老舗の「壹番館洋服店」の社長であり、仕立て屋として手を動かしながら銀座人として幅広い人脈をもち、この土地ならではの丁寧な商いをする渡辺 新さん。男はこんな風に銀座のお店は楽しむべき! 怖くない、銀座の裏口案内を2週間に1度の連載でお届けします。
前回、ご紹介した銀座サンボアに続き、今回もサンボア。お店の住所が有楽町570と言っても、銀座ではなく、京都。祇園サンボアへ遠征だ。
銀座サンボアがハイボールなのに対し、祇園サンボアは断然ドライ・マティーニ。
ラジオの尾崎さんも絶賛したというドライ・マティーニはとにかく美味い。これほど、スッキリと豊かなカクテルは他にはないだろう。
京都だけに水が良いのは分かるが、それにしても美味すぎる。もし、水の問題なら京都のバーは全て美味しい事になるが、残念ながらそうではない。やはり、技術の問題か? 作り方だけみていると、どうも技術だけの問題ではなさそうだ。技は勿論大切だが、味は作り手の人柄によるものだろう。今まで過ごしてきた人生の時間と質。つまり、人間力。
祇園サンボアの「マテニー」(お母さんは、ドライ・マティーニをこう呼ぶ)は、中川のお母さんのお人柄。この上質な「マテニー」は、お母さんの人生を経てわき出る、湧き水なのだろう。この湧き水に群がるように、祇園の蛍が今日も「マテニー」をすすりにサンボアにやって来る。
この名人の味を次に繋げるのは至難の技。最近、銀座での修行を終え、孫が店に戻ってきた。祇園の蛍を魅了できるかは、銀座の修行とは違った経験が必要になるのだろう。大いに楽しみだ。
月曜日はお休みだが、ご安心。隣合わせでやっているお茶屋さんのバーも最高なのだ。もちろん、お母さんが、特上の「マテニー」を作ってくれる。
祇園 サンボア
住所/京都市東山区祇園町南側有楽町570
TEL/ 075・541・7509
《Profile》
渡辺 新さん
…1966年生まれ。「壹番館洋服店」代表取締役社長。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、渡欧。イタリアのドムスアカデミーで洋服作りを学ぶ。著書に『銀座・資本論 21世紀の幸福な「商売」とはなにか?』(講談社+α新書)。現在、2018年公開予定の銀座の映画作りのサポートにも奔走している。