「銀座強盗」のみならず
目立ち始めた強盗事件

5月8日、白昼堂々と中央区銀座のロレックス専門店に仮面姿の男3人が押し入り、従業員を刃物で脅した上ショーケースをバールで割って、100点以上の商品を奪い逃走した。

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犯行グループとみられる男5人のうち4人は、同日午後7時頃、港区赤坂のマンション敷地内で建造物侵入の疑いで現行犯逮捕され、この4人の年齢が16歳から19歳であったとの報道が出ている。

本件が犯罪組織によるものかどうかはまだ判明していないが、最近の強盗事件の模倣犯であれ、犯罪組織によるものであれ、本件で逮捕された実行役は、犯罪組織にとって「切り捨て要員」であり、犯行自体は極めて稚拙である。

そもそも強盗のイメージは世間ではしっかりと認識されておらず、さらに本件についてはさながら映画の撮影のようであったため、通行人が瞬時に本物の強盗と認知するのはなかなか難しいだろう。

しかし、この事件によって、バールで強盗を行うという典型的な手法が通行人などによって撮影され、SNSで拡散されたことにより、“強盗“という犯行自体が広く社会において具体的なイメージとして認識された。

実は現在、強盗事件は流行の兆しを見せている。

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4月29日、原宿にあるアクセサリー店に3人組の男が押し入る強盗事件が発生し、これまでに“転売役”と“売りさばき役”とみられる男が逮捕されている。

防犯カメラの捜査から浮上した“転売役”の都築英明容疑者(50)は「借金で金に困り、闇バイトに応募した」と供述している。

一方、“売りさばき役”である早山尚人容疑者(23)は、「盗品だと思われるアクセサリーを転売するよう指示された」と供述し、警視庁は残る実行役1人を追うとともに、指示役を含む組織の全貌解明に向け捜査している。

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また、3月には、1億円相当の高級時計などが強奪された東京・上野の貴金属店強盗事件で、実行役の男が逮捕されているが、付近では、3月下旬と4月中旬にも別の貴金属店を狙った強盗事件が起きていて、警視庁は関連も視野に捜査している。

東京・狛江市の強盗殺人事件で世間を震撼(しんかん)させた一連の広域強盗事件を契機に、全国各地で強盗事件が相次いでおり、社会を恐怖に陥れている。

最近の強盗事件では、大規模な犯罪組織によるものもあれば、その手口を模倣し、“素人”による極めて短絡的な犯行も混在している。

また、店舗を狙った手口が増えている点にも留意したい。

あなたの家族を加害者にする
犯行グループの悪質な手法

前述の一連の広域強盗事件では、特殊詐欺のノウハウを強盗に転じ、完全に分業して強盗を行うその組織性が浮き彫りとなった。

また、これら犯罪組織の特徴は、その個人情報の収集方法の巧妙さ(関連記事:https://diamond.jp/articles/-/319537)もさることながら、実行役を次々とリクルートし、使い捨てていく構図にある。

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このノウハウも特殊詐欺の“受け子”“かけ子”などから受け継がれている手法だ。

闇バイトの募集については、SNSや掲示板などを通じ行われているとみられていたが、大手求人サイト「インディード」「エンゲージ」や掲示板サイト「ジモティー」などで実行役を募集していることが明らかになった。

これら求人サイトでは、「高収入」をうたい、「ハンドキャリー」「回収」のアルバイトなどと称して人材を募っていたという。

アルバイトを探すときは「高額」「即日現金」「高額即金」「副業」「ハンドキャリー」「書類を受け取るだけ」「行動確認・現地調査」などの言葉に注意すべきであり、求人申込時に匿名性の高いアプリのインストールを求められる場合は特に危険である。

また、一度応募したものの、怪しいと思いやめようと思ってもやめさせない構図も明らかになっている。

警視庁は4月、職業不詳の女(20)=群馬県高崎市=を窃盗容疑で逮捕した。女はSNSを通じて詐欺グループに関わり、実家の表札を映した動画などをグループ側に送らされて抜け出せなくなっていたという。

