『半落ち』や『クライマーズ・ハイ』など、鋭い視点から社会に鋭く切り込んできた作家・横山秀夫氏。大ベストセラーとなった警察小説『64』から6年。日本有数のミステリーの旗手が満を持して書き上げた新作の長編ミステリーが、この『ノースライト』です。一級建築士を主人公に、「住むこととは?」「 家族とは?」といった身近なテーマをわれわれに投げかけながら、3つの家族の心の機微を丁寧に描いていきます。

 そんな人間のエモーショナルな変動を繊細かつ骨太に描いたこの長編ミステリーが、このたび待望の映像化を果たします。

 放映は2020年12月12日と19日の2週にわたり、NHK土曜ドラマにて行われます。横山作品らしく、ストーリーの中央には大いなる謎が根を張り、それに翻弄(ほんろう)される人々の心を激しく心揺さぶる人間ドラマとなっています。実力派キャストによって丁寧に描かれる家族再生の一大叙事詩は、2020年の年末を飾るにふさわしいドラマとなること間違いないでしょう。

 出演は西島秀俊さん、北村一輝さん、田中麗奈さん、伊藤淳史さん、林 泰文さん。そして寺脇康文さんや、宮沢りえさんなど、まさに演技派ぞろいです。そして西島秀俊さんが扮する主人公の青瀬 稔が働く建築事務所の所長であり、旧知の友人でもある岡嶋昭彦役を演じた北村一輝さんがこのドラマの見所を語ってくれました。

「家族の再生」が一つのテーマだと思うのですが、岡嶋も紆余曲折した過去を持ち、どこかで軌道修正を願っている男です。さまざまな問題に直面したり、青瀬との友情をはじめとする人との関わり合いの中で、じっくりと時間を掛けて、家族の在り方について少しずつ気づきが生まれていきます。そのゆったりとしたスピード感が、劇中にあふれる穏やかな光と呼応するようで、とても美しい物語に仕上がっています。
 劇中では藤宮春子という芸術家が遺した詩が登場します。その詩は、次のようにうたいます。「埋めること 足りないことを埋めること 埋めても埋めても足りないものを ただひたすら埋めること」。苦労と苦悩を抱える岡嶋自身も、どこかに希望の光を探していますし、藤村春子のこの詩が物語の隅々までリンクしているように感じられました。
 ちなみにタイトルの「ノースライト」とは、建物の中に北側から差し込む穏やかな光のこと。その言葉どおり、光に満ちたドラマを信頼できる共演者たちと一緒につくり上げることができました。ぜひご期待ください
ドラマ「ノースライト」
NHK
ドラマ「ノースライト」
NHK

【あらすじ】

 主人公は一級建築士の青瀬 稔(西島秀俊)。バブルが弾けて以降、流れ作業のような仕事に身を任せ、インテリアコーディネーターだった妻ゆかり(宮沢りえ)とも別れ、くすぶった日々を重ねていました。そんな彼のもとに、ある日驚きの注文が入ります。その内容は――「あなた自身が住みたい家を建てて下さい」というもの。依頼の主は吉野陶太(伊藤淳史)。建設予定地は長野県軽井沢町の美しい自然に囲まれたリゾート地、信濃追分。

 青瀬は建築事務所の所長であり旧知の仲である岡嶋昭彦(北村一輝)の応援を受け、見事な家を築き上げます。依頼人の吉野の家族が満足するだけでなく、それは雑誌にも絶賛されるほどの仕上がりでした。青瀬は再び建築界で話題の存在へと上り詰めます。

 ところが、家の完成からわずか1年…。仕上がりにあれほど感激していた吉野とその家族は青瀬がつくった家には住んでおらず、家はそのまま放置されていることが判明します。事態を探るべく、吉野邸に向かった青瀬と岡嶋。扉にはこじ開けられた痕があり、鍵も掛かっていません。家の中に入ると、置いてあるのは古ぼけた一脚の椅子だけ。岡嶋によるとその椅子は、ドイツの近代建築家であるブルーノ・タウトによるものだと言います…。

 吉野邸に何が起きたのか? 所長である岡嶋は何を隠しているのか? 青瀬の前妻・ゆかりはどのように関わってくるのか? そして吉野一家は、どこに消えたのか…?


NHK土曜ドラマ「ノースライト」

放送予定:2020年12月12日(土)、19日(土)<全2回>
放送時間:夜9時~夜10時13分
放送局:NHK総合/BS4K 
原作:横山秀夫『ノースライト』
脚本:大森寿美男
音楽:稲本 響
出演:西島秀俊、北村一輝、田中麗奈、伊藤淳史、林 泰文、田中みな実/寺脇康文、宮沢りえ 他
制作統括:佐野元彦(NHKエンタープライズ) 長谷川晴彦(ロボット) 訓覇 圭(NHK)
演出:笠浦友愛(NHKエンタープライズ)