この記事をざっくり説明すると…
- ソフトバンクグループは、その傘下に抱えるロボットメーカー「ボストン・ダイナミクス社」をヒュンダイに売却しようとしている…と報じられています。
- その情報が真実であれば、あの有名なロボット犬「スポット(Spot)」に、新たな飼い主ができる、ということになります。
- ヒュンダイが、「歩行自動車の開発を計画しているのではないか!?」とも言われています。
旧ソビエト連邦のチェルノブイリの進入禁止区域における働きや、コロナ禍におけるソーシャルディスタンスを守らない人の監視、そして、石油採掘現場での労働など、数々の困難なミッションを果たすことで知られる人気のAIロボットが「スポット(SPOT)」です。
ボストン・ダイナミクス社というアメリカ企業が開発したこのAIロボは、四本の脚を持つことから「ロボット犬」とも呼ばれ、世界的な注目と人気を集めています。誕生から数回、資本を所有する企業が変わりましたが、今度は自動車メーカーのヒュンダイ(現代自動車)から大きなご褒美を受けることになるかもしれません。
孫 正義氏率いる日本のソフトバンクグループと韓国の大手自動車メーカーが、ソフトバンク傘下のロボットメーカーであるボストン・ダイナミクス社の売却について協議を続けていると、「ブルームバーグ」が報じています。気になるその売却価格ですが、なんと「最大10億ドル(約1040億円)に上るのではないか」と囁(ささや)かれています。
しかしなぜ、ヒュンダイはロボット犬に興味を示しているのでしょうか? これはあくまでも憶測に過ぎませんが、もしかしたら「スポット」の脚に関係しているのかもしれません。その4本の脚を使って、「これまで誰も見たこともないような歩行自動車の開発計画を立てているのではないか!?」とも推測されているのです。
そのような憶測が飛びかうのは、そこの伏線があったからです。
2019年にラスベガスで開催された「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES 2019)」において、多くの自動車メーカーはさまざまな電気自動車のコンセプトカーを発表しました。もちろん、ヒュンダイもその中の一社ですが、彼らが発表したのは「Elevate(エレヴェイト)」と名づけられたもので、それは昆虫ロボットのような脚を持つクルマでした。
テクノロジーおよびビジネス情報のメディアサイト「CNET」が、同社の投資家向け企業説明で行った説明が正しいものであるならば、その新型車は高速道路を走行できるスピード性能を持ちながら、1.5mの高さを乗り越えられるばかりか、幅1.5mの溝を跨(また)いで進むことができる多角的な性能を備えているとのことです。
まさに、映画『スターウォーズ』で帝国軍が使用した4脚歩行のトランスポート・戦闘ビークル「AT-ATウォーカー」に類似した乗り物が、現実のものとして登場するとも言えるかもしれません。
2019年1月に公表されたヒュンダイのプレスリリースによれば、この「エレヴェイト」は自動車業界における流行語ともなっている「究極のモビリティ・ビークル(Ultimate Mobility Vehicle)」の一種として解説されています。世界初の脚で歩行するクルマであり、探査や救助の幅を大きく広げる可能性が期待されます。
「例えば津波や大地震が発生した場合、現在のレスキュー車では被災地の端までしか救助隊を運ぶことができず、その先へは徒歩で移動しなければなりません。しかし「エレヴェイト」なら、(ある程度の)破壊された瓦礫(がれき)や崩壊したコンクリートの山の上でも移動することが可能となるわけです」と、ヒュンダイのジョン・スー副社長は語っています。
例えばヘビ型ロボットやドローン部隊、さらには洞窟や危険極まりない原子力施設における検査などに用いられてきた多様な形態を備えたロボットなどが存在することを考えれば、ヒュンダイの計画も今さら驚くほどのものではないでしょう。
仮に今回の売却が成立した場合、これは「スポット」が新たな飼い主を得る初めてのケースというわけではありません。1992年にマサチューセッツ工科大学(MIT)から飛び出したことから、このボストン・ダイナミクス社のオーナーチェンジは始まります。
その後2013年に、グーグル(Google)の親会社であるアルファベット社(Alphabet)により、非公開の額で買収。そしてさらにその4年後に、ソフトバンクが同社の買収を行ったという経緯についてはご存じの方も多いのではないでしょうか? ちなみに当時も、その買収額は非公開とされていました。さて今回は、どうなることでしょう。
▼以前ボストン・ダイナミクス社が開発したロボット「アトラス」
Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です