豊田章男氏をトップに、クルマ業界の世界的なリーダーとして躍進するトヨタ。この会社はいま、将来の“自動運転”の実現へ向けて万進しています。そして彼は、そんなよりツール化して行こうとしているクルマに対しても、かつてからもち続ける「愛」を失ったりしていません。自分がクルマに対して抱く「愛」を大切にしながらいまもなお、そして将来も、「多くの人々が、なぜクルマを愛しているか?」への探究心を見失うことはないでしょう。
TOYOTA
2018年5月、英クルマ専門誌『オートカー・マガジン』から、トヨタの代表取締役社長である豊田章男氏に対して同誌の最高賞「イシゴニス賞」が贈られました。この賞の名づけ親は、オリジナルMINIの創設者であるアレック・イシゴニス氏。豊田社長はMINIには特別な思いがあるようで、受賞を受けたときには「深い縁を感じた」とコメントしています。
残念ながら授賞式には参加できなかった豊田氏ですが、事前に収録されたスピーチのビデオが授賞式には流されました。
そのスピーチも実に素晴らしいのです。彼はこの栄誉ある賞の受賞に対し敬意を示したのでしょう、収録現場へはトヨタ製のクルマでは乗りつけたりしません。彼がロンドンに住んでいた1980年代、その当時愛用していた「MINI」で登場し、その前でスピーチを行っているのです。
その短いスピーチの冒頭では「授賞式に行けなかったこと」、そして5月中旬に行われた「メーガン・マークルさんとハリー王子の結婚式に行けなかったこと」も悔やんでいるとコメントしています。
まさに、日本を代表するトヨタの社長といった風格。スピーチの中でトヨタの自動運転車へのコミットメントについて触れ、彼が自動車業界をけん引するリーダー的な存在であることを私たちに再確認させてくれたのです。
「私にとってはこれ(MINI)は、自分の夢のすべてを詰め込んだといえるクルマなのです。ゴーカートのようで、そして手ごろな価格であり、さらにシンプルで面白い…。たとえ未来に、人々が自動運転ポッドで仕事に行くようになったとしても、このようなクルマをつくり続けることが私たちの役目だと思っています」と、豊田社長はスピーチしました。
他の大手自動車メーカーのCEOと同様に、豊田社長は自動運転への実現に向け、今後さらに精進しなくてはなりないことは間違いありません。ですが、同時に彼は初心を忘れず、クルマを愛する人々も大切に、そして励まし続けてもいるのです。
レクサス クーペ「LC500」のプレミアに参加した豊田章男氏。Photograph / Getty Images
それを証明するように、トヨタは最愛の「スープラ」を市場に復活させ、第2世代である「トヨタ86」の開発も始まっています。
トヨタの「ガズーレーシング」部門は、「FIA 世界耐久選手権」や「世界ラリー選手権」に注力するとともに、そこから派生した市販車「YARIS GRMN(日本ではVitz GRMN )」など開発・販売を行っています(Vitz GRMNは2018年6月1日より発売)。さらにラグジュアリーラインである「レクサス」に、フラッグシップクーペ「LC500」などを導入するなど、多様性と同時にクオリティへの追求も忘れないクルマづくりを実戦し続けているのです。
第2次世界大戦後のトヨタは他の日本の自動車メーカーと同様、国民総動員による経済成長へ向かって、シンプルな目標を達成しようと突き進んでいました。
そうしてその目標に向けての努力が実り、トヨタは多くの実用車を開発・販売してきたのです。さらに1960年代半ばには、さらなる高みを目指し「2000GT」というワールドクラスのスポーツカーを開発・販売することに。これらはすべて「KAIZEN」を掲げ、進化することを忘れない企業であるトヨタらしさの極みなのです。そして、そこには常にクルマへの深い愛情があったことも忘れてはなりません。そのクルマへの愛があったからこそ、これまで躍進できたと言っても過言ではないのです。
自ら熱心なドライバーであり、モータースポーツファンでもある豊田章男氏。彼は、世の中の動向が目まぐるしく変わる現在においても、「クルマへの愛」を見失ったりはしません。彼は一途に、「クルマへの愛」を抱き続けているのです。ここで「一途」と言っていますが、別に片思いだという意味ではありません。
現在クルマ業界全体が、ドライバーを必要としない自動運転のクルマ開発に勤しんでいます。それによって、今まで愛着を抱き続けていた相棒としてのクルマの未来が、まったく不透明になっている状況なのです。
これに対し、不安感を抱く(クルマを愛する)皆さんはぜひ、このトヨタCEOである豊田章男氏のスピーチをお聞きください。そこには、「クルマへの愛」を感じことができるでしょう。ちょっと安心してしまいます…。
豊田社長のスピーチの様子を是非ご覧ください。
スープラ
TOYOTA
新型スープラの日本での発表は、2019年頃ではないかと噂されています。
トヨタ86
SUBARU
トヨタがスバルと共同開発した、FRレイアウトのスポーツカーです。このクルマは、「スポーツ800(ヨタハチ)」以来となる、水平対向エンジンのスポーツカーになります。ちなみにスバルでは、兄弟車としてスバル「BRZ」が販売されました。
Vitz GRMN
TOYOTA
世界中のモータースポーツに参戦し、活躍し続けるTOYOTA GAZOO Racing。この極限の現場で培った技術と情熱を、惜しみなくクルマづくりへと注いだスポーツカーブランド、それが「走りたくなるクルマ」という言葉を掲げ躍進する「GRシリーズ」です。そこから2018年6月に、究極のスポーツモデルとして発売されたのがこの「Vitz GRMN」。一見、常温の愛情につつまれた乗用車に見えますが、実はかなり高温の愛情が注ぎ込められたホットハッチなのです。
フラッグシップクーペ「LC500」
DW BURNETT/PUPPYKNUCKLES
コンセプトモデル「LF-LC」として、2012年のデトロイトモーターショーで世界初披露されたモデルが、約5年の歳月を経て2017年3月に発売されたレクサス「LC500」。「より鋭く、より優雅」な走りを体感させてくれます。
2000GT
TOYOTA
映画「007は二度死ぬ」にも登場し、いまもなお歴代ボンドカーの人気投票で上位を誇る「2000GT」。トヨタが高みを目指し開発したこのクルマは色褪せることなく多くのひとを魅了し続け、多くの人がその復活を待っています。2018年3月に行われたジュネーブ・モーターショーでは、そのことを示唆したかのような映像も公開されています。ですが、まだまだ噂にすぎません。が、「エスクァイア・デジタル」としても復活を心待ちにしております。
それでは最後に、そんなトヨタの思いが込められた映像をご覧ください。ここに「愛されたクルマ」からのメッセージがあります。
クルマは家族の一員であり、もしくは親友でもあるんですね…。
Road and Track(原文:English)
BY CHRIS PERKINS
MAY 17, 2018
Translation / Mirei Uchihori
※この翻訳は抄訳です。
Edit / Kaz Ogawa,Mirei Uchihori