今号よりリニューアルした自動車評論家・五味康隆によるクルマ企画。高額商品であるクルマだが、クルマがあればいつもの日常はより豊かに、楽しくなるもの。 そんな未来の買い物を賢くこなすために気鋭の評論家が指南!第1弾は待望の小型ポルシェを紹介。
NO CAR, NO LIFE
まがいもなくポルシェだと胸を張れる!
新たに登場したSUV、マカンに乗り、30m走っただけでポルシェだ!と納得した。質実剛健。ドイツ車を象徴する言葉として使われることが多いが、ポルシェほどその言葉が当てはまるブランドはない。
ドアはドシッとした重厚感を備えながらも、スムーズな操作感。この両立には、緻密さを極める製造精度が必要。また、運転席に座った瞬間に得られるクルマとの一体感にも注目。これもまた締めつけ感を出さず、体の要所をシートが的確に押さえつける絶妙な造りのなせるワザ。さらに、運転視点は高く見晴らしのよさを備えつつも、見えすぎることがなく、視覚的な包まれ感が適度にあって安心できるのが見事。
極めつきは操作感。ハンドル、アクセル、ブレーキが若干重めで、走行中にクルマとともに脚や手が揺れても、必要以上に操作に影響しない。言うなれば、意識して操作する以外はキャンセルされるような絶妙な味つけ。結果として、確かな手応えによる安心感と、意思どおり動く運転のしやすさまで手に入る。
この手の造りは一歩間違えると違和感につながりやすいが、そのさじ加減がポルシェのうまさ。もちろんエンジンはパワフルだし、アクセルを踏めば刺激的な加速と排気音が手に入るうえに、シフト変速はスムーズで、ブレーキの効きが鋭いなど、SUVであることを忘れさせる。その高性能を過度に意識させずに運転させるのもポルシェのすごさ。
ちなみに、カイエンと比べると、基本の乗り味は似ているが、よりスポーティな味つけがマカンで、重厚感とゆったり基調の上質な移動を楽しむならカイエンとなる。
嗜好と財布に合わせた3モデル
237馬力を発生する2ℓ直列4気筒ターボエンジンのマカン(566万720円)、340馬力の3ℓV6ターボエンジンのマカンS(661万4800円。今回の取材車両)、400馬力3.6ℓV6ターボエンジンのマカン・ターボ(917万2400円)の3モデル展開。
カイエンよりも低く短い
カイエンの弟分のイメージから小さいと思われがちだが、全幅は1923mmもある(カイエン比わずか-16mm)。しかし全長はカイエンより174mmも短い4681mm。全高は81mmも低い1624mmなので、低く身構えた迫力と存在感を備える。
正確な操作を促す造り
操作頻度が高いスイッチはハンドルまわりに。それ以外は特有の高く設定されたセンターコンソールのシフトレバーまわりに集約され、手を大きく伸ばすことなく操作が可能となり、シートのサポート性が最大現に生かされる。
【寸評】満点を与えたいほど魅力的なモデルだが、狭い道でのすれ違いに若干の緊張を強いる全幅1.9mオーバーのボディサイズにより、残念ながら実用性が4点。しかし、コスパに入れられる再販価値(下取り価格)が高いなど、モンスター級のお買い得モデルといえよう。
●お問い合わせ先/
ポルシェ カスタマーケアセンター
TEL 0120・846・911
http://www.porsche.com/japan/
Photograph/Tetsumi Hachiya
Text/Yasutaka Gomi
荻山 尚 責任編集