4代目:NDロードスター
[2016年~]
初代「NAロードスター」と比較されることの多い「ND」シャシーの現行「ロードスター」は、3代目「ロードスター」の「NC」よりも小型・軽量化されています。しかしその実態は、より洗練度の高い技術的アプローチによって生み出された2代目「ロードスター」の「NB」の後継車種と呼ぶ方がしっくりくるかもしれません。
初代「NAロードスター」のような遊び心あるクルマというよりも、特に後期モデルにおいては「本格的な小型スポーツカーとしての性格を強めている」と言えるでしょう。
しかしながら、その乗り心地の楽しさはこれまでの「ロードスター」と変わりません。 確かに、電動パワーステアリングはこれまでの「ロードスター」に比べてシックな印象かもしれません。ですが、「NDロードスター」はとにかく無駄がなく、高性能を誇り、落ち着きのあるクルマなのです。
少し柔らかめのサスペンションが、初心者ドライバー相手にもわかりやすく重心移動を体感させてくれるなど、親しみやすさも特徴です。
サンバイザーの簡素化など軽量化に徹した初期の「NDロードスター」は、155馬力とパワーを落としたにも関わらず、「NCロードスター」よりも高い走行性能を示しています。そして2019年モデルの「NDロードスター」では181馬力にパワーアップし、レッドゾーンも引き上げられました。
「4気筒を運転して、ここまで興奮したのは久々のことです。このクルマは月並みで面白みに欠ける近年の直列4気筒エンジンとは一線を画しています。世間はターボチャージャー搭載の新型4気筒であふれ返っていますが、大抵はどれもこれも似たような乗り心地に過ぎません。性能が良いのは分かります。ですが、味わいというものがないのです。しかし『ND』のエンジンは、次元が違います。かつての魅力に満ちていた、古き良きスポーツカーのエンジンを思わせるあの特別な感じを生み出すことに、マツダは成功したのです。アルファロメオやロータス・フォードのツインカムを思い浮かべてもらえれば、私の言いたいことが伝わると思います」と、カーメディア「Road & Track」のクリス・パーキンス氏は語ります。
カップホルダーは標準装備ではなく、後付けとなっています。まるで「コクピットに座れば、楽しむのはその走りだけ」とでも主張しているかのような、このクルマの意図を余すことなく物語っています。
ソフトトップのマニュアルモデルは、まるでアート作品のようです。信号待ちの数秒間のうちに折り畳むことも可能なフォールディング・キャンバスルーフなら、雨が止んだ瞬間にオープンカーへと変身します。
日本およびヨーロッパ圏で採用されている1.5リッターエンジンも良いですが、やはり2.0リッターが欲しくなります。本国仕様の1.5リッターの良さをしっかりと受け継いだアメリカ仕様の2.0リッターのエンジンにこそ、ハイウェイを疾走するのに必要なパワーが備わっていると言えるでしょう。
NDロードスターの歴史
▼2016年
ハードトップの「ロードスター」の優れた特性と、プッシュボタン式の折りたたみ機能を組み合わせたRF(リトラクダル・ファストバック)モデルを発表。それが電動開閉式のハードトップであり、オープンにした際も後部のピラー(柱)は残る仕様となっています。
▼2016年
累積100万台目となる「ロードスター」が世界ツアーを敢行。右ハンドルの日本仕様で、世界各地の何千ものファンのサインで埋め尽くされました。
▼2018年
イタリア限定の「ロードスター」シリーズの1台として、マツダの伝説的なエンジニアの山本修弘氏の名前にちなんでネーミングされた、「The Yamamoto Signature edition」が登場。山本氏は、名車「FD RX-7」や1991年ル・マン24時間耐久レースで優勝した「787B」などを手掛けた名エンジニアとして知られています。
▼2019年
この年、「ロードスター」の誕生30周年記念モデルが製造されました。レーシングオレンジのボディにブレンボ製ブレーキ、レカロ製シート、ビルシュタイン製ダンパー、レイズ製17インチ鍛造ホイールを装備した、ハイパフォーマンスの限定モデルでした。
アメリカで販売後わずか数時間で500台が完売してしまったため、マツダは急遽143台の増産を決めました。
▼2020年
マツダの創立100周年を記念して、100周年記念モデルの「ロードスター」が登場。
各モデルから1台だけ手に入れるなら…
この連載では、「NA」から「ND」まで、4型の「ロードスター」の歴史を追いかけてきました。もし、それぞれのモデルの中から1台だけ手に入れるとしたら…そんな究極とも言える問いに対しては、次のことを参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 1.8リッター仕様の後期「NAロードスター」は、ブレーキやシャシーの剛性も向上しています。中でもトルセン製LSD(リミテッド・スリップ・デフ)を装備しているものなら、パフォーマンス志向に特化した初期の「ロードスター」として理想的と言えるでしょう。
- マツダスピードの「ロードスター」が、NBのターボ仕様車として最高というわけではありません。ですが、予算的にはとても良い選択肢と言えるでしょう。レッドゾーンが低く、可変バルブタイミング機構も装備していないマツダスピードをいじって、自分なりのNBターボを仕上げてみるのも一興です。ただし、マツダスピードの純正品は希少価値が高く、費用もそれなりに掛かります。しっかり予算を組んでおくことが重要となります。
- 「NCロードスター」のClub Sport仕様車に掘り出し物があれば、即決すべきと言えるでしょう。コストパフォーマンスの高さはピカイチです。
- 155馬力の「ND」が安価で出ていれば、迷わず買いです。そうでなければエンジンに改良が加えた後のモデルを待つべきかもしれません。パワーが増しただけではなく、レッドゾーンも引き上げられ、特別なクルマであることを実感することができるでしょう。
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※マツダ「ロードスター」は、日本では発売当時「ユーノス・ロードスター」の名称で、北米ではマツダ「MX-5 ミアータ」(Mazda MX-5 Miata)の名称で販売されています。このページでは「ロードスター」の表記で統一しますが、文中に登場する日本国外のエディション名などを表す際は、「MX-5 ミアータ」で表記しています。
Source / Road &Track
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。