マクラーレンの「スピードテイル」には驚くべき機能がたくさん備わっていますが、今回ご紹介するパーツは、なんと曲がるんです。初めてこのフレキシブルなカーボンファイバー製エルロン(補助翼)の動画を見たときは、謎だらけで目を疑いました。

 エルロンとは、航空機に付けられていることが主で、簡単に説明すると、機体を左右に旋回させるときに使用される動翼です。クルマは地に着いており、ハンドルやタイヤで左右に旋回することができるため、この機能はついていません。

 しかし、この「スピードテイル」には、ドアの後部からテールランプまでをカバーする巨大な一枚のカーボンファイバー製クラムシェルに直接このエルロンが組み込まれています。クラムシェルの実構造は、クルマ後部に向かって変化しています。

 今回、マクラーレンのアルティメットシリーズのプログラム・マネージャーであるアレックス・ギブソン氏が、2019年3月に行われたジュネーブのイベントで私たちの疑問に答えてくれたのです。

 「カーボンファイバーの製造工程では、下型を使って複数のカーボンファイバーの層を重ねています。カーボンの織りの構造と向きをパネルの位置によって変化させることで、曲げられるようにしました」とギブソン氏は話しています。

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 2枚のエルロンは油圧作動式で、量産仕様ではモデルよりも約2.5センチ高い、約12インチまで上げることができます。また、状況に応じてマクラーレン「セナ」のリアウィングと同じくらいの素早さで上下するのです。

 さらに「720S」のリアスポイラーのようにエアブレーキとしても機能しますが、ギブソン氏によると、「エルロンは主にスピードに応じて空気力学のバランスを取るのが目的のため、個別には動かない仕様になっている」といいます。

 スピードテール開発目標の1つとして、マクラーレンは「加速性能(たったの12.8秒で0-300km/hまで)と高速の最高速度(402km/h)を達成するために、空気の中を滑らせる車を作ること」を挙げています。そのために、シャットラインとパネルギャップを極限まで軽減させました。この目的達成に一役買ったのが、フレキシブルなカーボンファイバーというわけです。

 このエルロンは一見デリケートに見えますが、ギブソンさんによると心配無用のようです。「社内で何度も耐久性テストを行い、問題がなくなるまで開発を重ねました。どのような環境、湿気、温度でも動作します」と。

 もちろん、あまり強く引っ張ったりすれば折れてしまう可能性があるので、やめておきましょう。通常の使い方であれば、問題のない耐久性です。

 エルロンは、素晴らしい車に備わった素晴らしいパーツです。しばらくは私たちを魅了し続けるでしょう。




FromRoad and Track
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。


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