環境に良いとされる代替肉ですが、実は私たちの健康にも良い影響を与えてくれるもの。なぜ最近増えているのか、メリットとデメリット、どのように生活に取り入れたらよいかなどについて管理栄養士の視点から解説していきます。

味も食感も“肉っぽい”が、
肉ではない「代替肉」

最近、ダイエットや健康、環境などの面から注目されてきている「代替肉」。今回は、代替肉のメリット、デメリット、活用の仕方をお伝えしていきます。

 代替肉とは、たんぱく質を多く含む植物性の原材料を加工し、「肉」の食感や味に近づけた食品です。植物性の原材料には、大豆、エンドウマメ、ソラマメ、小麦などがあります。最近では、コンビニやファストフード店などにも代替肉を使った商品が置かれるようになり、目にする機会も増えてきました。

 代替肉には他にも、牛や豚、鶏などの動物の細胞を培養して作られる「培養肉」などがあります。ただ、培養肉は、まだ開発途上でありほとんど流通はしていません。

 ではなぜ、このような代替肉が昨今、注目されているのでしょうか?

vegan and vegetarian alternatives are a growing trend in berlin
Steffi Loos//Getty Images
※写真はイメージです。2018年1月25日のドイツ・ベルリンにて、有機農業の食材を使用してハンバーガー パテ、ソーセージなど。この時点でドイツではビーガンやベジタリアン向けの食品がトレンドで、従来の食品に代わる代替肉を販売する店が増えている。
なぜ、代替肉が注目されるようになったのか

(1)環境問題

私たちが普段食べている肉を量産していくには、家畜を育成する必要があります。そのためには、エサとなる大豆や穀物が必要となり、広大な敷地や水、堆肥が必要になります。世界の温室効果ガス排出量のうち、約5.9%は家畜や堆肥が原因と言われています。また、牛やヒツジのゲップやおならに含まれるメタンガスは、二酸化炭素よりも温室効果が高い温暖化を促進する原因ともいわれています

(2)動物福祉(動物への配慮)

普段食べている肉を代替肉に変えることで、人間に食べられるためだけに育てられ、殺される動物たちを少しでも救うことができます。ベジタリアンなど、動物の命を救うという観点から、代替肉を選ぶ人もいます。

(3)食糧危機

世界的な人口増により、2030年には、たんぱく質の需要が供給を上回る「たんぱく質危機」が予測されています。2020年時点では約78億人だった世界の人口が2050年には約90億人にまで増え、気候変動による農作物の収穫量減も相まって食料の確保が困難になるという深刻な懸念があります。

(4)健康の観点から

近年の健康ブームによって、動物性の肉と比べてカロリーや脂質が少ない植物性たんぱく質を用いた代替肉に注目する人も増えてきました。

代替肉のメリット

代替肉は、大豆が原料のものなら、コレステロールがゼロです。また、たんぱく質は、しっかり摂取することができながらもカロリーや脂質を抑えることができます。また、肉には含まれない食物繊維の摂取ができるため、脂肪の吸収を抑え、腸内環境を整えることにも役立ちます。

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ダイヤモンド・オンライン
100グラムあたりの比較(筆者作成)
代替肉のデメリットとは?

代替肉は、肉の味や食感に近づけるため添加物を多く使用している商品や、うまみやコクを出すために塩分が多く含まれている商品もあります。塩分量や添加物をチェックして選ぶと良いでしょう。

 また、動物性の肉には、植物性たんぱく質とは異なるアミノ酸が多く含まれています。その他にも、鉄や亜鉛、ビタミンB群などは、動物性の肉だからこそ摂取できる栄養素です。つまり、代替肉に変えることで、不足する栄養素が出てきたり、栄養バランスが偏ったりという懸念があります。

 代替肉だけを食べるのではなく、動物性のお肉と混ぜて使用したり、週に何回か代替肉を使用したりすると、栄養バランスの偏りを防ぐことができます。また、ビタミンB群が多く含まれる食材(サバ、サンマ、カツオ、納豆など)や、鉄が多く含まれる食材(アサリ、小松菜、ひじきなど)、亜鉛が多く含まれる食材(カキ、ホタテ貝など)を組み合わせて食べると良いでしょう。

代替肉の活用方法

最近は、さまざまな代替肉がスーパーでも購入できるようになってきました。ひき肉のようなミンチタイプや、フィレタイプなど多様な大豆ミート製品があるので、料理に合わせて使い分けることができます。

(1)肉に混ぜて使う

ミンチタイプは、ひき肉を使用する料理(ミートソースや麻婆豆腐など)に活用できます。しかし、ひき肉のように粘り気がないので、例えば、ハンバーグや餃子などを作る際には、肉と代替肉を混ぜ合わせて作ることで、肉のうまみや栄養素を残しながら代替肉を活用することができます。フィレタイプやブロックタイプは、ダイレクトに味わうことになるため、ミンチタイプから始めて、慣れていくこともおすすめです。

(2)普段の味付けで代替肉を使う

フィレタイプやブロックタイプのものは、煮込み料理や炒め物に活用できます。普段のメニューや味付けをガラリと変えてしまうと、味が受け入れられなかったり、手間が増えたりして、継続するのが難しくなります。

 例えば、カレーやシチューの肉を代替肉にして、普段の味付けで肉を代替肉にすることをまずは試してみましょう。代替肉は特有の臭いが気になったり、物足りなさを感じたりする場合もあります。気になる場合は、いつもより少し味付けを濃くすると良いでしょう。また、一度水でもどしてから数回水洗いをし、絞って使うことでくさみが軽減されます。

(3)コンビニや外食、レトルト食品から始める

昨今では、コンビニや外食でも代替肉を使用したメニューを見かけるようになってきました。スーパーではレトルト食品もあるので、見つけたら、こちらから始めるのも良いですね。

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スターバックスコーヒージャパンの代替肉製品。(左)「スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン」、(右)「クリーミーホワイトソース&ソイボール 石窯フィローネ」
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(左)タリーズ「大豆ミートのチキンオーバーライス風」、(右)モスバーガー「ソイスパイシーモスバーガー」
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日本ハムでは、「NatuMeat(ナチュミート)」というブランド名で、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、からあげ、ハンバーグなどの製品を販売している。
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伊藤ハムでは「まるでお肉!大豆ミート」シリーズとして、回鍋肉、青椒肉絲、八宝菜、メンチカツ、ナゲットなどのレトルト製品を販売している。

代替肉は環境だけでなく、動物たちや私たちの健康にも良い影響を与えてくれる新しい食品です。お店で食べてみたり、レトルト製品を試したりしながら、自分に合う取り入れ方を見つけていきましょう。

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