようなパフォーマンスカーでキャンプに出かけようとすれば、それ相応の課題も生じます。走行時やキャンプ中、クルマの屋根はどれだけの重さに耐えられるのか、その積載重量の限界を知っておく必要があります。

 キーン氏の所有する「911 カレラ4S」の場合(そして、他の新型ポルシェの場合も同じく)、走行時の最大積載重量は約75kg、停車時で約272kgとなっています。

 さらに「911」(以降は「911」で略称)のようなスポーツカーには、懸念事項は他にもあります。

 まずは、収納力の低さという問題です。これに対してキーン氏は、「私たちの場合、バックパックに荷物を多く詰めることもあり、収納力の低さはそこまで大きな問題にはなりませんでした」と語っています。

 「それにポルシェでキャンプに出るからと言って、グランピングで満足するつもりは毛頭ありませんでした。あくまでも、ミニマリストの姿勢でキャンプに出てみようというのがそもそもの出発点でした。つまり、必要な荷物はしっかりと積むのが自分の流儀です」と、キーン氏は語っています。

ポルシェと一緒にキャンプって本気?「911」をキャンピングカー仕様にした男性
GRANT HINDSLEY

 そんなわけでこの数年、キーン氏はキャンプ装備を一新させました。

 まずは小型のキャンプ用チェア、フラットに折り畳めるファイヤーピット(焚き火台)、ポルシェ「911」のフロントトランクに収まるサイズのバックパック、できるだけ美味しいフリーズドライ食品などなど…、着々とそろえていったのです。

 結果、助手席に妻を座らせ、後部座席には体重50ポンド(約22kg)の愛犬ルーシーを乗せても、4泊程度の旅行であれば「911」の積載量でも十分です。しかし、「それよりもさらに長期のキャンプに出ることもある」とキーン氏は言います。

 純然たるスポーツカーだけを比べた場合、同クラスの他のクルマと比べて、ポルシェの収納力は優れています。とは言え、ものすごくトランクが狭いアキュラ「NSX」にキャンプ用具を詰める様子もキーン氏は披露してくれており、「必ずしもポルシェでなければならない」、というわけでもなさそうです。

存在しない画像

運転にも特別な注意が必要

 舗装された道路から野山の道へ飛び出す際は、道路状況に注意を凝らす必要があります。

 キーン氏の場合、クルマの行く手を遮(さえぎ)るものがないか、はるか前方まで確認しながら進みます。彼の「911」の車高は純正モデルよりも約2.5cm低いため、視界は特に重要となります。路面状況によっては大きな不利ともなり得る低車高ですが、ルーフテントの設置のためなら低重心が有利に働くとも言えます。

 さらに彼の「911」は四輪駆動ということで、後輪駆動のモデルよりも機動力が高いというのも利点です。そして、タイヤにも細心の注意を払っています。キーン氏が選ぶのは障害を物ともしないオールシーズンタイプのタイヤです。ロングドライブとなることが多いキーン氏にとって、クルマのメンテナンスも怠らないことが極めて重要な事項となります。

ポルシェと一緒にキャンプって本気?「911」をキャンピングカー仕様にした男性
GRANT HINDSLEY
ポルシェと一緒にキャンプって本気?「911」をキャンピングカー仕様にした男性
GRANT HINDSLEY

 インスタ映えばかりを狙った超高級車が氾濫する世界にあって、キーン氏のこのようなアプローチは新鮮にも映ります。

 「実際にクルマを走らせ、キャンプに行ってみてください」と、キーン氏は提案します。「道中はものすごく楽しいですし、キャンプで過ごすちょっとした非日常も、たまにはとても良いものです」とのこと…。

 そろそろ結論です。

 車高の低いポルシェ「911」でキャンプに出ることができるのですから、あなたのクルマでもきっと可能というわけです。ぜひ愛車と一緒に、アウトドアライフをお楽しみください。

Source / Road &Track
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。