1919年創立、イタリア・ミラノに本拠を置くカロッツェリア(イタリア語で馬車や自動車の車体をデザイン・製造する業者)、ザガート社(Zagato) 。

 1950年代後半のこと、フランス人実業家でありレーサーのClaude Storez氏がポルシェ「356カレラ スピードスター」をベースに、ザガート社に対して、「軽量で、よりエアロダイナミクスなポルシェ『356』の製造を」とワンオフモデルの制作を発注しました。その結果として一応は完成はするのですが、残念ながら納車されるやいなや大破…1959年2月7日にフランスで開催された“Rallye International des Routes du Nord”にて、このマシンは無残にもクラッシュ。クルマは大破し、Claude Storez氏もレース中の事故で亡くなりました。

 ではそこから、現代へと時間を一気に戻しましょう。

 ザガード社のCEOアンドレア・ザガート氏は、2015年にオリジナルのポルシェ「356カレラ スピードスター」のリザレクション(複製)に取り掛かります。そして9台蘇えらせ、販売する計画でいました。しかしながらオリジナルは、事故で大破してしまって存在してないのです。ならば、どのようにして…。

 そこで同社が行った方法は、実に21世紀らしいスタイルです。彼らは資料室をひっくり返し、デザインスケッチと写真を探す出すことになります…。

 そうして見つかった写真をベースとして、同社はその積み重ねてきた経験と知恵、そして勘から適当(的確)に…ではありません。最新の3Dレンダリング技術を駆使した正確なスキャンニングから、3次元化することに成功。そのクルマが本来持っていたサイズ感で、オリジナルのアルミ製ボディパネルを再現することに成功したのです。

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 つまりザガート社は、実際に測定したり比較してみたりする対象物が存在せずとも、オリジナル車を反映する正確なボディーパネルを生み出すこと可能である…と証明したわけです。

 自動車専門ブログ&動画配信サイト「Petrolicious(ペトロリシャス)」では、2019年4月16日公開の記事でこの取り組みを紹介しています。そこでは、ザガード社のCEOアンドレア・ザガート氏によってプロセスを説明する動画も公開されています。

 このプロセスを確認することは、感動的なヒューマンドラマを観ているかのように、非常に興味深いものです。オリジナル車はすでに魂を失ってしまっていても、最新技術を用いれば、ビンテージカーのアイコンを蘇らせることができる…そんなことを目の当りにできるのです。

 ならば…次はあの伝説のクルマ、ランボルギーニ「イオタ」をぜひとも蘇らせてほしい…と思ってしまうでしょう。

 では、この世界に1台だけのポルシェ「356カレラ スピードスター」に命が吹き込まれるまでのプロセス動画、そして写真集をぜひご覧ください。



From ROAD & TRACK
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。