女は容疑を認め、「クレジットカードの支払いがたまっていてお金がなかった」などと説明。グループとのやりとりの中で詐欺への関与を疑ったが「実家に何かされるかもしれないと思い、断り切れなかった」と話しているという。

businessman giving bribe money in the envelope to partner
Atstock Productions//Getty Images
※写真はイメージです。

上記の例に加え、犯罪組織は身分証の提出や身分証の写真を送付させ、組織から抜けさせない・やめさせない手口を使用している。

読者には、自身の家族を加害者にしないためにも、ぜひ、犯罪組織のリクルートの手口を理解し、また、家族に理解させていただきたい。

加えて、以下の点も家族に伝えていただきたい。

  • SNSなどでの現金プレゼントキャンペーンなどに応募しない
  • 割りのいい高額バイトは絶対に存在しない
  • 金銭問題の解決について、一人で決断しない(相談させる)
  • 強盗の実行役は必ず捕まる

特殊詐欺に加え、近年の強盗事件では、銀座の事件もそうだが、若年層の犯行が目立つ。

物事を理解し、考察する力は当然必要であるが、「加害者になるような人間は思考力やリテラシーがない」の言葉では片づけられない、犯罪組織の巧妙さがある。

繰り返しになるが、どうか、家族・地域で、“加害者”にさせない仕組みを理解していただきたい。

強盗被害に遭わないための
4つのセキュリティー対策

強盗被害に遭わないためにはどうすればいいのか。

対策としては大きくは以下の4点となる。

(1)“情報”におけるセキュリティー

  • アンケートに気軽に答えない
  • 電話口で生活に関する情報を答えない、即座に切る
  • 公的機関であっても、電話は一度切り、かけ直す(その際、相手の所属部署を聞き、相手が言った番号にかけ直さず、ホームページなどで調べた番号にかけ直す)
  • 遠慮なく家族・警察に相談する
  • 自転車の青空駐輪をしない、通りから見えない配置にする(自転車によって家族構成が把握される)
  • 洗濯物を通りから見えないに配慮する(家族構成が把握される)

(2)家への“侵入”に対するセキュリティー

  • 防犯ステッカーの貼付
  • 防犯カメラの設置
  • センサーライトの設置
  • インターホンでの対応
  • (窓ガラスを割れにくくする)防犯フィルムの貼り付け
  • 補助錠の設置
  • 在宅時の施錠(マンションの高層階が敢えて狙われる事例も多い)
  • 置き配を放置しない
  • 現金を自宅保管しない

(3)侵入しにくい“地域”の構築

  • 近所であいさつをする
  • 近所と情報共有(不審な下見や訪問の情報など)をする

(4)店舗におけるセキュリティー

  • 高額商品が陳列されたショーケースなどに大きな破損が発生した場合に、自動で警報機や非常灯が作動するシステムを導入するなど
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ComicSans//Getty Images
強盗に遭遇した際の
セキュリティー対策

また、仮に強盗に遭ってしまった際のセキュリティー対策は以下の通りである。

  • 抵抗しない(可能であれば外に逃げ出すのが最善だが、実際は難しいケースが多い)
  • 無理してその場で通報しない(犯人に逆上される可能性が高まる)
  • 時間と相手の言動や特徴を記憶する(話し方やなまり、衣類・靴、行動など)
  • 強盗が去ったことを確認した後、速やかに110番し、記憶している内容をメモなどに残す

これまで、加害者・被害者にならないためのポイントを解説したが、強盗はそのどちらになっても多大な損失がある上、事後の悲惨さは筆舌に尽くし難い。

愚かな思考をする者たちから成る犯罪組織だが、その手口は全く愚かではない。

どうか、皆さんとご家族が加害者・被害者にならないよう、本稿がその一助となることを望む。

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