マクラーレン「F1」のチューニングで知られるイギリス屈指のチューニングメーカー、ランザンテ・モータースポーツと言えば、「F1 GTR」や「P1 GTR」をヨーロッパの公道を走行可能な仕様に改造するなど、輝かしい実績を誇る名門です。

現地時間2022年6月23日(木)、そのランザンテが5台の「P1」をオープントップ化するプロジェクトが進行中であることを発表しました。「P1」が「P1スパイダー」の名で限定生産されることになり、それを体験する夢の機会がごく少数の人々に与えられるというのです。

 
Martyn Lucy//Getty Images
マクラーレン「P1 HDK」

敏腕のオリジナルデザイナーを登用

あの「P1」をオープンカーに改造するとひと口に言っても、ルーフを切り取って完成という単純な話ではありません。ルーフ部には、エンジンにつながる吸気口が設けられているばかりか、ルーフを取り外すことで空力特性やボディ剛性に大きな影響を及ぼすことにもなるのです。クーペからスパイダーへの移行をスムーズに行うために、ランザンテが召喚したのが、「P1」のオリジナルデザイナーであるポール・ハウズ氏です。

「デザインそのものを、少しずつ調整することになりました。ボディはAピラー周辺のボンネットからウエストラインへと流れ、そのまま側面と呼応しながらドライバーの後方へと盛り上がります」と、ハウズ氏は声明を発表しています。

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Lanzante

「この造形により、エンジンに空気の流れを送り込むためのフローティングフィンが形成され、リアデッキへとその流れが続きます。カーボンによって強化された操縦席がドライバーを包み込み、クーペのすぼまったキャビン部の美しくクリーンなラインとも調和しています。

リアデッキについてはクーペと同様の機能を果たす必要があるため、エキゾーストに冷気が直接流れ込むよう、エラの形状をそのまま残しています。クーペと大きく異なる点は、エンジンの露出が増えたことです。エンジンはカーボンパネル越しに眺めることができます」

その他にも、フロントウイング、ドア、クラムシェル型エンジンカバー部の調整など、ボディの随所に変更が加えられています。ルーフパネルを取り払うためにシャシー下部も改良され、ボディ剛性は向上しているようです。車体両側の起伏に新たなエアインテークが追加されたことで、ターボチャージャーに直接空気が流れ込む設計となっています。

ランザンテは特に言及していませんが、この「P1スパイダー」はオープントップのみの仕様で、脱着可能なソフトトップやハードトップなどのルーフ類を持たない見込みです。そのため、紫外線や予期せぬ雨などによるダメージを最小化すべく、キャビンに用いられるレザーやスーパーファブリックと呼ばれる新素材にも改良が加えられています。

この「P1スパイダー」は5台のみの限定生産です。2022年末には、納車開始予定であるとランザンテは明かしています。価格は公表されていませんが、必要となるエンジニアリングなどを換算すれば、日本円で億単位となっても不思議ではありません。

Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です